経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

トランプ流 財政政策の骨格 : 予算教書

2017-05-25 07:50:58 | トランプ
◇ 歳出規模は454兆円 = ホワイトハウスは22日、2018年度(本年10月-来年9月)の予算教書を発表した。それによると、歳出規模は4兆0940億ドル(約454兆円)で、前年度比1%の増加。歳入は3兆6540億ドルで、4400億ドルの赤字予算となっている。ただ、この赤字幅は17年度に比べると27%減少した。長期的には27年度に財政の黒字化を達成する計画だ。

歳出では対外援助と環境予算を大幅に削減。また低所得向けの医療保険や食料配給券などの福祉関係費も、大胆に減額する。さらに消費者を法外な金融取り引きから保護する部局を廃止、証券取引を監視するSEC(証券取引委員会)の予算もカットした。たとえば医療保険では8000億ドルの歳出削減を見込んでいる。その一方、国防関係費は540億ドルの増額を要請した。

景気対策はほぼ公約通りに実行する。法人税率は35%から15%に引き下げ。所得税率は10%、25%、35%の3段階に簡素化する。インフラ投資は道路、橋、空港などの建設費として地方政府に総額2000億ドルを補助する計画だ。この結果、経済成長率は21年までに3%へと上昇する。

成長率の上昇で税収が増加、18年度も前年度比6%の税収増を見込んでいる。したがって、この財政計画が成功するかどうかは、3%の成長率を実現できるかどうかにかかっている。もう1つの問題点は、言うまでもなく議会がこうしたトランプ構想をどこまで受け入れるかだ。議会で大きな修正を受ければ、全体像は全く狂ってしまうだろう。

      ≪24日の日経平均 = 上げ +129.70円≫

      ≪25日の日経平均は? 予想 = 上げ

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一時の アダ花? : GDP 1-3月期 (下)

2017-05-24 05:27:12 | 景気
◇ アベノミックスはどこへ行った = 1-3月期だけの成長率をみると、日本の実質成長率2.2%という数字はアメリカやEU諸国を上回っている。だが今後もその優位を維持できるかということになると、どうも形勢は不利なようだ。なにしろ少し長い目でみると、成長のスピードが遅すぎる。5四半期にわたってプラス成長はしたものの、その平均伸び率は1.45%にとどまっている。

現在の景気回復は、第2次安倍内閣が発足した12年12月から始まった。政府によると、景気の拡大はこの2月で51か月に及んだ。戦後3番目に長い回復期間で、もし8月まで続くと1965年に始まった“いざなぎ景気”を抜くという。だが当時の成長率は年平均で10%以上、今回は1%にも満たない。

成長スピードが遅すぎると、不測の事態が起これば成長率はすぐマイナスに落ち込むだろう。経営者はそれを恐れて、設備投資や人件費にカネを使いたがらない。個人も将来の生活費を心配して、貯蓄に励む。これでは安倍首相の言う「経済の好循環」は生まれにくい。

アベノミックスが始まったとき、人々の心には将来への強い希望が点灯した。このため経済は活況を取り戻し、株価も上昇した。しかし4年半が経過し、アベノミックスの賞味期限はすでに切れてしまっている。そして1%未満の経済成長が“常識”になった。しかも悪いことに、政府は現状を是認し何も考えていないようにみえる。景気という観点からすると、これが人々の将来に対する希望を奪っているのではないか。

      ≪23日の日経平均 = 下げ -65.00円≫

      ≪24日の日経平均は? 予想 = 上げ

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一時の アダ花? : GDP 1-3月期 (上)

2017-05-23 08:32:17 | 景気
◇ 1年ぶりの高い成長率 = 内閣府が発表した1-3月期のGDP速報によると、年率に換算した実質成長率は2.2%だった。事前の民間予想を上回り、昨年1-3月期以来の高い伸び率となっている。これで5四半期連続のプラス成長。まずまずの成績だと評価してもいいはずだが、発表があった日の株式市場はほとんど反応しなかった。なぜだろう。

内訳をみると、いずれも年率換算で個人消費が1.4%の増加。企業の設備投資は0.9%増、住宅投資は3.0%増だった。一方、政府の公共投資は0.3%の減少。輸出は8.9%の増加となっている。この結果、経済成長に対する寄与度は内需が1.6%分、外需が0.4%分となり、内外需のバランスもよかった。

