ぽんしゅう座

優柔不断が理想の無主義主義。遊び相手は映画だけ

■ 朝が来る (2020)

2020年11月12日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」
諦めていた“もの”を手に入れた者と、手に入れた“もの”を失う者。互いの「幸福」という道理の末に生じた、のっぴきならない心情の移ろいが“風と光と海”の揺らぎをモチーフに綴られる。引き継がれた“もの”とは自らの「幸福」ではなく、境遇を超えた共通の「思い」だという気づき。

瀬戸内の小島に集い、それぞれの事情を秘めながら、淡々と出産の日を待つ生む側の女たちの“たたずまい”が、価値や道徳の枠の限界を示唆して、お仕着せの「幸福」のありかたを考えさせられる。ドキュメンタリー気風がドラマを触発する河瀬直美演出の真骨頂。

台詞に頼らず感情の機微を巧み見せる蒔田彩珠がとても良い。彼女を始めて意識いたのは南沙良とダブル主演した『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(2017)だった。先日、観た『星の子』でも芦田愛菜の存在感のある姉を好演していた。日本映画界には才気ある女優さんがどんどん登場してくる。

余談です。浅田美代子さんは『赤い文化住宅の初子』や『エリカ38』で、怪しい組織の勧誘員を好演した印象が強いので、先の展開が心配でちょっとハラハラしながら観ていました。

(11月10日/TOHOシネマズ南大沢)

★★★★

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