彼は満足のあまり、思わず次のような思い上がった独り言を口にした。
「そうとも、成功しない筈があるか? これほど簡単でかつ素晴らしい結果をもたらすものが他にあるかってんだ……俺は好きなだけ搾り取ることができる。十万、二十万、いや三十万フランも可能だ! ああド・シャルース伯爵はよくぞ死んでくれた……こうなりゃヴァロルセイも許してやろうじゃないか……俺の四万フランはくれてやる……マルグリット嬢と結婚でも何でもするがいい、子宝に恵まれることを祈るよ……マダム・ダルジュレに幸いあれ、だ!」
彼は自分の先行きが上々だとすっかり思い込んだので、正午になるとシュパンと共に辻馬車に乗り込み、ウィルキー氏に知らせなければならぬ、と宣言して彼の家へ向かった。エルダー通りに到着すると、彼は今一度シュパンに馬車の中で待つようにと命じ、家に入ると尋ねた。
「ウィルキーさんを訪ねてきたのですが」
「三階ですよ」と女管理人は答えた。「左側のドアです」
フォルチュナ氏はゆっくりと階段を上った。普段の自分を取り戻し、冷静沈着な態度を取ることが絶対に必要だと感じていたので、一時的に表情を取り繕ってからようやく呼び鈴を鳴らした。少年の召使いが現れた。ウィルキー氏の哀れな奴隷である彼はふんだんに主人から盗みを働くことで仕返しをしている少年であったが、主人は留守である旨、ぺらぺらとまくし立て始めた。
が、フォルチュナ氏はこういう場合の扱いは手慣れていた。彼は言葉巧みにこの少年を攪乱し、訳が分からなくなった彼はフォルチュナ氏を小さな客間に入れてしまった。
「それでは掛けてお待ちください。主人に知らせて参ります」と彼は言った。
「どうぞ」とフォルチュナ氏は答えた。
しかし座ることはせず、自分のいる部屋と半開きになっているドアの向こうの隣の部屋を観察し始めた。住まいを見ればそこに住む人の性格が分かる、貝殻を見ればその中に住む生き物の形状が分かるように、いうのが彼の持論であった。
ウィルキー氏は豊かな暮らしをしていた。が、そこにふんだんにある装飾品はこれ見よがしで、趣味を疑うようなものばかりであった。本はほんの少ししかなかった。がその代わり、あらゆる種類の鞭、乗馬用鞭、拍車、銃、猟の獲物袋、ベルトにつける薬弾盒、等、スポーツ愛好家ならばなしでは済まされぬ道具が所狭しと並んでいた。4.13