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森谷真理 ソプラノ・リサイタル

2022年06月28日 | pocknのコンサート感想録2022
6月22日(水)森谷真理(S)/河原 忠之(Pf)

紀尾井ホール

【曲目】
(クララ・シューマン)
♪ 6つの歌曲 Op.13

(ロベルト・シューマン)
♪ 歌曲集 『ミルテの花』 Op.25~
 「献呈」「くるみの木」「睡蓮の花」
♪ リーダークライス Op.39~
 「異郷にて」「間奏曲」「森の対話」
♪♪♪

(アルマ・マーラー)
♪ 静かに漂う初めての開花
♪ 私の夜をご存知ですか?
♪ 5つの歌曲~ 「恍惚」

(グスタフ・マーラー)
♪ リュッケルトによる5つの歌

昨年の「ルル」での驚異的とも云える素晴らしい歌唱をはじめとして、バロックオペラや、能舞台とコラボした現代作など、多方面に渡って好印象を与えてくれる森谷真理がドイツリートのリサイタルを行うということで、大きな期待を抱いて出かけた。

けれど、会場に入って残念な事実を知った。配られたプログラムに歌詞対訳が付いておらず、別売りもない。詩と音楽が密接に結びついている歌曲で、それを確かめながら聴くことができなければ、歌の魅力は半減してしまう。急いでスマホで歌詞を読んでおこうと思ったが、ホールの外でも4Gが入らず断念。プログラムに書かれた各曲の大意から歌詞を少しでも聴き取ってリサイタルに臨むしかない。

けれど、歌のドイツ語を聴き取ることは、知っている詩以外では殆ど不可能で消化不良。歌詞がわからなくても歌を楽しむことはできるが、作曲家が詩に何を感じ、それをいかに演奏で表現するかをリアルに体験できたときの感動には遠く及ばない。

そんななか、少しばかり詩を諳んじているいくつかの曲での感想を交えつつ、リサイタルの印象を記しておく。森谷の魅力は、何と云っても艶やかで輝きのある美しい声と、滑らかでダイナミックな表現力。細い線のなかにギュッと濃厚なエキスが詰まったような声は、聴き手を誘惑するほどの魅力を湛えている。ただ、そのドラマチックでアグレッシブな表現が、ドイツリートというよりオペラ的に聴こえた。

「献呈」での、「あなたは私の魂(Seele)」の”Seele”がとても直情的に発せられたり、「くるみの木」の最後のシラブルで歌われる「娘は微笑みながら眠りにつく」というくだりが、妙に生々しく妖しげに聴こえたり、かよわく妖しい「蓮の花」が、終盤で劇的に盛り上がり、「打ち震える(zittert)」という言葉で頂点に達したり… 「異郷にて」でも、感情の高まりをかなりのオーバーアクションで表現していた。

文学作品としてそれ自体で完成した詩を、ここまで独自色で大きな表現で歌うことに違和感を覚えた。リサイタルという大切な機会に、あえて歌詞を配らないことには何か特別な意図があったのだろうか、と考えるに、多くの人にとって未知の言語であるドイツ語を訳詩付きの文字で伝えるより、その詩に感情を乗せた音楽として表現した方が、詩の心をよりリアルに聴衆に伝えることができると考えたのかも知れない。けれど、それは詩本来の魅力を減じ、歌曲の魅力を伝えることは難しいように思う。

プログラミングは、シューマンとマーラー、それに両作曲家の妻に焦点を当て、クララだけでなくアルマの作曲も聴くことができたのは興味深い体験だった。クララの曲が、繊細で詩情に溢れていたのに対し、アルマの曲はどこかいびつで一本調子で、凡庸な印象を持った。

このリサイタルで最も感銘を受けたのは河原忠之のピアノ。デリケートな詩を朗読するような穏やかで上品な感性を湛え、滑らかに自然な呼吸で歌い、淡い色彩の変化を見事に表現していた。

ADACHIGAHARA (S:森谷真理)2022.2.25 観世能楽堂
東京二期会オペラ劇場「ルル」(ルル:森谷真理) 2022.8.31 新宿文化センター
バッハ・コレギウム・ジャパン:歌劇「ポッペアの戴冠」(ドゥルジッラ:森谷真理) 2017.11.23 東京オペラシティ
ペルゴレージ/歌劇「オリンピーアデ」(指揮&チェンバロ:河原忠之) 2015.10.6 紀尾井ホール

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