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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

音楽ネットワーク「えん」:『虹と雪のバラード』

2020年03月04日 | pocknのコンサート感想録2020
2月29日(土)音楽ネットワーク「えん」 “佐伯隆と仲間達”第8巻『虹と雪のバラード』(通算781回)
~第1回演奏会(1992年)から28年ぶりの2/29(土)を記念して~
スタジオコンチェルト

【出演】
天野 亘(Bar)/尾上 聰(Pf, Sax)/風羽藍玖(Comp,Pf)/加藤英雄(Vla)/小林真一(Pf,Imp)/佐伯 隆(Pf,G)/榊原邦恭(Comp,Pf,Imp)/高島 豊(Comp,Org)/長田博之(Pf)/新田由美(Cl)/古郡聖司(Hrn)/藪中登来夫(Fl)/山口純平(Tub, Pf)/湯浅 丹子(v)/油井 知也(G)
《賛助》
S:田村 茜/Vn:土岐祐奈/Pf:平尾柚衣

♪ モーツァルト/ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲ト長調K423~第1楽章
♪ エルガー/加藤智美編/愛の挨拶
♪ ヴァヴィロフ/カッチーニのアヴェマリア
♪ シューベルト/春の想い
♪ ドニゼッティ/フルートとピアノのためのソナタ
♪ 風羽藍玖/piccola storia 第1曲 -Di quei giorni a voi
♪ 風羽藍玖/ノヴェレッテ
♪ クィルター/音楽は優しい声が消えても
♪ ベートーヴェン/ピアノとヴァイオリンのためのソナタ 第5番ヘ長調Op.24~ 第1楽章
♪ ベートーヴェン/ピアノソナタ 第14番嬰ハ短調Op.27-2「月光」~ 第1楽章
♪ ショパン/24の前奏曲Op.28~第20曲ハ短調
♪ サン=サーンス/クラリネットとピアノのためのソナタ 変ホ長調Op.167~第2楽章
♪ 平井康三郎/九十九里浜
♪ 信時 潔/連作歌曲「沙羅」~第2曲「 あづまやの」、 第5曲 「鴉」
♪ トスティ/「四月」
♪ ♪ ♪

♪ パガニーニ/協奏的ソナタ イ長調Op.61~第1楽章
♪ パガニーニ/カンタービレ ニ長調Op.17
♪ グラナドス/組曲「ゴイェスカス」~第4曲「嘆き、またはマハと夜鶯」
♪ サン=サーンス/見えない笛
♪ 榊原邦恭/24の前奏曲~No.21「老いて尚 夢は捨てまじ 春著選る」、N0.22「水通る かそけき音す 枯れ葎」
♪ 榊原邦恭/ビートルズナンバーのクラシック作曲家風即興演奏
♪ マラン・マレ/5つの古いフランス舞曲~第1曲
♪ プーランク/15の即興曲~第15曲ハ短調「エディット・ピアフを讃えて」
♪ ブラームス/6つの小品Op.118~第2曲イ長調
♪ 高島 豊/“Luce nella Foresta” ~ヴァイオリンとピアノのための~
♪ 高島 豊/金子みすゞの詩による歌曲~「積もった雪」
♪ サン=サーンス/白鳥
♪ さだまさし/追伸
♪ 村井邦彦/虹と雪のバラード
♪ ♪ ♪
賛助出演者によるゲスト演奏(ハーフサイズコンサート)
♪ モーツァルト/歌劇「羊飼いの王様」K208~アミンタのアリア「あの人を愛そう、生涯かけて」
♪ ラヴェル/水の戯れ
♪ ドビュッシー/喜びの島
♪ 平井康三郎/うぬぼれ鏡
♪ レスピーギ/霧
♪ レスピーギ/舞踏への誘い
♪ クライスラー/美しきロスマリン
♪ クライスラー/中国の太鼓
♪ ジンバリスト/リムスキー=コルサコフの「金鶏」の主題による幻想曲
♪ 榊原邦恭/移り気なセバスチャン
♪ エルガー/愛の挨拶
♪ 高島 豊/金子みすゞの詩による歌曲~「金魚のお墓」~リードオルガンと女声のための~
♪ ヴィラ=ロボス/12のエチュード~第2番
♪ ブローウェル/11月のある日
♪ フランツ・シュトラウス/ノクターン
♪ リヒャルト・シュトラウス/アルプホルン
♪ モーツァルト/ピアノとクラリネットとヴィオラのための三重奏曲 変ホ長調K487~第1楽章
♪ プーランク/メランコリー
♪ ドップラー/アメリカの主題による小二重奏曲


「金魚のお墓」演奏風景(撮影:山吹泰男)

小さな会場でのハイレベルの演奏会を手作りで企画し続け、演奏者と聴衆とを近づける貢献もしてきた音楽ネットワーク「えん」の第1回演奏会は1992年2月29日(土)だったとのこと。同じ日付と曜日の組み合わせが28年ぶりに巡ってきた記念に「えん」にゆかりのアーティストと聴衆との大々的なコラボ企画として、新型コロナウイルス騒ぎのなか無事行われ、聴衆兼出演者として参加する機会を頂いた。会場では写真家の山吹泰男さん撮影によるアーティスト達の写真展示が花を添えた。

