楽しくて、どこか恐い映画です。ネタバレ、あります。
この映画観た時の感じ、何かに似てるってずっと考えてたんですが。これって感じが出なかったんですけど、蟲師とか、ドラえもんのいくつかの映画に感覚が何となく近い。
今までの宮崎作品と決定的に違うのは、人間の世界と神様の世界が致命的にあやふやなんですよ。何かあったら、持ってかれるぞって感じ。今までのが童話だとしたら、ポニョは口伝による昔話。宮崎作品って、やたらと神話とかのモチーフとか出てきてますけど、今回は失敗の結果が凄く恐い。
例えば、千と千尋も、トトロのメイも、一回神様の世界に行ってるんですよね、多分。でも、絶対なんとかなるって気持ちが常にある。なぜなら、こっちの世界とあっちの世界は重なっててもちゃんと別々なんですよ。
ポニョは、最初から違うんです。不思議な事、違和感みたいなのは沢山出てくるんですけど、登場人物達は基本的に無視です。その違和感が、やたらにあやふやさを醸してくる。非常に現代っぽく世界観が作ってあるのに、凄く大事な部分が違和感だらけなんですよ。最初、ポニョと兄弟以外はおれの感覚だとちゃんと魚の形で、ポニョとその兄弟はあきらかに変な姿形なわけです。なのに、誰も何も言わないから、作中ではそう見えてないんだと解釈してたんですよ。そしたらトキさん?とかいうお婆さんが人面魚だって言うんですよ。え?って感じです。多分、ポニョを否定したのは幼稚園の女の子とこのお婆さんだけだと思うんですが、二人ともなんか文句言ったり、主人公がイヤな事を言うんですよ。っていうか、神様の世界に行く事が良くないって警告してるんじゃないかと思ってます。
で、ポニョが魔法の蓋を開けた瞬間に人間の世界は神様の世界になってしまったと思うんですよ。あっち側に全部いっちゃう。大人には秘密、とか、限定した空間や人じゃなくて、それはもう全部行ってしまって、水に沈んでしまうんですよ。で、船に乗ってお母さんを探す訳ですけど、おれとしては、船って文明で、こっち側の力なんじゃないかと。だって途中で出会う漁船とかも人力で動かしてるんですよ。お父さんの船もエンジン止まっちゃう=あっち側に行ったって事だと思います。だから、蝋燭が無くなって、次の蝋燭は赤ん坊(この子はまだ人間の世界の住人じゃなかろうかと思ってます)のお母さんに貰うのだけど、ポニョは寝ちゃう。そしたら、お母さんの車=人間の力が空っぽの状態で見つかって、トンネルな訳ですよ。お母さんもあっち側に行っちゃって、トンネルを通って主人公も遂にあっち側に行ったんだと思います。
でも、多分最後のラインはポニョを否定してたお婆さん。まぁ、ポニョと主人公を受けとめて(受け入れてって事?)みんなのいる神様の世界に行くんですけど。
で、まぁラストは主人公がポニョを受け入れてめでたしめでたしな訳ですよ。
日本の神話、神の概念って言うのは、必ずしも死を意味している訳でなく、今までの宮崎作品もそうでした。八百万の神ってヤツ。でも今回は、人は死んで神になるって概念が凄く強い気がします。有体に言うと、ポニョが主人公を神の世界に来る事を望んで、その為に人間全部を連れてっちゃった。人じゃなくしてしまったんですよね、多分。
見方によっては、宮崎監督の遺書のようでもあるし、自然信仰的な見方も出来る。
でもとにかく、そういう畏怖の対象を作っちゃったって事が凄い事だと思うんですよ。雷がへそを取る、とか、そういう事ですよ。人の回りは神様が沢山いて、すっげぇパワーがあって、って。宮崎監督、おれそっちいっちゃうよって言ってるんでしょうかね。
ぜひ子供に観て欲しい。
何か、ポニョは、何百年かしたら今ある昔話の中の一つに入るような気がします。
みんな、八百万の力借りて生きてるって事ですよ、おれらもね。すべてはすべてにつながってんです。
佐藤様☆