響きあうA"LIFE & ~『ピッコロの冒険』~

ピッコロの自分探し、広大な内なる意識へと冒険の旅の物語
&つれづれの内なる対話、 A"LIFE&ONENESS

『アラビアン.ナイト』に寄せて 1

2010-09-28 14:24:55 | エクセレントなアーテストたちへのオマージ



『アラビアン.ナイト』は、千夜一夜物語とうたわれてるほどに数々のお話が綴られていて、それは、娯楽という期待、を裏切らない、出来映えの見事な物語集の集大成です。(アラビア語原題はアルフ.ライラ.ワ.ライラ)

誰でも、子供の頃に「シンドバットの冒険」と「アリババと40人の盗賊」は、なんらかの形で親しんだものです。ディズニー映画もありますしね。

でも、シェヘラザードが夫のペルシャ王シャハリヤールに夜ごと語るお話のほとんどは、子供向けではありませんが...。

(それに上の二話は、本来のアラビアン.ナイト全集の中には入っていないらしんですが、平凡社の東洋文庫のアラビアンナイト全訳には別巻として最後の19巻に配されています。)


前妻に裏切られ,傷ついた王は、、すっかり女性不信に落ち入りまして、毎日、新たに妻を娶っては、一夜を共にしたら、その新妻を殺すという決めごとをします。女性に対する復讐ですね。

かわいそう新妻が次々に犠牲になる。
そこで、それを阻止しようと,大臣の娘シェヘラザードが、自ら、名乗り出て、妃になるんですね。
殺されない為には,毎夜、面白い話を語って、そして、続きはまた明晩..ってことで...、

王は物語の先を知りたい一心で..それではと....夜を重ねて一夜のお伽の物語を千夜へとつなげ..そして命をつなげ....,

最後は、もちろん、王は彼女の賢さに感服し、その決めごとを撤回して、めでたしめでたしのカップルと相成るのでした。
これが一番外の枠物語の骨子となって、それぞれの物語が語られていくわけです。



あちらの(ペルシャやアラブ、それにインド)お話は、構成が入れ子式になっていて(枠物語と言うらしいんですが)ひとつの、ストーリーの登場人物たちが、それぞれに別の物語を語る..、ものによっては、またそこから派生して別の物語が入っていたりするんです。
ひとつの外枠の物語が、その中の小さな物語をたくさん含んでいて、一つのタイトルで、一冊をほとんどを占めている巻もあります。

それがまた、どのお話も勝るるに劣らない面白さで、見事な展開で読み手を引きつけて,ストーリー構成の、展開の巧みさに、感心します。さすがに語り継がれた、千夜一夜!のお伽話。
粒ぞろいに面白いんですね。


語り部文化ならではの、物語を楽しませる為の、娯楽性に対する、熟成された完璧主義みたなものを感じます。

印刷本も,映画もテレビも無い時代、”物語る”というのは、ほんとうに人々の楽しみだったんだなあと....
それゆえに、語り部の力量というのも、名人クラスになったら、王侯貴族からご祝儀などもはずまれたんでしょうね!..なんて想像するんです。町の庶民も、きっと拍手喝采で、楽しみにしていたんでしょうね。

お話の出来もさることながら、イスラム、ペルシャ界隈の、たとえば、ダマスカス,バクダッド、カイロなど..にぎわいの聞こえそうな、また、それぞれの町の個性豊かな素晴らしさ、王侯貴族や庶民の生活ぶりなどから、いかにも薫り高いイスラム文化の成熟度がしのばれるのです。
そのあたりも楽しめる千夜一夜物語なのです。

全集翻訳本は、もちろん、読んでこそ、千夜一夜の物語を味わい楽しめる訳ですが、

なんといっても、エドモンド.デュラックをはじめとして、20世紀初頭の、達者な挿絵画家が手がけたアラビアンナイトの魅力的な絵本は、大人も子供も読めて,特に、デュラックの美しい挿絵は、シェヘラザードの毎夜の語りのように、アラビアの奇想天外なお伽噺の世界に見るものを誘ってくれますね。