ただ、すべてが満点というわけではない。たとえば個人消費は、昨年が台風の影響で伸び悩んだことの反動だという指摘もある。また設備投資はプラスだったものの、前年比では急減した。また輸出の伸び率も縮小している。このように問題点を挙げればキリはないが、最近の実績としてはそんなに悪くはない。

問題は今後の見通しにある。先ごろ発表された3月の家計調査では、消費支出額が前年比で1.3%も減少した。こんな傾向が続けば、4-6月期の個人消費は落ち込む心配がないではない。またトランプ大統領の弾劾騒ぎで円相場は上昇しており、輸出の先行きも楽観を許さない。内外需ともにブレーキがかかれば、成長率は鈍化してしまうだろう。

                             (続きは明日)

      ≪22日の日経平均 = 上げ +87.52円≫

      ≪23日の日経平均は? 予想 = 上げ

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今週のポイント

2017-05-22 05:32:20 | 株価
◇ カベに跳ね飛ばされた株価 = 日経平均は先週16日の取引時間中、2万円の大台にあと2円というところにまで接近した。そのとき市場関係者の多くは、これで2万円台載せは確実だと思ったに違いない。ところが利益確定売りに押されて下げているうち、こんどはトランプ大統領の弾劾騒ぎが勃発。結局、週間では293円の値下がりとなってしまった。

大統領の弾劾騒ぎで、ダウ平均も17日は370ドルの大幅な下げとなった。しかし、あとは反発し週間では92ドルの値下がりにとどまっている。これはアメリカ企業の業績が好調を維持しているためで、下値の抵抗力が強いことも判明した。ただトランプ大統領の経済政策には、ますます期待が持てなくなっている。この失望感は、まだ尾を引くだろう。

何か新しい好材料が出ないと、2万円台載せは難しい。東京市場では、こんな見方が広まっている。先週は予想を上回る1-3月期のGDP速報も発表されたが、市場はほとんど反応しなかった。トランプ経済政策と同様、アベノミックスも賞味期限切れになっていることを、総理官邸は感じ取っていないように思われる。

今週は22日に、4月の貿易統計。23日に、3月の全産業活動指数。26日に、4月の消費者物価と企業向けサービス価格。アメリカでは23日に、4月の新築住宅販売。24日に、4月の中古住宅販売と3月のFHFA住宅価格。26日に、1-3月期のGDP改定値が発表される。なお23日には、トランプ大統領が予算教書を議会に提出。また25日はOPEC総会、26日にはG7サミットが開かれる。

      ≪22日の日経平均は? 予想 = 上げ≫  
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サタデー自習室 -- 水の 経済学 ⑦

2017-05-20 08:02:21 | 保育所
◇ “仮想水”という考え方 = 夕食でポテト・チップスをつまみながらビールを飲み、牛どんを食べた。そこで「あなたは約2000リットルの水を消費しました」と言われたら、だれでもウソだと思うだろう。だが“仮想水”という考え方によると、そういう計算になる。要するに大麦やホップ、じゃがいもや牛が育つまでには大量の水が必要だ。その分を計算に入れる考え方である。

たとえば牛肉1キログラムを得るには2万0600リットル、大麦1キログラムには2600リットルの水が必要だと計算されている。特に日本は食料の輸入大国だ。その食料が生産されるまでに、外国では大量の水が消費された。したがって日本は食料の輸入を通じて、水も輸入したことになる。東大生産技術研究所の試算によると、その量は年間427億トン。国内で食料生産に使う農業用水の8割に達するという。

この“仮想水”という考え方は、1990年代にロンドン大学のアンソニー・アラン教授が提唱した。食料の輸出入が各国の水資源に与える影響を調べることが目的だった。最近はこの考え方を使って「だから日本は水不足の国なのだ」と主張する学者もいるが、感覚的にはピンとこない。

たしかに輸入した分の食料を日本国内で育成すれば、それだけの水を消費するだろう。けれども、たとえばオーストラリアで育った牛は、消費した水の大部分を現地で還元している。また“仮想水”は食料に限って考えているが、日本が輸出する鉄鋼や化学製品の生産には大量の水を消費する。

                                    (続きは来週サタデー)

      ≪19日の日経平均 = 上げ +36.90円≫

      【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】   

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