Four Season Colors

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読書のよもやま(2023.04.03)

2023-04-03 | 雑文
「悪霊列伝」永井路子(中公文庫)

列伝系ジャンルが好きな者として、ほぼ題名
買いした本を読み終える。

日本は古代、奈良平安期からはじまる、後に
悪霊として恐れられた人物を時代順に取り上
げ、考察をしていくもの。

取り上げている人物は、吉備皇女、不破親王
姉妹、祟道天皇、伴大納言、菅原道真、左大
臣顕光、平将門、祟徳上皇など。

よくある一般的な列伝ではなく、時代の要因
もあるが、つくりは多分に小説的なものとな
っている。

一般的に列伝は、資料から事件などを通して
人物を浮かび上がらせる系が多い。

が、本書は、こういう出来事が、こういうや
りとりがあっただろうという考察するため、
会話形式の箇所も多い。

そのため、読みやすいといえば読みやすいが、
人物列伝を想定して読み始めると、やや困惑
するかもしれない。

悪霊は生きている人が、後の人が、時に政治
的に、目的のために生前の人物とは関係なし
に作り上げる。

この著者の結論を、章ごとに、時には章の中
でも繰り返す。

今という時代に、本当に悪霊はいるのだろう
か、本当に悪霊はいるんだという人は、少数
派だろう。

おそらく、中身をあまり知らずにこの本を手
に取る人は、自分のように悪霊として恐れら
れた人たちを恐れられたまま知りたいだろう。

だから、この本は列伝ですか、と聞かれれば、
多分、列伝ではありませんと答える。

とはいえ、それぞれの人物の生きた時代背景
や、いかに悪霊とされたかは、とても分かり
やすく書かれている。

つまり「列伝」というタイトルに拘らなけれ
ば、日本の歴史の小説風人物考察系として面
白い。

著者が前面に出てくること以外は、面白く読
めたが、やっぱりこれは列伝ではないよなあ、
とは思う。


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