つづく~


グレイトゲーム(The Great game) 3.パリジェンヌのラサ旅行(アレキサンドラ.ダヴィット=ネール)

2010-09-18 23:26:33 | 冒険者たちへのオマージュ



私はキップリングが現した、あの世界情勢と時代にわくわくするんです。
というの世界はまさに”冒険探検”の時代に突入するからです。

その頃は、まだ、ヒマラヤやチベットなど西洋諸国には、
日本人にもまた..ほとんど知られていませんでした。
グレイトゲ−ムをきっかけに未知の秘境の存在をかいま見た瞬間に、
考古学的調査に、イギリスはもちろん、それぞれ西欧諸国は、国の威信をかけて、探検合戦も展開されるんですね。

グレイトゲームのプレイヤーである軍人たちや、
駒であるパンデットたち..。
おなじみ、桜蘭 、さまよえる湖ラブノールを発見した、
スエーデンのヘディンや、
スタイン、日本からは大谷探検隊など。

また、遥かな秘境にあるという,シャンバラとか、プレスタージョンという伝説的なキリスト教の国があるらしいとか....
ラサをめざして、宗教心に駆られた修行者、
また逆にキリスト教化をもくろむイエズス会の伝道師やら...
そして、考古学的価値に目がくらみ...のトレージャーハンターや商人たち。

噂に想像力と冒険心をかきたてられて、
国の威信を背後に、
一斉にアフガニスタン、中央アジア、チベット、
ヒマラヤに向かって、探検に出かけたのです。ブームですね。

そして、目的の色は違えど、我こそはと走破した..発見と苦難の、
興味深い
旅行記が残されたのです。


日本人だと河口慧海の「チベット旅行」これは有名、ですね。三巻までは実に面白い。語り口が愉快で、時をおいて三たびくらいは楽しめる。


なかでも、異色なのは、
「パリジェンヌのラサ旅行」(東洋文庫 )
これは面白いというより、ともかく、このアレキサンドラという女性が凄いんです。

雲南からラサまで、フランス人女性、アレキサンドラ.ダヴィット=ニールが、若いラマ僧を養子にして、巡礼を装って....

顔にすすを塗って変装し、4度も捕まっては国外退去を余儀なくされたりしながら、鎖国中のチベットを猛烈な意思力をもってラサへと向かう。そのとき彼女は50歳。
(私も51歳のとき、6ヶ月のインド一人旅をしましたが..私なりの大冒険!)


これはもう..そこまでやる!?...
彼女はチベット密教や、その総本山であり神秘的な”ラサ”に憧れ、信仰心に裏打ちされた、修行、道を行く、修める!という狂信的なまでのモチベーションとそれに見合う
体力と知力の持ち主だったんしょうね。
猛烈を爽やかに超えてるんです。

そういえば、彼女は、もともと裕福な生まれなのですが..
若い頃、オペラ歌手をやっていて、
時に旅の資金を得ていたんだそうですが、

それって..なんとなく..違和感を感じるほどのキャパというか..
能力の幅がすごい人だな....

幼い頃から冒険、真理への憧憬を抱いて、
肉体も精神も鍛えることが、好き!
そんな人だから、結婚して一週間後には旅に出てしまったそうですよ!

それはそうと
ラサの旅から無事にフランスに帰国したとき、
大歓迎と大興奮が待ち受けていたそうです。

その後、有名なギメ美術館での講演や、研究、執筆、
そして度々の旅行など...その後も充分な時を..。

というのも..
彼女は信仰と冒険にほとんど幼い頃から全人生をかけて、
たくさんの書物も残して..
100歳と10ヶ月、生き抜いたんですから!

人生という旅の達人でもあったんですね?!

修行者としては..高レヴェルの成就者だったのかもしれません。
100歳という長寿は、密教の教えを体現し証明したと言えるでしょう?

