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【木曜コラム】万華鏡/電車の中から   第3回 ケータイは生活空間も移動させる

2009年10月15日 15時47分40秒 | 電車の中から(「今日の気づき」に統合)
【2009年10月15日(木)】立っている人がほとんどいなく、7人がけの椅子もほぼ空がない午後1時半ごろのJRの車内。何気なく向かいの7人がけの椅子を見ていると、3人が携帯電話に向かって指を動かしている。皆の年齢は想像だが、椅子に向かって左から、ケータイを操作している30代の女性。30代の男性、ケータイを操作している60代の男性、親子らしい20代の女性と40代の女性、70歳前後の女性、ケータイを操作している50代の女性の7人が座っている。多分、ケータイを持っていないとすれば70歳前後の女性一人と思われる。30代の男性は仕事でもよくケータイを使っていそうなサラリーマン風である。親子連れの母親は40代くらいと思われるが、親子で連れだって出かけるほどだから、普段からケータイで連絡を取り合っていてもおかしくないと勝手に思ってしまう。
 総務省が2009年1月に調査した「平成20年通信利用動向調査」によると、携帯電話・PHSを保有する世帯の割合(保有率)は95.6%で昨年より0.6ポイント増加した。利用率では、過去1年間に携帯電話を使ったことがある人は、6歳以上人口の75.4%に及ぶ。世代別では、「20~29歳」が最も多く97.3%。そのほかでは、「6~12歳」29.8%、「13~19歳」83.6%、「30~39歳」96.7%、「40~49歳」94.8%、「50~59歳」88.4%、「60~64歳」78.6%、「65~69歳」54.5%、「70~79歳」40.6%、「80歳以上」25.4%である。また、利用率は各年齢階層とも男性、女性で少し差はあるが、「65~69歳」の女性は45.0%、「70~79歳」の女性は42.8%である。親子連れの母親がケータイを持っている可能性は90%以上、唯一、ケータイを持っていないだろうと思われる70歳前後の女性も40%以上の確率でケータイ保有者の可能性がある。携帯電話に対する質問内容と携帯電話の普及状況からして、利用したのが、人の携帯電話を借りただけ、というケースは少ないと考えられる。社団法人電気通信事業者協会がまとめた2009年9月末の携帯電話の累計契約数は1億963万3,800件である。日本の総人口に近づきつつある。
 いつもの見慣れた電車内の光景だが、改めて、ケータイ利用者の多さに思いが及んだ。コラムの題材になると思い、メモ用のノートに、向かいの7人の推定年齢と性別を書いている時、前にばかり気を取られて横には気が回らなかったのだが、左隣りの両耳にイヤホンを当てた20代前半の女性のケータイにマナーモードでメールが入ったようで、その女性は慌てるようにケータイを取り出してメールを打ち出した。そして、イヤホンを付けたまま次の駅で降りていった。これも、見慣れた光景である。多分、隣りの女性は電車に乗っていながら、自分の部屋にいるような空間を電車の中に持ち込んでいるようである。確かに、考えごとをしていると、周りのことが目に入らずに自分の世界に浸っていることはある。しかし、携帯電話と携帯型AV機器の発達は生活環境を大きく変えている。自分だけの音と映像の空間を持ち歩くことを可能にし、ゲームを楽しむこともできる。しかも、自分ひとりでなく友だちとゲームで競うこともできるのである。インターネットにつなげばリアルタイムの空間はもっと広がる。
 別の日の電車の中だが、若い女性が歌を口ずさむような仕草をしながら足でリズムを取っている。音楽を聴いているだけでなく、時々、音を確認するように、ノートに何かを書き込んでいる。歌詞を書き込んでいるようでもあり、音符を付けているようでもある。作詞か作曲をしているのかもしれない。乗り合わせた人たちで共有している電車の中の時間と空間に、一人ひとりが自分の部屋にいる時以上の広い空間を持ち込んで、思い思いの時間を過ごしている。駅に着くたびに、そういう空間が入れ代わり立ち代り入ってくる。
 ITの発達は何事をも、ものすごく便利にしたし、一人ひとりの生活環境も大きく変えた。今後のITの発達を考えると、今は近未来の生活の入口かもしれない。あまりにも急速に便利になったので、便利さに付いていくのが精一杯で、付いていけないことの方が多いのだが、もしかして、「便利さ」を使いこなす術を持っている人はまだ少ないのではないだろうか。ITの発達に、なかなか付いていけていない自分をかえりみた時、降りる駅に着いた。駅を出ると、そういうことを感じさせなく、いつもの通り、人が往き来している。(荒井)

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