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高橋冨士信 fj鷹@gmail.com

NHKニュース:スカイツリー頂上は地上より時間が速く進むか? 実験へ

2017年11月25日 | 地球/宇宙
昨日11/24夜から11・25朝にかけて、NHKニュースにて「スカイツリー頂上は地上より時間が速く進むか? 実験へ」が流れましたので、NHKニュースWEBの記事のトップ画像とスクリプトを記録します。NHKニュースWEB記事は2週間以内に消されてしまうためです。


スクリプト開始:
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東京スカイツリーの展望台にのぼると地上よりも時間が速く進む。これはアインシュタインの相対性理論から導かれる結論ですが、実際に超高精度の時計を東京スカイツリーに設置して、私たちが暮らす日常の空間で時間の進み方がどのくらい違っているのか調べようという実験を、東京大学などのグループが始めることになりました。
この実験を行うのは、東京大学の香取秀俊教授らの研究グループです。
アインシュタインの一般相対性理論では、時間の流れるスピードは重力の強さによって異なるため、地球の中心から離れれば離れるほど重力が弱まっていき、時間の進み方が速くなることが、理論上わかっています。
しかし、こうした違いは私たちが生活する空間では、ごくわずかなため、実際にその違いを計ることは困難でした。

研究チームは今の1秒の定義を決めている「セシウム原子時計」よりもさらに1000倍精度が高い超高精度の「光格子時計」の開発に成功していて、東京スカイツリーの1階と、450メートルの高さにある展望台の2か所に設置し、時間の進み方の違いを調べることにしています。
光格子時計は、2台をそれぞれ1センチ高さが違う台の上においても時間の流れが違うことを検出できるほどの高い精度です。光格子時計を小型化して、研究室の外の日常生活の場で時間の流れを計るのは初めてで、香取教授は今月、東京スカイツリーを運営する東武タワースカイツリーと実験を行う確認書を交わしました。

物理学の世界では、ことしのノーベル物理学賞に時間と空間のゆがみが宇宙を伝わる「重力波」の検出が選ばれるなど、高度な実験・観測技術の確立によって、時間はどこでも同じように流れるものだという一般の常識を覆す研究成果が相次いで報告されています。
研究グループもすでに研究室がある東京の都心と埼玉県の和光市とでは、標高の違いによって3日間に100億分の4秒、時間の進み方が違うことを確認していて、香取教授は「時間の流れ方は場所によって違うという考えが一般の人にとってもごく当たり前という時代が来るようになると思う」と話しています。
光格子時計とは
光格子時計は、東京大学の香取秀俊教授のグループが開発した超高精度の時計です。
宇宙が誕生した138億年前から動かし続けても現在の誤差が、1秒以下に収まるほど正確に時間を計れます。

現在の1秒の定義は、セシウム原子時計と呼ばれる時計を使って決められていますが、3000万年たつと1秒の誤差が生じていました。この時計は、真空の容器の中にあるセシウム133の原子の振動の回数で時間を計っていますが、セシウム原子の熱運動や、原子が互いにぶつかり合うことで振動数にぶれが生じるためです。

これに対し、光格子時計では、真空の容器の縦横にレーザー光線を走らせ、絶対零度近くにまで冷やしたストロンチウム原子を、この光でつくった格子の中に入れることで原子が互いにぶつかったり、熱運動をおこしたりしないようにしました。その結果、セシウム原子時計のおよそ1000倍の精度を実現し、私たちが日常暮らす空間でも時間の流れ方の違いを高い精度で計ることが可能になったのです。
さまざまな分野での利用 見込まれる
極めて高い精度で時間を計れる光格子時計は、さまざまな分野で利用できると考えられています。

たとえば情報社会を支える超高速の光通信です。光通信では、極めて短い時間に膨大な量の情報をやり取りするため、「いつ」送られた情報なのか、情報を送った側と受け取った側で時間をあわせる「同期」という作業が不可欠です。このため高い精度の時計を使って時間の刻み方を細かくできればできるほどそこに情報を詰め込み、大容量の通信ができるようになるのです。

またここまで高精度の時計になると、地球上で起きる時間や空間のごく小さなゆがみが検出できるようになります。
光格子時計に詳しい産業技術総合研究所時間標準研究グループの安田正美グループ長によりますと、たとえば火山の頂上に光格子時計を設置した場合、地中内部の重たいマグマが移動すれば、重力に変化がおき時間の進み方にも変化が生じます。この変化を光格子時計によって捉えれば火山活動の監視に役立ちます。
また地中に空洞がある場合にも、そこだけ重力が弱まり時間の進み方が速まります。これを利用すれば、油田の探索など鉱物資源の開発にも利用できる可能性があるということです。
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スクリプト終了

こうした高さ方向の相対論的な時間差測定実験は、長期安定度に優れたセシウム原子時計などで前世紀から日本を含めて世界各地で実施され、実証されてきていますが、今回は光格子時計とスカイツリーという新規性をアピールしています。しかし光格子時計を用いたより定量的な実験成果は以下の:
https://www.nict.go.jp/press/2011/08/04-1.html

などにより、セシウム時計より10倍は高精度であることは既知となっていますので、正確にはスカイツリーにての挑戦という点が本ニュースの新規性のアピールポイントでしょう。

一般に短期安定度の精度実証は比較的に容易ですが、たとえば1年という長期安定度については季節変化・日変化による機器の不安定度など様々な要因の誤差が入り込みます。

その測定から実績あるセシウム原子時計に比して長期安定度にて絶対値で千倍の高精度であることを実証するのは、都会雑踏雑音が顕著なスカイツリーにて行うことは、非常に困難で大変なことです。

旧神岡鉱山地下を活用しての重力波実験は鉱山地下の静謐性を活用しての挑戦です。

都会雑踏雑音が顕著なスカイツリーにて、どのようにして困難を克服できるのかの卓越したノーベル賞級のアイデアがどこにあるのかを、アピールしてほしい今回のニュースでした。

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