なんとも..凄い人です!



東洋文庫
A.ダヴィッド.ネール
『パリジェンヌのラサ旅行1.2』


この方の日本語の翻訳がほとんど無いのが残念です。(他に一冊だけ)
著書は多いのででフランスではかなり著名のはず。


ラサへの雲南から出発前に、日本にも立ち寄っています。京都と鎌倉に滞在したんだそうで、河口慧海とも再会して、写真入りの新聞記事が残っています。






ちょっとかっこいいスウエン.ヘディンの写真発見!







グレイトゲーム(THE GREAT GAME) 2 ヤングハズバンドとパンデット

2010-09-10 18:55:25 | 冒険者たちへのオマージュ





小説「キム」に出て来る、個性豊かな登場人物の何人かは、グレイトゲームの主要なプレイヤーである実在のパンデットや、彼らを訓練し、スパイとして現地に送り出していた実在のイギリス将校がモデルと言われています。


『大ヒマラヤ探検史 』
                      
”インド測量局とその密偵たち”  
薬師 義美「 (白水社)



この本は、グレートゲームをリアルに演じたプレイヤーたちとその活動の詳細を見ることが出来ます。

地図とにらめっこしてわくわくしながらの、『大ヒマラヤ探検史』は、ことさらに面白かった!

イギリスのインド測量局が訓練し、仕込んだ現地人のスパイ、彼らを”パンデット”と称
するのですが、その一人一人の素性や性格も含め、その困難な探検の足取りと、歩くこ
と(訓練した正しい歩幅)で量った距離や、杖に仕込んだ携帯用の測量器でヒマラヤやカラコルムの高峰の測量、その結果作られた各地方の地図、また、その後の彼らの運命が、記録を収集して克明に書かれています。


写真の中のサー.フランシス.ヤングハズバンドは探検家でもあり、軍人としてグレイトゲームの中で、とりわけ大きな役を演じた人物です。

余談ですが、この人も最終的には精神世界への道の探検に至ったといお話。(私は,ずっと以前にスピリチュアルの本の中に彼と奥さんの名前を読み,名前がヤングハズバンド!?ってことで覚えていたんです!)


つまり、その当時の彼らの命をかけた働きによって、やっと、我々はエヴェレストやカンチュンジュンガ、K2などの存在を知り、圧倒的なその高さを知ったんですね。それは、なんとも感慨深いことです。

現地の人々にはチョモランマと呼ばれていた山が、イギリスのインド測量局によって,世界最高峰と確認されて、測量局の前長官ジョージ.エベレスト大佐に因んで、そのとき、エヴェレストと名ずけらたのだそうです。


曲がりくねった大河、マニプトラ河(ヤルツアンポ河)の流域、それはどのように流れているのか、周辺の険しく妖しい神秘的な周辺の調査の為の探検....
ほの暗い湿度ムンムンの,密林で、身を潜めながら..(想像するだに、わくわくしますが..)うろうろしてるのが見つかったりしてて、運が悪かったら、そのあたりの原住民に殺されることだってあります。(実際そうだった)

また谷や、裾野は、虎やその他の猛獣の出没するジャングル、そこはマラリアの巣窟だとか言われていて...と戦いつつ..、

沢山の人が命をかけて、そして命を落としています。無事に帰って来ても、
その後マラリアで亡くなった人も多かったんですね。



グレイトゲームの背後の密偵パンデットたちのリアルな冒険、艱難を超えて
出来上がっていく地図をたどる...これが読み手としても面白いんです。
測量というのは,敵を制する為には、もちろん、大事な作戦なんですね。


河口慧海と接点があったインド人チベット学者、サラット・チャンドラ・ダースは、
まさにイギリスの秘密諜報員だったのです。
慧海もスパイと見なされ、這々の体でラサから一直線でダージリンに逃げ帰ります。
一回目のチベットへの旅でした。


