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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

ハーゲン・クァルテット ハーゲン プロジェクト第1夜

2023年11月05日 | pocknのコンサート感想録2023
10月31日(火)ハーゲン・クァルテット
Vn:ルーカス・ハーゲン、ライナー・シュミット/Vla:ヴェロニカ・ハーゲン/Vc:クレメンス・ハーゲン~
~ハーゲン プロジェクト 2023第1夜~
トッパンホール

【曲目】
1.ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第11番ヘ短調 Op.95「セリオーソ」
2.モーツァルト/弦楽四重奏曲第14番ト長調 K387
3.ラヴェル/弦楽四重奏曲ヘ長調
【アンコール】
モーツァルト/弦楽四重奏曲第21番 ニ長調 K.575「プロシャ王第1番」~第4楽章

トッパンホールが長年継続して主催しているハーゲン・クァルテットの演奏会シリーズが4年ぶりに戻ってきた。3日間に渡る「ハーゲンプロジェクト」が開催され、初日の公演を聴いた。今回もサプライズの連続で、ライブの醍醐味を満喫させてくれ、ホンモノの音楽を届けてくれた。

最初はベートーヴェンの「セリオーソ」。4人が食らいつくように飛びかかって突進した冒頭のフレーズと、一転して天を浮遊する対比の見事さ。これだけでベートーヴェンの世界に一気に引き込まれた。ミクロの世界と大宇宙の間を自由に飛び交うようなダイナミズムがハーゲンQの大きな持ち味で、全曲に渡って一緒に大冒険をしている気分になる。

ハーゲンQの演奏にはスキというものが全くない。ハッとする表現、オオッ!と声を上げたくなるアプローチ、重力に逆らうような挑戦などのサプライズに溢れ、一瞬でも聴き手の気を逸らさせることがない。メンバーはアンサンブルに和やかな調和を求めるのとは真逆のように各々が自分を晒し、アピールし、武勇伝を語っているかと思えば、4人のベクトルが突如一点に集中して、pppp…と、”p”が何個重なっているかと思うほどの極限まで息を潜めた弱音で虎視眈々と獲物を狙う緊張感を生み出し、またそれが突如エネルギーを爆発させ、尋常ならざる迫力で一気果敢に攻めて来る。

こんな風に自然な流れに反したアゴーギクやディナミーク、フレージングを散りばめて音楽を揺さぶり続けるのだが、それがこれみよがしで奇を衒った表現には聴こえず、どれもが音楽に命を与え、息づかせる方向に働いているところが、このカルテットの凄いところだ。何年か前に「普通の演奏」とは異なるアプローチのベートーヴェンを別のカルテットで聴いて、不自然に感じたのとは大違いだ。

こうしたハーゲンQの姿勢は、より自然な表現が求められるモーツァルトでも変わることはない。だからと云って、ハーゲンのモーツァルトがいびつだったり、わざとらしかったりすることは決してなく、より生き生きと躍動し、第3楽章などは一筋縄では行かない人間の奥深さがより切々と伝わってきた。これは後半のラヴェルでも同じで、フランス的な香りやお洒落なセンスを湛えた演奏とは相容れない、手に汗握る真剣勝負のバトルで火花を散らす演奏が繰り広げられた。

ハーゲンQの更に凄いところは、こうした演奏がいつでも一期一会のものであるということ。常に新しい風を吹かせ、新たな発見と感動をもたらしてくれる。これまで何度も演奏を重ねて来た曲であっても、初めて取り上げる作品と同じ姿勢で音楽に対峙し、徹底的に作品を突き詰めているからこそ実現するのだろう。なので、ハーゲン・クァルテットのライブからはずっと目が離せないのだ。

ハーゲン・クァルテット ハイドン&バルトークチクルスⅢ(2019.10.3 トッパンホール)
ハーゲン・クァルテット(バッハ、ショスタコ、ベートーヴェン/2016.9.14 東京オペラシティ)
ハーゲン・クァルテット モーツァルト・ツィクルス ハイドン セット II(2015.10.2 トッパンホール)

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