【2009年10月2日(金)】10月2日付の日本経済新聞朝刊9面トップに「セブン&アイ、再構築急ぐ」の記事。「3~8月、純利益35%減」「スーパー・百貨店不振」「コンビニ事業にも陰り」とサブ見出し。昨日に続いてセブン&アイの報道が続く。少し前まではイオンが小売業不振の象徴のように同じような論調でよく報じられていた。その前は百貨店業界だった。優等生のセブン-イレブンに支えられたセブン&アイの健闘と総合スーパー不振の影響を受けたイオンの厳しい状況がよく比較された。今回の記事ではセブン&アイの不振が大きく報じられているが、それでもセブン&アイの2009年2月期の営業利益はイオンの2倍以上の水準である。そのセブン&アイでさえ業績が悪化していることを、流通業界の不振ぶりを象徴することとして大きな扱いになったと思われる。トップ企業の業績悪化だから当然の扱いと言えるが、こうした業績悪化の報道はトップ企業に限らず、今後も後を絶たないだろう。消費構造が大きく変化しているからである。
消費市場の容量以上に商品を詰め込めるだけ詰め込んで、パンク寸前になって、詰め込んだ商品が在庫として大量に残ってしまい、他を押しのけて詰め込むために敷いてきた生産体制は市場の動きにすぐには対応できず、市場の変化、市場の縮小に対応すべく、いかにソフトランディングするかが課題となっているものの、それもできずにハードランディングをして雇用問題を引き起こしているのが現状である。
同じく10月2日付の日本経済新聞朝刊31面に「百貨店、早くもおせち商戦」という記事が載っている。従来のあるべき時期の商戦が早く始まったので、そのこと自体にニュース性があると言えるが、夏が終わったところなのに正月に関連した話題が登場することに、小売業の置かれた厳しい状況が伝わってくる。四季の美しい日本の小売業の売場から季節に沿った季節感がなくなるほど悲しいことはない。やむにやまれぬハードランディング的な動きと言える。
今の消費市場は限界にまで膨らんだ風船が縮まろうとしているのと同じ状況である。あちこちにしわができるのは当然である。1つのしわを直しても、そのしわ寄せが他のしわを深くしてしまうことも珍しくない。商業の新しい秩序がグローバルの視点で求められる時代に入ってきたと感じている。海外進出にしても、進出先のことを差し置いて進出企業のことを優先して考えることができなくなってくると思われる。フェアトレードの問題などはその矛盾から出てきたものである。自国の市場が飽和になったから海外の市場に活路を求めるという考え方が成り立たなくなってくるだろう。発達した国や企業のノウハウを発展途上の国や企業の発展に貢献させることは必要だが、発展途上の国や企業が自分たちで成長できる力を蓄えてきた時には徐々に撤退していくことを考えなければならない。いわば、撤退を前提にした進出が求められる。経済社会は競争社会であり拡大基調の成長社会だから、撤退ありきの進出など考えられないことだが、子どもが成長するまで親が手を貸し子どもが成長すれば速やかに子離れしていくような関係を経済社会の枠組みの中に組み込ませることも求められるのではないかと考えられる。これは1企業の努力でできることではなく、国際的な枠組みの中で議論しなければ進まない問題である。
話を戻して、わが国の消費市場の現状を見ることにする。下の数値は商業統計調査の年に合わせて人口推計と家計調査のデータを重ね合わせたものである。
商業統計では2002年から2007年までに事業所数が減少し年間商品販売額も減少しているが、売場面積は拡大している。売上が落ちているのに売場面積は大きくなっているのである。逆に、売場を大きくしなければ売上を確保するのが難しくなっているのかもしれない。一方、人口は増えている。そこで大雑把な数値しか出てこないが、商業統計の数値を総人口で割り人口1人当たりの数値を出してみた。事業所数が減り、販売額も減っているが、売場面積は増えている。参考までに家計調査の変化も見た。2007年の世帯人員が2002年より減っているので1人当たりの消費支出は増えているが、1世帯当たりの消費支出は減少している。節約指向、低価格商品指向が進んでいることもあるが、収入が低迷しているので、金額ベースの拡大は限界にきているのではないだろうか。これからはエコ意識の高まりが消費に影響してくる。エコ指向で金額だけを見た低価格商品指向は和らぐかもしれないが、購入する数量や内容量の節約意識も強まってくるものと予想され、数量的節約指向が和らいだ低価格商品指向を上回ることもあり得る。
消費経済の生々しい現実を反映する小売業にかかわる新聞記事では、バブリーな要素も加わって数量的な拡大がこれ以上望めないであろう消費市場を軸に読み進むことによって、小売業が直面する課題が見えてくる。(東)
経済産業省・商業統計①
《2007年》 《2002年》
事業所数 1,137,859 1,300,057
年間商品販売額(百万円) 134,705,448 135,109,295
売場面積(㎡) 149,664,906 140,619,288
総務省・人口推計②
《2007年(10/1)》 《2002年(10/1)》
総人口(千人) 127,771 127,435
①、②より人口1人当たりの数値を算出
《2007年》 《2002年》
事業所数 0.0089 0.0102
