シャオピン

沖縄に続き、九州南部もすでに梅雨に入っているそうですね。

こちらバンクーバーも、このところはっきりしない日が続いています。
こんな日が続くと、特別な用事がない限り外出が億劫になってしまいます。

「運動不足だから、チョッと出かけてくるね」
そう云って出かけたカレは、１時間ほどで帰ってきました。
ところが、台所に入るなりいくつもの買い物袋をドサット置きます。

果物・野菜に、厚切りの食パンに美味しそうな菓子パンを数個・・・。
「これを食べたら、又その分を歩かないといけないわね」
ツイ、私も苦笑してしまいました。

その他に袋から出したのが、中国の「焼餅」２個。
油の入った甘いお餅で、プレーンなのと餡入りです。

「美味しそう！それにしても、珍しい物を買ったのですね」
「これを見たら、お父さんのことを想い出してね・・・」

終戦の年に４０才近くで２等兵として召集され華北に送られた義父は、
戦争が終わって復員して来たとき、歯が殆ど無くなっていたそうです。
若い上官に散々殴られたようです。亡くなるまで一度も戦地での
ことは話さなかったそうです。

その義父が「美味いものを作ってあげよう。シャオピンって云うんだよ」
と云って、一度だけフライパンを持ったことがあったのだそうです。

「美味しかった？」と訊いたら、
「みよう見真似で、作ったようなんだけど、上手く出来なかったみたい」
「それでも食べる物に不自由していた頃で、美味しかったような気がする」

パン売り場に並んでいた「焼餅」の形と字を見て、姿も似ているし、
「焼餅」もヒョットしてシャオピンと発音するのかもと
思い買ってみたのだそうです。

カレが話す義父の想い出を聞きながら、半分に切り分けてお茶と頂きました。
焼餅の成分を見たらRice Powder と書いてあります。

「米の粉などは無かった筈。なけなしの小麦粉をこねた物を、薄く延ばし、
菜種油を塗っては重ねして・・・・ソウダ！パイ生地を作るみたいだった」

砂糖など手に入らない時代で塩味だったことを思い出したようです。
今日の「焼餅」は甘い味です。 私たちが結婚した時には義父はすでに
亡くなっていましたので、話でだけしか知りませんが、義父は
大の甘党で、お酒はまったく飲めなかったようです。


06-05-27 （土）薄曇