2009年秋の終わり。
南アルプス鳳凰三山に登りに行った日、生まれて初めてハチに刺されました。
鳳凰三山の山登りレポート
⇒鳳凰三山 秋の 終わり(1) - 山と葉っぱと猫が好き
まだ仄暗い明け方、登山口の夜叉神峠まであと少しの距離の林道を走っていた時のこと。
少しだけ開けていた運転席側のウィンドウの隙間から、何かが入ってきて髪の毛に引っかかりました。
最初は落ち葉か何かかと思って“それ”をつかんで、少しビクっとしました。
…なんか立体的なんだけど…
落ち葉のような、…虫のような。
一人で運転中だし、夜明け前は薄暗くて何だか目視できないし、
気味が悪いと感じて、とっさにすぐ窓の外に向かって投げ捨てたつもりでした。
その後数十分。さっきのことはすっかり忘れて、夜叉神峠の駐車場に着きました。
車内で準備をしてごそごそ動いていると、シートに座っていた太ももの裏側に突然、熱い激痛が走ったのです。
ものすごーく、びっくりしました。
足を上げてみるとそこには、体長3cmはある茶色いハチが、目を吊り上げて怒った顔(に見えた)で、うなっているではありませんか。
ぎ ゃ ー ー ー ー ! ! ! ! !
あわてて車を飛び降りました。(走行中じゃなくてほんとに運がよかったですぅ)
追いかけられる様子もない…ドアを開放して走って逃げたので、出て行ってくれるものと思い、しばらく待ってから再び乗車しました。
いないね?いないね?よし…いない…
ところが、彼はまだ潜んでいたのです…。
それも一番身近な場所に…。
プカプカがその時履いていた、ヒップスカートの裾の中に……。
車を飛び降りる時に太ももの下にいた彼は、スカートの裾に絡みついたまま離れず、
プカプカと一緒に車外に出ました。そのまま飛び立つこともせず、どういうわけかスカートの裾につかまったままで、再び一緒に車に乗ってくれたらしいのです。
なんてこった。そりゃないぜ。
そうとは知らず、今刺されてしまった太ももをどうにかせねばと焦っていたプカプカは、
周りに人も車もいないのを確認してから刺された部分を確認し、
箇所を絞ってみたり(太ももの背面なのであまり効果なし) 湿疹用の塗り薬を気休めに塗ってみたり、
応急処置的なことをしていました。(思い返せばあれは、なんて恥ずかしい格好だったであろう…)
その時、ふいにスカートの裾が体に触れ、何かの物体が挟まっている感触に気づいたのです。
「……」
まさかさっきのハチとは思わず、何のゴミかとスカートの上からむんずとつかみました。
指先にほんのり伝わった、モゾモゾとうごめく感触…
も…もしや…
ぎ ゃ ー ー ー ー ー ー ! ! ! ! !パート2
タイツ半下ろしの状態でまた車外に…なんて出れるもんですかいっ!
動けない。逃げられない。
や ら れ る 。 今 度 こ そ や ら れ る 。
とっさにプカプカは、その物体をつかんだ指先に力を入れました。
「キュゥ…」と声のような音を立てて、彼はつぶされていきました。
そのままドアを開けてパッと路面に払い落とした姿は、やはりさっきのハチでした…
何に刺されたか記録しておこうと撮ったハチの写真はこちらです。きれいな姿ですからご安心ください
※[後日追記]どうやら、スズメバチだということが、コメントを下さった方のおかげでわかりました。
あの時の指先の感覚は、何とも言いようがありません。
自分の身が危ないと感じてとっさに取った行動に、間違いはなかったと思いたい。
もし怒ったハチに車内で二度も三度も刺されたら、どうなっていたかわからない。
でもそんなことよりも、急激に直面した問題は「このあと登山なんかしていいのか!?」でした。
生まれて初めてのハチ刺されだから、アナフィラキシーの心配はないと思うけど…
でも初めてでもアレルギー症状が出ることもあるって、どこかで読まなかったっけ?
ああ、ポイズンリムーバー買っておけばよかった…
いくら手で絞ろうとしても、セルライトが多過ぎて(←悲劇) うまく局所をつまめない…
いざという時に救助を呼べる環境でいるためには、山の中に入るのが一番いけないのでは?
