ペコリーノのBL読書日記

BLスキーのペコリーノのBL読書日記。素人の感想&個人的な覚書です。100%自分向けのためネタバレ全開です。

「愛の奴隷」水原とほる・著 イラスト・水名瀬雅良 海王社ガッシュ文庫

2009-03-20 22:52:30 | 水原とほる
「愛の奴隷」水原とほる・著 イラスト・水名瀬雅良 海王社ガッシュ文庫
 2009年3月10日初版 294ページ 600円+税

 「愛の奴隷」という古めかしいタイトル、攻めがヤクザ、受けが障害者・・・という設定で以前の「水原節」を期待したのですが・・・・・・。

 ストーリーは・・・
 宏樹は久坂彰信が好きだ。もういつからかは分からない。彰信は久坂組四代目組長の長男だが、家を継ぐ気はないと言い普通の会社員をしている。無口で無愛想だが、足の不自由な宏樹が通うリハビリセンターの送迎もずっとしてくれている。そして週に数回、宏樹を抱く。友人でもないましてや恋人とも言えない関係を続けて十年以上。彰信の気持ちは見えないけれどこのまま続けばいいと思っていた。しかしある日、予期せぬ久坂組の跡目抗争に巻き込まれて… というもの。

 受けはポリオの後遺症で右足をひきずっているという設定です。足を引きずるだけではなく、右足が萎縮して、左足の形とはかなり違っています。
 そのあたりの表現が同じ水原先生の「アシンメトリー」を思い出しました。
 
 ちなみにポリオは「日本では、1980年に自然感染によるポリオが根絶され、現在ではポリオワクチンからの2次感染でしか発症していない」(wikipediaより)そうです。宏樹は26歳という設定ですから、1983年くらいに生まれたという設定なのでしょう。そうなると、ワクチンからの二次感染ということになるのでしょうか。

 さて、イラストの水名瀬先生のあとがきで、2人のイラストに、「意外にラブラブな2人が描けて楽しかったです」とコメントがありました。
 攻めと受け、最初からラブラブなんですよね。ただし、お互い(特に受けの宏樹)、自分たちがラブラブなことに気づいていないという設定です。
 宏樹は彰信が自分を抱くのは女の変わりだと思っていて、彰信に本命ができたらすぐに身を引こうと考えているのですが・・・。だけど、高校時代から少なくとも5年以上、身体の関係があり、月に2度、宏樹がリハビリセンターに行くときには、彰信が運転をして付き添い、それ以外にもしょっちゅう家にきてご飯を食べて行ってエッチして・・・という関係でどうして「自分と彰信はつきあっていない」と考えることができるのでしょう?とっても不思議だし、いくらなんでも無理がありすぎるだろう・・・と、どっちらけてしまいました。
 
 それはさておき、タイトルやら設定から、今度こそ以前の水原先生っぽい作品を期待したのですが・・・違いました。最近の水原作品と同じく特徴のない作品。
 何度も同じことを書いていますが、水原先生は説明パートというか、シーンとシーンのつなぎ目が苦手なように思います。
 例えば、
1)攻めと受けが出会い
   ↓
2)攻めと受けが恋に落ち
   ↓
3)エッチをする
   ↓
4)仲違いをする
   ↓
5)ハッピーエンド
 という話があったとして、小説の場合はこの箇条書きと違って、↓に相当する部分も文章で表現せねばならないわけです。たいていの場合、攻めや受けのキャラクターがどんな奴だとか、職業はなんだ、家族構成はどうだ、脇役はこんな奴がいるETC。
 水原先生の書く話は、この↓部分に相当する箇所がもう退屈で退屈で・・・。
 いかにも説明調の文章を延々と連ねるだけで・・・。じゃぁ、番号が振ってあるパートに相当する部分が面白いかというとそうでもないんですよね。結果として。
 
 昔の水原作品には妙なエネルギーみたいなものがあって、技術が足りない箇所をカバーするだけの勢いがあったんですけど、今はもう・・・・・・。
 「唐梅のつばら」なんか、BLではあまり見ないイラストレーターさんを連れてきて、装丁も凝ってて、書店の棚に置いてあるだけでも目を引く本でした。
 担当の編集者の方はあの作品世界を生かすイラストレーターさんは誰だろうか、装丁はどうしようか・・・と、一生懸命考えたんだろうなぁと思います。
 最近は水原さんは、草間さかえさん、山田ユギさん、ヤマシタトモコさん、この作品の水名瀬先生もそうですけど、人気のイラストレーターさんと組ませてもらってますけど、小説自体はどんどん劣化していっていやしませんか?
  このところの水原作品は、ストーリーは似たり寄ったり、キャラクターの配置(受けの身近で受けに恋するいい人とか・・・)も同じ、書いていて「同じような話を書いている」と自覚がないのでしょうか?

 前のように受けが陵辱される作品がいいとか、ハードなヤクザモノがいいというわけではなく、水原先生ならではのエネルギーを感じる作品が読みたいのです。

 今回、前の作品のような作品を読めるかしら・・・とちょっと期待していたのですが、残念ながら期待は裏切られてしまいました。
 これまでダラダラと水原作品を買ってきましたが、今回で本当に終わりにしようと思います。
 まぁ、まだ買い置きの本があるので、しばらく読み続けることになると思いますが・・・。
 


最新の画像もっと見る