ぽんしゅう座

優柔不断が理想の無主義主義。遊び相手は映画だけ

■ 大いなる不在 (2023)

2024年08月05日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」

一つひとつのシーンに未知の事実を読み解く仕掛けが必ず準備されていて若い夫婦共ども我々を老夫婦の過去へ導いていく。そのたたみ掛けるような語り口がスリリングでスクリーンか目が離せなくなる。そして正気の残滓を滲ませる父親(藤竜也)の自信満々ぶりの悲しさ。

同じようにアンソニー・ホプキンスが認知症を発症したインテリ老父とその家族を描いた『ファーザー』 (2020)では患者が目にしている「主観」世界を描いてホラーの様相を呈していた。本作の元大学教授の認知のズレは、彼のいささか高慢なプライドと現実のズレの体現という「客観」として描かれる。

息子夫婦の前にさらされた、その無防備な“傲慢さ”の残滓は「この男の過去の言動ならさもありなん」と見えつつ、人間の業の深さと狂気のあわいの“無常”として切なくも悲しい。藤竜也、圧巻の存在感。

(7月31日/テアトル新宿)

★★★★

【あらすじ】
東京で俳優をしている卓(森山未來)は大学教授だった父親の陽二(藤竜也)が認知症になったとの知らせを受け、妻の夕希(真木よう子)とともに九州の実家を訪ねる。幼いころに両親が離婚し父親に捨てられた感じてる卓は父とはずっと疎遠で、プライドが高く一方的な持論で相手を説き伏せてしまう陽二の性格も疎ましく思っていた。物が散乱した実家には、父の再婚相手の直美(原日出子)の姿はなく行方が分からなくなっていた。虚実が曖昧な父の言動と残されたメモや日記の存在から徐々に陽二と直美の生活と、二人のさらなる過去が見え始める


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