年間商品販売額(万円) 105.4272 106.0221
月間商品販売額(万円) 8.7856 8.8352
売場面積(㎡) 1.171 1.103
総務省・家計調査 1か月間の支出 総世帯
《2007年》 《2002年》
世帯人員(人) 2.54 2.63
消費支出(円) 261,526 269,835
1人当たり消費支出(円) 102,963 102,599
消費市場の容量以上に商品を詰め込めるだけ詰め込んで、パンク寸前になって、詰め込んだ商品が在庫として大量に残ってしまい、他を押しのけて詰め込むために敷いてきた生産体制は市場の動きにすぐには対応できず、市場の変化、市場の縮小に対応すべく、いかにソフトランディングするかが課題となっているものの、それもできずにハードランディングをして雇用問題を引き起こしているのが現状である。
同じく10月2日付の日本経済新聞朝刊31面に「百貨店、早くもおせち商戦」という記事が載っている。従来のあるべき時期の商戦が早く始まったので、そのこと自体にニュース性があると言えるが、夏が終わったところなのに正月に関連した話題が登場することに、小売業の置かれた厳しい状況が伝わってくる。四季の美しい日本の小売業の売場から季節に沿った季節感がなくなるほど悲しいことはない。やむにやまれぬハードランディング的な動きと言える。
今の消費市場は限界にまで膨らんだ風船が縮まろうとしているのと同じ状況である。あちこちにしわができるのは当然である。1つのしわを直しても、そのしわ寄せが他のしわを深くしてしまうことも珍しくない。商業の新しい秩序がグローバルの視点で求められる時代に入ってきたと感じている。海外進出にしても、進出先のことを差し置いて進出企業のことを優先して考えることができなくなってくると思われる。フェアトレードの問題などはその矛盾から出てきたものである。自国の市場が飽和になったから海外の市場に活路を求めるという考え方が成り立たなくなってくるだろう。発達した国や企業のノウハウを発展途上の国や企業の発展に貢献させることは必要だが、発展途上の国や企業が自分たちで成長できる力を蓄えてきた時には徐々に撤退していくことを考えなければならない。いわば、撤退を前提にした進出が求められる。経済社会は競争社会であり拡大基調の成長社会だから、撤退ありきの進出など考えられないことだが、子どもが成長するまで親が手を貸し子どもが成長すれば速やかに子離れしていくような関係を経済社会の枠組みの中に組み込ませることも求められるのではないかと考えられる。これは1企業の努力でできることではなく、国際的な枠組みの中で議論しなければ進まない問題である。
話を戻して、わが国の消費市場の現状を見ることにする。下の数値は商業統計調査の年に合わせて人口推計と家計調査のデータを重ね合わせたものである。
商業統計では2002年から2007年までに事業所数が減少し年間商品販売額も減少しているが、売場面積は拡大している。売上が落ちているのに売場面積は大きくなっているのである。逆に、売場を大きくしなければ売上を確保するのが難しくなっているのかもしれない。一方、人口は増えている。そこで大雑把な数値しか出てこないが、商業統計の数値を総人口で割り人口1人当たりの数値を出してみた。事業所数が減り、販売額も減っているが、売場面積は増えている。参考までに家計調査の変化も見た。2007年の世帯人員が2002年より減っているので1人当たりの消費支出は増えているが、1世帯当たりの消費支出は減少している。節約指向、低価格商品指向が進んでいることもあるが、収入が低迷しているので、金額ベースの拡大は限界にきているのではないだろうか。これからはエコ意識の高まりが消費に影響してくる。エコ指向で金額だけを見た低価格商品指向は和らぐかもしれないが、購入する数量や内容量の節約意識も強まってくるものと予想され、数量的節約指向が和らいだ低価格商品指向を上回ることもあり得る。
消費経済の生々しい現実を反映する小売業にかかわる新聞記事では、バブリーな要素も加わって数量的な拡大がこれ以上望めないであろう消費市場を軸に読み進むことによって、小売業が直面する課題が見えてくる。(東)
経済産業省・商業統計①
《2007年》 《2002年》
事業所数 1,137,859 1,300,057
年間商品販売額(百万円) 134,705,448 135,109,295
売場面積(㎡) 149,664,906 140,619,288
総務省・人口推計②
《2007年(10/1)》 《2002年(10/1)》
総人口(千人) 127,771 127,435
①、②より人口1人当たりの数値を算出
《2007年》 《2002年》
事業所数 0.0089 0.0102
年間商品販売額(万円) 105.4272 106.0221
月間商品販売額(万円) 8.7856 8.8352
売場面積(㎡) 1.171 1.103
総務省・家計調査 1か月間の支出 総世帯
《2007年》 《2002年》
世帯人員(人) 2.54 2.63
消費支出(円) 261,526 269,835
1人当たり消費支出(円) 102,963 102,599
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