アマチュアとして楽器や作曲をたしなむ「えん」と近しい聴衆による発表が中心のこのコンサートの大きな特徴は、アマチュアの発表に賛助のプロのアーティストが関わること。アマチュアアーティストにとってこのような機会は本当に貴重で、発表者は日頃に増して気合が入ったに違いない。こんな企画が実現するのは、日ごろからアーティストと聴衆の橋渡しに尽力する「えん」の主宰者である佐伯さんの長年の積み重ねあってのことだろう。

コンサートは短い休憩を挟んで5時間半に及んだ。参加する立場でもあった僕でもさすがに長いと感じることがあったが、出演者の楽しそうで生き生きとした演奏やエキサイティングな演奏に時間を忘れることも多々あった。ステキな演奏は沢山あったが、自分が参加した演目と、特に印象に残った5つについてのみ演奏順に感想を。

まず湯浅さんが尾上さんのピアノで歌ったクィルターの「音楽は優しい声が消えても」。湯浅さんの妖艶で色香を湛えた滑らかな声と歌いまわしにしびれ、それをエスコートする尾上さんのピアノの歌心にホレた。シャレたサロンにいる気分!

榊原さんの自作自演のピアノ作品も印象深い。「24の前奏曲」から披露した2曲はプロコフィエフが生きていたらこんな音楽を作ったのでは、と思うような新鮮な挑戦を感じ、ビートルズナンバーの即興演奏は3人の作曲家の特徴をピタリと捉え、楽しく見事にビートルズの歌を開花させた。
ゲストの3人によって演奏された榊原さんの「移り気なセバスチャン」にも引かれた。3人は生き生きと果敢に作品に挑み、シュニトケ張りの見事なノリと切れ味で聴覚を刺激し、魅了した。

佐伯さん(Pf)、新田さん(Cl)、加藤さん(Vla)によるモーツァルトの「ケーゲルシュタットトリオ」は、3人がお互いのパートを聴き合って作る丁寧なハーモニーが曲の良さを引き出していて、素直に「いい曲だな」思った。

マラソンコンサートの「取り」となった薮中さん(Fl)と尾上さん(Pf)に、ゲストの土岐さん(Vn)が加わったドップラーは「取り」にふさわしい感動ものだった。3人の間で「これでどうだ?」「そう来るか、じゃあこう行こう!」と云った駆け引きが高じ、テンションをグングンと上げて鮮やかでエキサイティングな演奏となった。プロの土岐さんが加わることで、藪中さんと尾上さんの気合いもハンパなく高まったこともあるのか、「うまく合わせよう」というレベルを遥かに超えたプロフェッショナルなパフォーマンスを聴かせた。藪中さんのフルートは他の曲目でも端正でかつ生き生きしていて終始聴きほれた。

僕は作曲とオルガンで参加。以前書いたヴァイオリンとピアノのための”Luce nella Foresta”を土岐さんと平尾さんに初演して頂いた。土岐さんのヴァイオリンは品と艶がある極上の音色と、繊細で滑らかな歌いまわしが心を掴み続けた。平尾さんの繊細で伸びやかで力強さもあるピアノとの共演が、音楽の流れを共有して一つのシーンを描いた。「もっとこう書けば・・・」という拙作への反省点も見えてきた。

みすゞの歌曲で最初に披露した「積もった雪」は、田村さんの透明でかつ温かみのある美しい声と平尾さんのピュアなピアノが、深々とした淋しさとこみ上げる「熱さ」を伝え、これまでのこの歌の演奏のなかでも最も心に沁みる一つとして記憶に残りそう。

リードオルガン伴奏の「金魚のお墓」は電子オルガンで代用することになっていたのだが、訳あって急きょ我が家にある昭和初期のリードオルガンを運ぶことになった。部屋でしか弾いたことがない古いオルガンがコンサート会場でどう聴こえるか不安だったが、控えめながら温かな音色が会場に広がり、田村さんのやはり温かく清澄な歌声と溶け合って、とても良い初演になった(と思う、、)。こんな素敵なアーティスト3人に拙作を演奏してもらえ、共演もできた幸せをかみしめた(このときの「金魚のお墓」の演奏に以下からアクセスできます)。

3人の賛助アーティストは、アマチュアの膨大な発表に協力してくれただけでなく、自分たちだけのミニコンサートも聴かせてくれた。土岐さんのヴァイオリンは、末端まで神経が行き届き血が通い、身体と楽器が一体となったように自由で能動的で美しく、田村さんの歌からは、温かく清らかで瑞々しい美声が身体にじわ~っと浸みてくるような一体感を味わった。平尾さんのピアノは曲の様式にぴったりした歌や語りを生き生きと聴かせた。ピアニストが鍵盤上で暴れまくる印象の「喜びの島」もいとも明るく楽し気に弾いた底力も凄い。

彼女たちはしかし、プロとは言え自分たちのミニコンサートとアマチュアとの共演とに力配分などする態度は全くなく、いつでも自分たちが出せる最良のパフォーマンスを聴かせてくれたことが何よりも素晴らしい。これほど長時間でボリュームのあるプログラムにとことん取り組み、終演後の交流会までお付き合い頂き更なる親交を持てたことに、感謝と共に敬意を表したい。今後の益々の活躍を心から楽しみにしている。

♪ブログ管理人の作曲♪
(YouTube)金子みすゞ作詞/高島豊作曲「金魚のお墓」(「えん」の演奏会より)
S:田村 茜/Org:高島 豊
「星去りぬ」~フルートとギターのための~(YouTubeより)
Fl:佐々木真/G:岩永善信


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