パスカルは答えなかった。母の言うことは全く正当だと分かってはいたが、それでも彼女の口からこのような言葉を聞くのは身を切られるように辛かった。何と言っても、男爵夫人はマルグリットの母親なのであるから。
「そういうことなのね」とフェライユール夫人は、徐々に興奮の度を増しながら言葉を継いだ。「そういう女性がいるというのは本当の事なのね。女はこうあるべきというものをこれっぽっちも持たず、動物にもある母性本能すら持たない、という……。私は貞淑な妻だったけれど、だからって自分が立派だと思っているわけではないわ。そんなこと、褒められるようなことじゃない。私の母は聖女のような人だったし、私の夫を私は愛していた……義務と言われることは、私にとっては幸福だった……だから私には言える。私は過ちを許しはしないけれど、理解はできるわ。若くて綺麗で男から言い寄られる女が、パリの真ん中に一人きりになって分別をなくしてしまうということ、そして自分のためにひと財産を手に入れるため外国に渡り多くの危険を冒している誠実な男のことを忘れてしまうってことが起こり得るのは、私にも分からないではない。男の方だって自分の誇りと幸福を、そんな風に危険に曝すのは無分別とも言えるわ。でもその女は心弱く、貞節を守れず、子供を身ごもり、挙句の果てに卑怯にもその子を、まるで犬の子を手放すように見棄てるなんて、それは私の理解を越えることです……いっそ子供殺しの方がまだ分かります……その女には心もなければ情もない、人間らしさが欠如しているのよ。でなければ、この世界のどこかに自分が血と肉を分け与えた子供がいると知りつつ、その子がこの世のどこかで惨めさに怯え、捨てられた悲しみに曝されていることを思えば、どうして眠ったり普通に生活したりできるでしょう……? その女はお金持ちだというではありませんか……宮殿のような家に住んでいるとか……それなのに、自分の装いや楽しみのことしか考えないとは!どうやったら毎日の一秒一秒を自分に問いかけずにいられるのでしょう、『あの子はどこ? いま何をしているの?…… どうやって暮らしているの? 不自由はしていないかしら、服はちゃんと着ているかしら、食べ物は十分にあるかしら? 掃きだめのようなところに転落してはいないかしら? これまでは自分の労働で食べてこれたけれど、今日は仕事がなくなってパンにも困ることになって自暴自棄になっていないかしら!』 と。 ああ神様、その女はどうやって外に出たりできるのでしょう! 飢えのために自堕落な生活に追いやられている可哀そうな女たちが通りすがるのを見るたび、どうして思わずにいられるのでしょう? 『あれは私の娘かもしれない!』 と……」
パスカルは母の感情の爆発に激しく心を揺すぶられ、顔面が蒼白になった。母が次のような言葉を発するのではないかと恐れ、彼の身体は震えた。
「お前、よくお聞きなさい。お前が結婚しようとしているのは、そんな女の娘なのよ!」
「そういうことなのね」とフェライユール夫人は、徐々に興奮の度を増しながら言葉を継いだ。「そういう女性がいるというのは本当の事なのね。女はこうあるべきというものをこれっぽっちも持たず、動物にもある母性本能すら持たない、という……。私は貞淑な妻だったけれど、だからって自分が立派だと思っているわけではないわ。そんなこと、褒められるようなことじゃない。私の母は聖女のような人だったし、私の夫を私は愛していた……義務と言われることは、私にとっては幸福だった……だから私には言える。私は過ちを許しはしないけれど、理解はできるわ。若くて綺麗で男から言い寄られる女が、パリの真ん中に一人きりになって分別をなくしてしまうということ、そして自分のためにひと財産を手に入れるため外国に渡り多くの危険を冒している誠実な男のことを忘れてしまうってことが起こり得るのは、私にも分からないではない。男の方だって自分の誇りと幸福を、そんな風に危険に曝すのは無分別とも言えるわ。でもその女は心弱く、貞節を守れず、子供を身ごもり、挙句の果てに卑怯にもその子を、まるで犬の子を手放すように見棄てるなんて、それは私の理解を越えることです……いっそ子供殺しの方がまだ分かります……その女には心もなければ情もない、人間らしさが欠如しているのよ。でなければ、この世界のどこかに自分が血と肉を分け与えた子供がいると知りつつ、その子がこの世のどこかで惨めさに怯え、捨てられた悲しみに曝されていることを思えば、どうして眠ったり普通に生活したりできるでしょう……? その女はお金持ちだというではありませんか……宮殿のような家に住んでいるとか……それなのに、自分の装いや楽しみのことしか考えないとは!どうやったら毎日の一秒一秒を自分に問いかけずにいられるのでしょう、『あの子はどこ? いま何をしているの?…… どうやって暮らしているの? 不自由はしていないかしら、服はちゃんと着ているかしら、食べ物は十分にあるかしら? 掃きだめのようなところに転落してはいないかしら? これまでは自分の労働で食べてこれたけれど、今日は仕事がなくなってパンにも困ることになって自暴自棄になっていないかしら!』 と。 ああ神様、その女はどうやって外に出たりできるのでしょう! 飢えのために自堕落な生活に追いやられている可哀そうな女たちが通りすがるのを見るたび、どうして思わずにいられるのでしょう? 『あれは私の娘かもしれない!』 と……」
パスカルは母の感情の爆発に激しく心を揺すぶられ、顔面が蒼白になった。母が次のような言葉を発するのではないかと恐れ、彼の身体は震えた。
「お前、よくお聞きなさい。お前が結婚しようとしているのは、そんな女の娘なのよ!」