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N響 2020年1月B定期(ファビオ・ルイージ 指揮)

2020年01月25日 | pocknのコンサート感想録2020
1月23日(木)ファビオ・ルイージ 指揮 NHK交響楽団
《2020年1月Bプロ》 サントリーホール


【曲目】
1.ウェーバー/歌劇「オイリアンテ」序曲
2.R.シュトラウス/4つの最後の歌
 S:クリスティーネ・オポライス
3.R.シュトラウス/交響詩「英雄の生涯」 Op.40

B定期のコンマス席に久しぶりにゲストコンマスのキュッヒルが座った。指揮はブフビンダーとの共演でのあの「事件」以来、B定期には6年ぶりの登場となるファビオ・ルイージ。

ルイージ/N響は、最初のウェーバーの序曲冒頭の、2オクターブを弦が一気に駆け上がるシーンから聴衆を魅了した。「脂の乗った」という表現が相応しい充実した響きにはエネルギーがみなぎり、各パートは色と艶が映えた歌に溢れ、トゥッティで奏でられる響きは重厚にして絢爛でありながら機敏な運動能力は失われず、大型肉食獣が獲物に飛びつくような力強いパフォーマンスが展開した。

続くはシュトラウス最晩年の「白鳥の歌」として名高い歌曲集。独唱は今をときめく名ソプラノのオポライス、と云っても僕は初耳だが世界のオペラハウスで大活躍らしい。まず耳を引いたのはここでもオーケストラ。さっきのウェーバーの「動」に対してこちらは真逆の音楽だが、オケの充実度という点では更に高みへ進んだ。伸びやかで透明な響きは香り高く哀惜に充ち、深い詩情を湛えている。シュトラウスの卓越したオーケストレーションあってこそではあるが、各パートがブレンドされた響きの何と豊潤な匂やかさ。まさにヘッセやアイヒェンドルフの惜別の詩にシュトラウスが自らを重ねた音楽に相応しい世界。

オポライスの歌は、このオケの響きの一部と化したように溶け込み、そのなかで確かな光を放っていた。しなやかさと伸びやかさ、そして妖艶とも云える魅惑的な美声で、幻想のヴェールに包まれた黄昏や闇を描いた。ここでもう1人の主役は第3曲でソロを担うコンマス。キュッヒルさんのソロはオポライスの歌と同様に甘美で妖艶で不思議な生命力を持っていた。オケ、ソプラノとヴァイオリンが溶け合い、彼岸の境地にいざなってくれた極上の演奏に酔いしれた。

休憩後は同じくシュトラウスの「英雄の生涯」。ここでルイージ/N響は、前半の2作品で聴かせた「動」と「静」両方の魅力を存分に聴かせた。最初に感じた「脂の乗った」演奏が益々幅を利かせ、濃厚なシュトラウスサウンドを響かせた。ここでもキュッヒルのヴァイオリンが魅了した。今年古希を迎えるが、枯れた表現とは無縁のなまめかしいほどの熱気がムンムン漂う「英雄の伴侶」。ヴァイオリンコンチェルトを聴いているような孤高の存在感があった。

「英雄の生涯」はシュトラウスのオーケストラ作品のなかでもとりわけ人気が高いし、名匠が名門オケで演奏する機会も多い。きっと名曲なんだろうが、僕はやっぱりこの曲を心底からは好きになれない。それもあって、演奏には何の不満もないが自分の中ではあまり感動しなかった。ただ最後の場面を聴いていた時、プライベートな小さな空間のなかで演奏者と僕だけがそこに居るような不思議な親密感が押し寄せてきたのは不思議な体験だった。

大喝采とブラボーの歓声のなか、お決まりの指揮者への花束贈呈があったあと、それよりはずっと小ぶりだけれど手作り感のある素敵な花束がヴィオラの団員に贈られ、オケから大きな拍手が送られた。今日が最後の出番だったようで心温まるシーン。僕の席からは顔が見えなかったが、後から小野富士さんだったと知った。今夜が小野さんにとって最後のステージになることは会場のどこにもお知らせはなかった。「フィルハーモニー」で知らせてくれればいいのに… お堅い記事ばかりで団員のニュースが全く載らない「フィルハーモニー」はつまらない。

N響公演の感想タイトルリスト(2017~)
♪ブログ管理人の作曲♪
金子みすゞ作詞「積もった雪」
MS:小泉詠子/Pf:田中梢
金子みすゞ作詞「私と小鳥と鈴と」
S:薗田真木子/Pf:梅田朋子
「子守歌」~チェロとピアノのための~
Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
合唱曲「野ばら」
中村雅夫指揮 ベーレンコール
金子みすゞ作詞「さびしいとき」
金子みすゞ作詞「鯨法会」
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美

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