私の年齢に免じ、また母親として一家を支えてきた資格に免じて貴女に言わせてください。どうかお受けくださいませ。貴女の気高い賢明なお考えをもってしても、他にどんな選択がおありになるというのでしょう? 何処に行かれるおつもりなのですか、親愛なるマルグリットちゃん? いずれにせよ、そのことについては明日お話いたしましょう。そうすれば私どもの真情を理解し、私どもを愛してくださり、私どもに貴女を愛させてくださると信じております。私にとって貴女は、亡くなった私の愛する娘の代わりとも思っております。あの可憐な優しいバティルドのため私はどれほど涙を流しましたことか……。では明日、お目に掛かります。貴女の一番の友として貴女を抱きしめさせてくださいませ。
アテナイス・ド・フォンデージ』
マルグリット嬢はこの手紙に驚き茫然とした。こんな手紙を書いた女性とは、せいぜい五、六回しか会ったことのない間柄であり、ド・フォンデージ家を訪れたこともなく、彼女と交わした言葉は合計してもほんの二十言ほどだった。更に、この夫人が氷のように冷たい軽蔑の視線で彼女を圧し潰そうとしたときのことを思い出した。そのとき彼女は苦痛と恥辱と怒りの涙に暮れたのだった。その際ド・シャルース伯爵はこう言ったものだ。
「子供みたいなことを言うんじゃないよ、マルグリット、あんな恥知らずの馬鹿女は相手にしなけりゃいいんだ」
というわけだ! その『恥知らずの馬鹿女』が突然熱い感情を吐露するこんな手紙を寄越してきた。その中で彼女はまるで昔からの信頼できる友のような調子でマルグリット嬢の愛情を得ようとしてきたのだ。あのように高慢な女が一夜にしてこのように変身することなど可能であろうか? マルグリット嬢にはとてもそうとは信じられなかった。いわゆる騙されやすい人間ではなく、むしろ非常に猜疑心の強い方である彼女は、不幸を味わった人間に共通する、善意より悪意により敏いという傾向を持っていた。フォンデージ夫人は何らかの差し迫った断固たる理由に急かされてこの手紙を書いたのに違いない……が、それは何であろう? マルグリット嬢には分かり過ぎるほどよく分かった。『将軍』は彼女がド・シャルース伯爵の相続財産である何百万フランかをくすねたのではないかと思い、その疑念を妻に話したのだろう。彼と同じくらい金銭欲が強く、また良心に欠ける妻が甘言を弄し、くすねた金を取り上げようと考えたのだろう。彼らの息子に盗んだ金の恩恵を与えようと考えて。5.9