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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

仲道郁代 ピアノ・リサイタル

2007年11月11日 | pocknのコンサート感想録2007
11月11日(日)仲道郁代(Pf)
~デビュー20周年記念 第2弾~
サントリーホール
【曲目】
1. ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」
2.ラフマニノフ/コレルリの主題による変奏曲
3.バラキレフ/イスラメイ(東洋風幻想曲)
4.ショパン/夜想曲第13番、第14番 Op.48-1, Op.48-2
5.シューマン/ピアノ・ソナタ第3番

【アンコール】
1. ショパン/夜想曲第20番遺作「レント・コン・エスプレッシオーネ」
2. ショパン/別れの曲
3. エルガー/愛の挨拶Op.12

もともとずっと大ファンの仲道さんだが、今年はソロは3回目、アンサンブルやコンチェルトを含めると今日で5回目の演奏会と、郁代さん(郁代ちゃん改め)イヤーとなっている。時を同じくして、今年は仲道さんのデビュー20周年という記念の年。今日のリサイタルもその20周年記念コンサートツアーの最終日とのこと。益々(いつものことだが…)郁代さんのピアノに入れ込んでしまうようなリサイタルだった。

サントリーホールに置かれたヤマハのピアノは仲道さんが外で選んだものとのこと。そのピアノで最初に演奏されたのが、ベートーヴェンの大曲「ワルトシュタイン」。もう最初のハ長調の和音の連打から圧倒された。響きの立体感、奥行き、整ったフォルム… 冒頭部分だけで仲道さんの曲への深い読みと共感が伝わってくるよう。

そして、繰り広げられた演奏は「こんな演奏を聴きたかった!これぞワルトシュタインの真骨頂!」と目から鱗のような素晴らしさ。正確無比、がっちりと安定したフォルムの中での柔軟性、明快でしかも詩情豊かな声部の弾き分け・歌い分けは、その音色や質感に至るまで極められている。一音たりとも手を抜かない、まさに最高の芸術品。仲道さん自身によるプログラムノートを読めば、仲道さんがこの曲をいかに徹底的に研究し、それを自分のものにしているかがわかるが、まさしくそれを演奏で体現している。綿密な楽曲分析と最高の感性とテクニックが三つ巴になって実現できた名演だ。

プログラムに置かれたもう1つの大曲、シューマンのソナタも仲道さんの客観的な目を感じる極めて質の高い演奏だった。以前の仲道さんの演奏は、映画に例えるならばヒロイン的な存在だったのが、今回はヒロインでありながら監督も兼ねているよう。どんなに激高した場面でも常にそれを冷静な目で見つめるもう一人の自分がいる。それが、シューマンのかなり私情が反映された個人的な音楽が、もっと多くの人たちを引き込むような普遍性をもたらす。それを仲道さんならではの溢れるばかりの詩情の豊かさと、それぞれの線やハーモニーを的確に多彩で美しい音色で描き分けられる演奏は、これまでに増して「新化」でありまた「深化」だ。

アンコールも含めた他の小品(といってもラフマニノフやバラキレフだって立派な大曲だ)でも、とりわけ今回のリサイタルでは仲道さんのピアノが、普遍性と気高さを獲得していることを感じた。今までの路線と違う方向ではなく、いままでの素敵な演奏を更に深め、普遍化してきていることに、仲道さんの一貫性と常に進歩して行く姿を見て胸がいっぱいになった。

アンコールの定番「愛の挨拶」を弾き終えて、嬉しそうに客席に両手を振る表情がかわいくて素敵!奥さんに「いくら演奏がいいって言っても、仲道さんがもしコンナ顔だったら、そんなに夢中にならないでしょ?」と言われた。やっぱり見た目も大切だよネ

今日はサイン会はなかったようだが、入口でタダで配られたパンフレットに挟まっていたポストカードのサイン、あれ、家でじっくり見ても自筆のように見えるんですけど… 今日のために郁代さん、2000枚もサインしたんだろうか!2000枚分の1枚に2000枚分の真心を感じてしまいます

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2 コメント

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見た目 (一静庵)
2007-11-13 02:43:34
目をつぶって聴いていたら、がっしりとした男性が弾いている感じがしました
返信する
Re: 見た目 (pockn)
2007-11-14 09:08:50
一静庵さんもいらっしゃってたのですね。仲道さんはぼくの感性と最もフィットするピアニストであり音楽家という感じです。
返信する

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