なるほど、結果的に諜報合戦だったのが、チェスに見立てての、
The Great Gameと呼ばれる所以だったんですね。







Sir Francis Edward Younghusband(1863-1942)
中央アジアとチベットの利権をめぐって英露清がしのぎを削っていた19世紀末—。当時の紛争地をことごとく踏破し、虚々実々の駆け引きを繰り広げた英国の 軍人・探検家、フランシス・E.ヤングハズバンドの生涯を、残された日記と膨大な資料をもとに生き生きと描いた初の評伝。 (白水社)






グレイトゲーム & キップリングと『 キム』1

2010-09-07 03:40:05 | 冒険者たちへのオマージュ

The great game                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                             
グレイトゲームという言葉を知ったのは、キップリングの小説『キム』を読んだときでした。(日本版は「少年キム」)

ほう..此の時代19世紀から20世紀にかけて、アフガニスタンの争奪で、緊迫したイギリスとロシアのせめぎ合い、水面下でのスパイ合戦、もちろん東には清という中国もいて....プレイヤーにはアメリカやその他の国々もまた虎視眈々..

インドを支配下に置いたイギリスはことのほか、ロシアの南下を警戒していて...チベットやアフガニスタン、中央アジアを取り囲み、にらみ合いをしていたんだあ..

それを、アーサー・コノリーという人がチェスのゲームに例えて
The great game(闇戦争とか大勝負)と命名したんですね。
それから、キップリングが『kim』の中で、この言葉を使って、この呼び方が一般的に広まり、今に至っています。


キップリングはその状況を時代背景として、キム少年を、そしてインドの風土、人情、を活き活きと描き出しているのです。
もともとキップリングはインド生まれのイギリス人ですから、実態も知ってる、思い入れもあるんですね。

インドという国やインド人に何らかの郷愁を感じている人ならば、(ちなみに、私はすご~く感じているので)この本は、より共感するところがあるに違いありません。


小説『キム』は、キップリングの縦横無尽な筆力と感性的な天分が、ぐぐっと豊かに走ったみたいな、インドらしく濃厚でありながら、冒険という道行きが、清浄な愛に貫かれて.....

というのも、キムの慕うお坊さんは解脱を目指しての旅路であり、修行を積んだ精神の透明さ、高邁さにキムは出会った瞬間から、無意識的に感応したんですね。

彼は、行きがかり的にスパイの手先となって、インド育ちの少年らしく(実はイギリス人の孤児なんですが)、賢く、はしこく走り回り役割を果たしつつ、
かたや、浮世離れしているお坊さんの身辺で、かいがいしく面倒を見る。
ある期間、離ればなれになっても、互いの純粋な愛が貫かれ、ふたりのそれぞれのヴィジョンである目的へと向かう..

ほかの好きな本と同じように、時をおいては、くりかえして、また楽しませてもらえる..そんな本のひとつです。

そして『キム』によってグレイトゲーム(The great game)へと私の冒険!の矛先は向かったのです。



つづく                                    
                           




追記

世界には『キム』のファンは多いですね。
ある期間、キップリングは帝国主義とされ、最近まで、あまり表立ってとりあげられなかったそうですが、確かにイギリス帝国主義のプロガバンダ的な、というより、まさにその為の詩など、そう言われても仕方がない作品がありますが。..最近ではまた、見直されてきたというお話。

しかし、物書きとしては飛び抜けて力量の持ち主であることは、誰もが認めるんじゃないでしょうか。その都度、歯に衣を着せぬ、自分の感じたことを言い切る強い性格だからこそ、名文、名作も出来るんだろうと思います。

余談ですが彼のもう一冊、お気に入りの旅行記があります。
『キップリングの日本発見』
キップリングの豊かな感受性と見識と筆力に感服です。そして、内容は日本のその頃の素敵さに涙がでそうです。
そしてもちろん、面白い!
読み手が日本人なら、なお面白い!


















ramni わくわくワールド<本.アート.冒険者たち>

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