携帯はソフトバンクだから山中では全く使えないし、無線なんか持ってないし
どうしよう どうしよう…
このまま帰った方がいいのか、すごくすごく悩んだんですが、数十分じっとして様子を見てから、決心してやっぱり山に入ることにしました。
刺された場所が場所なだけに、こまめに状態チェックをすることができず、
タイツの上から触診で腫れ具合を様子見するしかできません。
直径5cmくらいの範囲でうっすら腫れているようにも感じるけど、定かではないし
時々足に力を入れると鈍い痛みが広がるのが怖かったです。
最初の一、二時間は気持ち悪くなったらどうしよう、などととにかく気が気でない状態でした。
いかなる結果になろうとも、ハチに刺された後で(しかも単独で!)ひと気の少ない山に入るのは間違っているという罪悪感で、今から戻ろうか、どうしようかと葛藤しながらの登山でした。
せっかく久しぶりに楽しい気持ちで長距離運転して来れたのに。
今年最後の山にするつもりだったのに…。その思いがどうしても引き返す決心を与えてくれません。
結局、数時間後に山小屋に着く頃までは、アレルギー症状のようなものもなく、
痛みも時々鈍いのがある程度で行動に支障もないし、問題なさそうだな、と少し安心して、
あまり気にならなくなってました。
到着した宿泊予定の南御室小屋では、二階の屋根裏をひとりで使わせていただけたので、
人目を気にせずハチ刺され箇所をチェックできました。
南御室小屋 【鳳凰三山】 - 山と葉っぱと猫が好き
薄っすらとむくみ程度に腫れている感じですが、痛くありませんでした。
なんだ、たいしたことなくって、よかった…
でもその安心感が、次第に新しい後悔に変わっていきました。
わたしは、あのハチを殺してしまった。
この指でつぶしてしまった時のキュゥ…という音が、感触が、切なく思い出されました。
彼にとってみれば、空を飛んで横断していた時たまたますっ飛ばしてきた車の窓の中に、入ってしまったわけで。
人間を狙ってわざと飛び込んできたわけじゃないんです。
あわてて目の前の髪の毛につかまっただけなのに放り投げられて、這い上がったら今度はでかい太ももの下敷きにされて。苦しいからどいてほしくて針を出して刺したんでしょう。
何も好き好んでスカートの裾に入っていたわけじゃなく、たまたま足が絡まっただけかもしれない。
真っ暗な布の中に入った状態のまま、身動きもできず、圧死させられてしまったんです。
そんな風にハチの身になっていろんなことを想像していると、彼にとっての悲劇を思わずにいられなくなりました。
刺された箇所の何でもない状態を見たら、なんだかそのハチの“やさしさ”を感じてしまったのです。
もっとひどく刺すことだってできたのに、「ちょっとどいてよー!」くらいのつもりで軽く刺しただけかもしれない。(超痛かったけど)
たまたまうまく逃げられなかっただけなのに、わたしに殺されてしまったんだと思ったら
そのハチのことがかわいそうになって、申し訳ない想いで、少し泣いてしまいました。
山小屋の屋根裏部屋で、自分で殺したハチを想って泣く女、プカプカ。キモイって言われてもいい。
…やっぱりこの頃はすこし情緒不安定だったんですね。
でも、今もまだあのハチを思い出すと ごめんね って気持ちになってしまうのは変わりません。
こんなこと書いたってウソ臭いですね。言っときますけど別に、プカプカはやさしい人でもないし、いい人でもないですよ。
残酷でつめたい部分も持ち合わせてますから、ご安心ください。(?)
++++
今年の秋で、スズメバチに刺されてから一年経ちます。
今回はたまたま何の症状も出なかったからよかったものの、やはり人によっては初回からアナフィラキシー症状を起こす場合や、吐き気などの症状に見舞われることもあるらしいです。
あれからポイズンリムーバーを買って、どんな軽度の登山の時も必ず携帯するようにしています。Amazon.co.jpポイズンリムーバー
ハチに二度刺されるとアナフィラキシーショック症状が出て、死に至る場合が多いという話をよく聞きます。
それで最近初めて調べてみたんですが、(遅いよ調べるのが)
ハチに刺されても ハチ毒の抗体が体に残っていなければ、再度刺されても問題ない場合がある。
でも抗体が残っていた場合、再度のハチ刺しで重篤な症状になり得る ということがわかりました。
病院で抗体検査してもらえば、自分の体内にハチ毒の抗体があるかわかるそうです。
抗体があるとわかった場合は、医療機関で処方してもらえるアドレナリン自己注射薬を持っていた方がいいそうです。
検査を受けたら、いずれまた書きます。
ハチのことを思って泣いてる場合じゃないんだね?そうなんだね?仕方ないねぇ…
この翌年、今度は山でブヨに噛まれて大変な目に遭いました。
久しぶりにコメントの受付を再開しています。
申し訳ありませんが、今はコメントへのお返事をしていませんです…
通りすがりの者です。
ハチの写真見ましたが、スズメバチですよ!!
恐らくキイロスズメバチかと。
スズメバチは2回刺されると危ないと言われます。
気をつけてください。
>セルライトが多過ぎて(←悲劇) うまく局所をつまめない…
判り過ぎる!脂肪を寄せるとセルライトなのか!
さされた腫れなのか!どっちなんだ君!
>山小屋の屋根裏部屋で、自分で殺したハチを想って泣く女、プカプカ。キモイって言われてもいい。
ここも笑いました~。でもすっごく判ります。
事が起こった時、クールで事務的なヒトになるか、
優し気な(あくまで気、です)女の子になるか…
この時はクールビューティで行こうと決めたんでしょう。
あぁ~昨日帰ってきたけどまた、山行きたい!
プカプカさんみたいに、一人でチャチャッと行けるオンナになりたいな。
羨ましいです、ホントに
まさしくスズメバチ!!
スズメバチに刺されてほったらかしでも平気な人もいるんですね。
びっくりしました。
つぶした勇気は称賛ものです。奴らは二度、三度と刺しますから。
しかし、そんな早朝から飛んでるものなんですね。
勉強なります!