・・・赤い自転車で・・・
サトウキビ畑を走りぬけ
トウモロコシ畑を走りぬけ
急に開けた視界の先に
岬の慰霊塔が見えてくる
海に向かって
ゆるやかに傾斜した
青い芝生の広がる大パノラマが
キミの一番好きな場所だったね
赤い自転車を放り投げた
ボクタチは
洗いたてのスニーカーを脱ぎ捨てて
ふかふかの芝生の上に
並んでカラダを横たえる
つないだ掌ににじんだ汗を
お日さまにかざすと
“血管が透けてキレイ” と
キミが軽やかに笑う
それからいきなり
素足のままで駆け出したキミは
蒼い空まで突き抜ける
慰霊塔を見上げ
“何百何千のこの魂はいまどこを彷徨っているだろう”
そうつぶやきながら
静かにひざまずき
そっと目を閉じて
柔らかな胸の前で十字をえがく
“聖母マリアは確かに存在するんだ” と
キミの細い肩からまっすぐに伸びた両腕を
ぼんやりとみつめながら
あの日ボクは思っていた
↑ 詩が気に入っていただけましたら応援クリックお願いしま~す。