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吉野直子の室内楽 ~ハープで織り成す近現代フランス音楽の世界~

2018年03月11日 | pocknのコンサート感想録2018
3月9日(金)吉野直子の室内楽
 ~ハープで織り成す近現代フランス音楽の世界~
ヤマハホール

【曲目】
♪ ドビュッシー(H.ルニエ 編)/アラベスク第1番
♪ フォーレ/即興曲変ニ長調 Op.86
♪ ダンディ/組曲 Op.91 より
♪ メサジェ/コンクールのための独奏曲
♪ フランセ/五重奏曲 第2番
♪ ♪ ♪

♪ ロパルツ/前奏曲、海とシャンソン
♪ ピエルネ/カンツォネッタ Op.19
♪ ピエルネ/自由な変奏と終曲 Op.51
♪ ラヴェル/ハバネラ形式の小品
♪ ラヴェル/序奏とアレグロ
【アンコール】
♪ラヴェル/序奏とアレグロ ~ アレグロ後半

【演奏】
Harp:吉野直子/Vn:成田達輝、小川響子/Vla:川本嘉子/Vc:伊東 裕/Fl:佐久間由美子/Cl:吉田 誠


吉野直子は、折に触れて僕が最も長く聴き続けているハーピスト。卓越した技術と表現力、抜群の安定感を持ち、繊細かつ柔軟、常に完成度の高い演奏を聴かせてくれ、彼女の出演する演奏会で裏切られたことは一度もない。とは言っても、吉野の演奏を聴くのは5年以上振りになってしまった。しかもその時に聴いたのも久しぶりだったようで… 今夜の、変わることのない充実の極みの演奏を聴き、このところご無沙汰してしまっていたことが、とても損した気分にさえなった素敵なコンサートだった。

「吉野直子の室内楽」と銘打った今夜のコンサートは、曲ごとに様々に編成を変えつつ、6人もの名手を携え、殆ど聴いたことがない作品も含めて、センスと色彩感に彩られたフランスの作品の数々を堪能した。最初の2曲は吉野のハープ単独。ドビュッシーにしろフォーレにしろ、繊細で柔らかな表情と、全体をしなやかに縁取る構成感が見事に手を携え、音楽がどこへ向かい、どんな物語を聴かせてくれるのかがはっきりとイメージできる演奏だった。

ソロの演奏に魅せられたあとはアンサンブル。初めて聴く曲が多かったが、「フランス風」という言葉が相応しい洒落た作品が並び、詩情に溢れ、ユーモアにも富んだ演奏を楽しんだ。四重奏や五重奏では、吉野のハープはあくまでアンサンブルの1パートで、主役は他の旋律楽器が担うことが多いが、そんな中でも吉野のハープはしっかりと存在感を示していた。それは、パフォーマンス的に目立つということではなく、大抵は背景としての存在感。主役たちを優しく見守り、包み込み、温かいおっかさんのような包容力を感じさせた。吉野のハープがそんな役割を演じることに気づいたのは今夜が初めてで、その意味で吉野さんはしばらく聴かない間に、スリムな体形は変わることなく、一回り大きくなった気がした。

そのアンサンブルでは、名手たちのパフォーマンスも楽しめた。果敢に、しかし楽しそうにアンサンブルをリードした成田さんのヴァイオリンや、安定感のある味わいを聴かせた川本さんのヴィオラは特に耳を引いたし、佐久間さんの端正なフルートはアンサンブルに透明感を与えていた。吉野とのデュオが3つあった吉田さんのクラリネットは、濃厚な味わいと熱いテンションで、音楽が飛び出す絵本のように立体的に仕立てられた。

そんな名手たちが勢ぞろいした最後のラヴェルの「序奏とアレグロ」では、プレイヤー達の名パフォーマンスに作品自体の素晴らしさも手伝い、テンションの高い、スリリングで華々しく能動的な、ライブならではの一期一会の演奏となった。ここでは吉野がまたイニシアチブを取り、雅やかで華やかなハープが一層映え、音楽の悦びを味わい尽くすことが出来た。吉野さんのハープ、また近いうちに聴きに行きたい。

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