「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

医者の嫁

2017-11-26 | 雑記
留学には金がかかるものですが、私の場合、あまり経済的な懸念はありませんでした。なんとかなるだろうと思えましたし、実際、なんとかなっています。それはたぶん医者だからなのでしょう。医者になるのはやはり大変ですが、一度なってさえしまえば、以降は生活においてお金に困る心配はほとんど要りません。開業などをする場合に資金が必要になることはあるでしょうが、普通に生活する分には大丈夫です。
だからでしょうか、医者というだけでモテることがあります。

私にはその気持ちがよく判りませんが、実際、医者の嫁になりたいという女性はかなり多いです。医者ならば誰でもいいとまではいいませんが、扱いやすければなお良しとのことです。そして、医療に従事する女性の一定の割合で所謂「医者狙い女」がいます。医者になる男の中には、たしかにうぶというか、お育ちが良い方が多くて、割と簡単に捕まえることができるようです。医者の嫁になると、たしかに経済的に苦労はしないでしょうし、ある種の自尊心も満たされるのかもしれませんね。
最近、医者やってる知人が結婚したのですが、相手はいわゆる「医者狙い女」っぽい感じであり、何と言うか、ご愁傷様です、ということが判りました。しかし、当人たちに愛があるならば関係ないよね、愛があれば!
とにかく周囲の目はすこし冷ややかなところもあるようですが、まあ、色々と頑張ってほしいと思います。

先輩方の例を見ていると、残念ながら、医者の男は周囲に不幸を撒き散らすパターンが少なくない気がします。不幸でも離婚するとは限りませんが、やはり大変そうなパターンがあります。科にも依りますがそもそも仕事が忙しいから家庭を犠牲にしがちですし、医者の方も「先生」とか呼ばれて調子こくので浮気しやすかったりと、医者の嫁になるのはある程度の覚悟をもってしっかりしないと厳しいのかなという印象です。私の知っている先生方の中にも、色々あって嫁さんがプリンちゃんになってしまったという不幸な例がありました。忙しい科だから仕方なかったのかもしれませんが(その先生の人格にも問題があったのかもしれません)。
また、私の知っている某教授は生涯未婚でしたが、ぶしつけではありますが理由を伺ってみたところ、「自分と結婚したら、きっと、一人の女性を不幸にしてしまう」「仕事が生き甲斐だから、私はこれでいいのです」とのことでした。私が知っているのは先生の晩年だけですが、非常に紳士的な方でした。好きになった女性を不幸にしたくないから結婚はしなかったという噂を聞きましたが、真偽はともかくとして納得してしまうような、穏やかで優しげな医学者でした。

臨床を真面目に頑張ることと、家庭を大切にすることを両立するのは、やはり、とても難しいです。誰でも1日24時間しかないわけですから。私の場合はもともとの能力が低くて要領が悪いからというのもあるかもしれませんが、私よりも能力が低いアホ医者もそれなりにいるわけです。じゃあ、そいつらみんな、どうしたらいいのか。皆さん、結婚しないという訳にはいかないでしょう。

医者狙い女の実に都合が良い所は「とにかく医者の嫁でいる」ために多少は我慢をしてくれる可能性が高いということです。若いうちは夜勤なども多いし、とにかく忙しいものですが、そういう時に医者狙い女は非常に物分かりのいい良妻を演じてくれるかもしれません。とにかく身を固めたいという医者にはありがたいです。ただ、たしかに医者と医者狙い女はお互いの利害が一致しているので比較的早く結婚までいくのですが、その後で結局、価値観の相異というか、そもそも色々な意味でつり合いがとれていないことが多いので、破局するパターンがあります。つり合いという意味では、医者同士の結婚の方が良くも悪くもお互いの手の内が判っているし、幸福そうなカップルが多い気がしますね。医者同士の方々はやはり臨床と家庭のバランスが上手くとれている場合が多いように感じます。
とはいえ、色々書きましたが、愛があれば問題ありません。愛があれば。

以上は偏見に満ちた私見でしかありませんが、まるっきり的外れであるとは思っていません。
とにかく、医者の嫁というものは、世間で言われるほどには楽ではないだろうと思います。小学校の時に出木杉君と仲の良かったシズカちゃんが、結局、のび太君と結婚したように。幸福な選択というものは、きっと、能力や職業やお金や身分などによるものではないのでしょう。
私は「つり合い」というものだけで男女の仲を考える気はありませんが、しかしある程度、医者の嫁には「医者につりあう資質」というものが求められてしまうのではないかとも感じています。ましてや、医局内で出世する医者の嫁はさぞかし大変でしょう。能力はともかく、家柄など(生まれは選べませんからね)、求められる資質としてかなり理不尽なことまで言い出せば、ちょっときりがありません。

他人のことばかりを好き勝手に論じてきましたが、最後に、自分自身はどうなのか。
私は研究好きな夢追い人ですし、たぶん、家庭人としてはダメな方でしょう。おそらく伴侶を幸せに出来る可能性が低いだろうということは自分でも判っています。先日、「〇〇さん(私のこと)と結婚する方はどんな人でしょうかね」と、ある方から興味津々に尋ねられましたが、そもそもこの先私が結婚することがあるのかどうか……。
恥ずかしながら、私は他人をちゃんと幸せにするという自信を持てずにいます。好きになった人にはもちろん幸せになってもらいたいですし、自分自身に他者を幸福にする能力がないのならば、どうするべきなのか。その答えは判っているつもりですから。