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ポリシーレジェンド1話

2015-03-14 15:11:40 | 小説ポリシーレジェンド


卒業アルバム

3月卒業式が午前中に終わって3日後には16時20分発の電車に乗る予定だった。本来3月中は学校に籍があるが、母さんは僕の心の傷を考え担任だった教師と校長先生で相談し合い、卒業式後すぐにでも親戚の家に行けるようになった。卒業式後の3日後学校へ行くと、電車に乗る日だったが、卒業アルバムが僕の邪魔をした。クラスメイトで卒業アルバムの最後の白紙ページに皆で添え書きを書く事になってしまった。僕はクラスメイトの机をまわり、誰よりも早く添え書きを書き終えた。そして時間を気にしながらも、アルバムが自分の所に戻ってくるのを待つ事になったのだ。
なかなか戻ってこない事で「まいったな」と、僕は時間を気になり始めていた。周囲を眺めているとクラスメイトの皆が笑顔で楽しそうにしてる。
僕の周りには、仲間達が少し距離を置いて寄り添ってくれていた。僕を気づかってくれる仲間達との会話はない。仲間達は地元の公立高校へ通うが、罪悪感を持ちながら僕はあえて、1時間先の私立校を選んだからだ。過去がある地元にはいられないという僕の思いを知っている仲間達はちらちらと僕を見るが全く会話をする事はなかった。
そんな状況の中「アルバム、早く戻ってこいよ」と何度も声に出さず思っていた。
落ちつかない僕を見て、仲間達は下向き加減でニヤニヤしていた。
「早くしろよ」仲間達は教室の中を歩きながら言ってまわってくれた。
そして、やっと卒業アルバムが戻り、学生カバンに入れ、手を上げてアイコンタクトでクラスメイトを見回した。
「じゃあな、みんな」一言だけしか見つからなかった。
「元気でね、またね、また会おうね」とクラスメイトは返事をしてくれた。
これだけの会話で僕は速足で教室から去る。見送りはされたくはなかった。校門を出ると振り返り校舎を眺めながら、もっと話したかったような気もしていた。そして腕時計を見て「まずい」と思った。
自宅に戻らず学生服を着たまま、学校を出たのは16時5分過ぎだったが、駅まで走れば間に合うと思った。息は荒れ駅に着いたのは16時19分のギリチョンだった。急いで切符を買った時には「あれ?」電車が動き始め目の前から離れていった。地元の線路を走る電車の本数は、下りの電車は1時間に2本あるのに、上りの電車は1時間に1本しかない。次は17時25分発で目的地到着時間は18時40分。公衆電話で叔父さんの家に電話したが記憶にある番号にかけても間違い電話になる。父さんや母さんに電話をすれば良かったかもしれない、でも何故か心配されたくない、独りでいたいと思った。
でも「まずいよな、叔父さん叔母さん、ごめん」きっと許してくれるよなと僕は思った。
思春期の僕は変なプライドはあるが、信念というものはなく未熟で優柔不断なところもあった。外は雨が降っていたため、僕は駅の待合室にある壁にあるコの字で木製のベンチに座り静かに電車を待っていた。その待合室の空間にいるのは、僕と顔見知りの駅員の2人だけだった。
「暇そうだな、本でも読んだらどうだ」と、駅員は僕に声をかけてきた。
そして駅員の声に誘導されるまま本棚を見つめた。
「絵本ばっかじゃん」
週刊誌や月刊誌を見たが、退屈で絵本のタイトルを見始めると、ほとんどが子供向けのような感じだ。でも「カメレオンのように」という絵本が気になった。まあいいか、と思いながら、その絵本を取り開いてみた。カメレオンのようにという絵本なのに、表紙にはクジラとイルカの絵が描かれていた。
「なんだこれ?」
面白そうだなと思いページを開きながら読み始めると何故か楽しくなっていった。カメレオンのように体の色を変えるイルカが主人公だった。
「イルカって青とか灰色だよな」そう思った。
その主人公は好奇心旺盛で海の中でどんな生き物とも仲良くなる。多くの生き物がいるのに体の色を変えながら興味を持たせ、その主人公の周りにはクジラだけでなく多くの生き物が集まってくる。でも絵本に描かれるイルカは独りぼっちだった。独りぼっちだからこそカメレオンのように体の色で自分を表現をして多くの生き物が集まるようにしている。悲しいような楽しいような、そんな気がして僕は笑った。
「ハハハ、久しぶりに笑ったべ」と思った。
心から笑えた頃、3年前の自分を思い出してしまった。その頃は多くの仲間がいて仲間以外に親友と思える3人がいた。仲間の中には学校の環境、先輩後輩の上下関係で裏切る事があったが許せたし、親友は決して裏切る事はないものと僕は思っていた。でもその親友の3人は僕の前から姿を消した。記憶から消そうとしていた出来事を絵本を見てから思い出してしまった。
「何で今さら」と思った。
待合室で独りで電車を待っている空間は、消したい過去の時間へと僕をふり返させる。そんな時、3、4歳くらいの子供が目の前に立ち、手を伸ばしてきた。
「お兄ちゃん、その絵本かしてちょ」と子供は言った。
「ごめんなさい、すみません」と子供の後に母親の声が聞こえた。
僕の心がよどみ始めた待合室の空間の雰囲気は一瞬にして変わった。過去の空間ではなく母と子の会話をする姿をみている。僕は過去を思い出す空間の中で目の前に映る親子に助けられたようだ。
「こんにちは、はじめまして」
僕は声をかけ、子供に絵本を手渡した。どうやらカメレオンのようにという絵本は、その子供のお気に入りの絵本だったようだ。絵本を読んで最後のページには気になる文章があった。
「生き物は自由に生きられる、いろんな生き方を自由に選べるのだから」
僕の生き方って、どうなんだろう、チョットだけ考えさせられた。そんな時に転勤族の両親がいて転校を繰り返していた同級生を思い出したが名前を思い出す事はなかった。駅内を見回すと何故か改札口の待合室いた親子の姿は消えていた。親子の帰る姿は見ていない、いったい何だったんだ。
ぼんやりとしながら、ふと待合室の時計を見上げると、まだ5分しか経過してなかった。僕にとっては、とても長い時間に感じていた。


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