ぽんしゅう座

優柔不断が理想の無主義主義。遊び相手は映画だけ

■ あにいもうと (1976)

2020年11月02日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」
おお、秋吉久美子!。たぶん彼女の最高作にして草刈正雄、唯一の快心作。草刈の肉体が発散する野卑パワーが容赦なく、対峙する秋吉の豹変居直りぶりも圧巻。そんな“野卑”と“居直り”の顛末に、終わりゆく時代を継ぐ者たちの良質の地縁と血縁を見い出す今井正の良心を見た。

東京とたった一本の川で隔てられた精神的僻地の、またその隅の兄と姉と妹(池上季実子)は意識せざる連帯(絆などでは決してない)を心の支えに、東京に象徴された“明日”へ向かって共に橋を渡るのだ。1934年(昭和9年)に発表された原作に、1970年代的息吹を吹き込んで、まだ見えぬ明日を模索する青春ドラマへと昇華するリメイクが見事。

川辺の生活を失ってふらつく父(大滝秀治)に対して、か細いながらもしっかり根をはり、川辺の人生を生きる賀原夏子のお母さんが素敵。

公開当時に観て、とても面白かったという記憶がありながら、その後観る機会がなっかた本作を、ようやくスクリーンで再鑑賞。調べてみると初見は1977年1月、池袋の文芸地下。併映は『十六歳の戦争』だった。

(10月28日/シネマヴェーラ渋谷)

★★★★

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