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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

今井信子(Vla)&伊藤恵(Pf)

2023年02月14日 | pocknのコンサート感想録2023
2月12日(日)今井信子(Vla)/伊藤恵(Pf)
プラチナ・シリーズ第5回
東京文化会館小ホール

【曲目】
1.シューマン/「おとぎの絵本」 Op.113
2.シューベルト/アルペジオーネ・ソナタ D821
3.ドヴォルザーク/民謡風の歌曲 Op.73 B146
4.武満徹/鳥が道に降りてきた(1994)
5.レベッカ・クラーク/ヴィオラとピアノのためのソナタ(1919)
【アンコール】
♪ フォーレ/夢のあとに

今井信子も伊藤恵も、それぞれ僕のお気に入りのアーティストで聴く機会は多いが、2人の共演に触れるのは初めて。そのデュオは、最高の組み合わせと思える素敵なコンサートとなった。何より心を捉えたのは、どの曲でも溢れる詩情が音楽の隅々まで丁寧に行き届いていたこと。それはとても親密で人肌のように温かく、心を優しくくすぐる。今井さんは片道の一弓のなかに実に多彩なニュアンスを表現し、香りや陰影を豊かに作り出す。様々な感情を持つ生身の人の声のように気持ちの揺らぎがヴィオラの声として発せられる。

恵さんのピアノからは、慈しむような歌が優しく紡ぎ出され、あったかいオーラで包み込む。そのうえ、ちょっとしたアゴーギクが心憎いスパイスとなって要所をキラリと光らせる。「アルペジョーネ」での一見単調な繰り返しや同音連打にも繊細な表情が与えられ、日に影にヴィオラに寄り添い、ヴィオラを引き立てていた。こうした親密なデュオが、僕が座っていた最後列まで、生き生きとした息遣いで無理なく届けられた。

シューマンの「おとぎの絵本」やドヴォルザークの歌曲の、とりわけゆったりと歌う楽曲ではそんな詩情が郷愁とともに切ないほど伝わってきたし、シューベルトやクラークの大規模なソナタでもベースで常に流れるのは穏やかな詩情で、瞬間湯沸かし器的なアグレッシブな熱さではなく、切々と訴え続けることで内部から徐々に熱せられ、聴き手の心を温めていく。

クラークのソナタの第2楽章(ヴィヴァーチェ)などでは、目まぐるしい音の動きからおしゃれな戯れも感じられたし、今井のために書かれたという武満作品でも透徹とした空気のなかに温かな人の吐息が感じられた。

人情派とも云える恵さんという共演者を得たことで、今井さんのヴィオラに一層の詩情が加わり、今井さんの人の声が打ち震えるようなヴィオラが恵さんのハートをまた刺激して、お互いの波長が共鳴しあい、アンコールの「夢のあとに」に至るまで温かくて懐が深くて生きた音楽が届けられた。

ヴィオラスペース2018(Vla:今井信子他) 2018.6.1 石橋メモリアルホール
ヴィオラスペース2017(Vla:今井信子他) 2018.6.1 石橋メモリアルホール
ヴィオラスペース2015(Vla:今井信子他) 2018.6.1 石橋メモリアルホール
伊藤恵 ピアノ・リサイタル 2022.4.29 紀尾井ホール
伊藤恵 ピアノ・リサイタル 2018.4.29 紀尾井ホール
伊藤恵 ピアノ・リサイタル 2017.3.24 ヤマハホール

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