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小菅 優 “ソナタ・シリーズ” Vol.2「夢・幻想」

2023年11月17日 | pocknのコンサート感想録2023
11月14日(火)小菅 優(Pf) 
~ソナタ・シリーズVol.2「夢・幻想」~
東京オペラシティコンサートホールタケミツメモリアル

【曲目】
1.メンデルスゾーン/幻想曲嬰ヘ短調 Op.28「スコットランド・ソナタ」
2.ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調 Op.27-2「月光」
3.シューベルト/ピアノ・ソナタ第18番ト長調 D894「幻想」
【アンコール】
1.バッハ/ヘス編/主よ、人の望みの喜びよ
2.シューマン/ 子どもの情景~詩人は語る

小菅優の新たなリサイタルシリーズ(ソナタ・シリーズ)の2回目は、「夢・幻想」と題して3人の作曲家による3つのソナタが並んだ。このテーマに相応しく、様々な思いが錯綜し、さ迷いながらも何かを求め、掴み取ろうとしている迷える魂が表現されていた。

最初はメンデルスゾーンの珍しい作品。スコットランド交響曲を思わせるテーマを持つ第1楽章は、あちこちに姿を変えて登場するそのテーマの現れ方がファンタジックで独特の存在感を感じた。快活な第2楽章を経て第3楽章は、熱いパッションが途切れることなく炸裂して圧巻だった。小菅の溢れる自信が凝縮され、昇華されたような演奏。聴く機会の少ない「スコットランド・ソナタ」だが、音楽の魅力が存分に引き出されていた。

続いて「月光ソナタ」。小菅の演奏からは、得体の知れぬ不安や恐怖が伝わってきた。第1楽章は闇の中をさ迷うよう。3連符のなかに現れる付点のモチーフも闇を照らす光とはならず、闇の中に埋もれてしまう。束の間の安らぎがあるはずの第2楽章でも闇が明けることはなく、第3楽章は闇の中で魔物に追い立てられ、逃げ惑う恐怖心が伝わってきた。

後半はシューベルトの大作ソナタ。小菅はここでは、行き着く場を見出せずにさ迷っている魂と向き合い、その孤独と悲哀を深い共感とともにクリアでありながら温かなタッチで描いて行った。そして終楽章での心浮き立つ表情は、迷える魂が救済された穏やかな喜びが晴れやかに伝わって来た。常に作品全体を俯瞰し、この作品の懐の深さを表現し、貫禄すら感じる頼もしさがあった。

これまでのリサイタルのプログラムノートでは、それぞれの演奏曲目についての小菅さんの鋭く作品の本質を突いたコメントが随所で紹介されていて読むのが楽しみだったのだが、今回の解説にはコメントの引用がわずかしかなかったのが残念だった。

今夜のリサイタル、どれも良かったが最も感銘を受けたのは最初のメンデルスゾーンだった。「シューベルトのソナタは大きなゴールの一つ」という小菅、ベートーヴェンのソナタ全曲シリーズのときに感じたような小菅でしか聴けない唯一無二のシューベルトの演奏を実現できるか、今後に期待したい。

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