マルグリット嬢は騙されなかった。彼女はこう思っていた。
「何か言語道断な振る舞いの証拠がここにあるわ」
しかし、彼女は疑心を外に表さない自制心を保っていた。この家政婦がでっち上げた嘘を見破ってはいたが、彼女はそれを信じたふりをした。
「まぁ、そうだったの、可哀想なレオン」彼女はあっさりと言った。「貴女ったら怖がり屋さんね。恥ずかしいわ」
マダム・レオンは首を振った。
「恥ずかしいところをお見せしたことはよく分かっておりますの」と彼女は答えた。「でも、どうしようもないでしょ、お嬢様、やってしまったことは取り返しがつきませんもの。怖いって思ったら、理屈じゃないんですよ。何か白い物が確かに見えたんです。今ここでお嬢様の顔を見るぐらいはっきりと。あれは一体何だったんでしょう?」
自分の吐いた嘘がまんまとまかり通ったと思った彼女は話を潤色しようと、更に付け加えて言った。
「こうなったら私、一晩中震えて眠れませんわ。何者かが庭に侵入しているんじゃないかと思うと。ねぇ、お願いですから、召使いたちに庭の巡回を命じてくださいませな……。パリには大勢の良からぬ連中がいるんですもの!」
マルグリット嬢は他の場合ならば、このような馬鹿げた要求は一蹴したであろうが、今は自分を欺こうとしているこの偽善者に乗せられることにした。
「そうね、それがいいわ!」と彼女は答えた。そしてカジミール氏と門番のブリジョー氏を呼び、角灯を持って隈なく捜索するよう命じた。勇敢さを自任していない彼らは、見るからに不承不承だったが、最終的には命令に従ったが、当然のこととして何も発見しなかった。
「何はともあれ」とマダム・レオンは言った。「これでほっとしましたわ!」
彼女は実際、ほっとしていた。もう少しで秘密を知られそうになったのであるから。彼女の言葉を借りると『大冷や汗』をかいた後だったのだ。
「うまく追及を逃れたわ」と彼女は思っていた。「ああ神様、一時はどうなることかと思った。一方にはマルグリット嬢、もう一方にあの男、と二人に挟まれて、もしほんとのことが知られたら、どうなっていたことやら……でもあたし、抜け目なく立ち回ったから、何も怪しまれずに済んだわ……」
しかしマダム・レオンが勝利宣言するのはちょっと早すぎた。マルグリット嬢は何かが怪しいと睨んでいただけでなく、何としてもその証拠を手に入れようと固く心に決めていたからである。