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レクイエムオブブラッド その1

2008-05-26 | 小説・レクイエムオブブラッド
長く鋭い牙が女の首筋をなぞる。ああ、と官能の声をあげ、俺を抱く女の手に力が入る。
俺は片手で女の秘部を刺激しながら、空いた手でさらに抱き寄せた。
俺の指技と歯技に堪えられた女はいない。
「いひぃ!」
女は海老反りになって身体を痙攣させると、人形のようにもたれかかってきた。どうやら絶頂に達したらしい。全身を弛緩させて、息も絶え絶えだ。
そろそろ食事にありつこう。
俺は一際大きく口を開き、女の首へかぶりつこうと――。
「ねぇ、さっきから電話がなってるけどいいの?」
「いいんだよ、そんなの。どうせたいした用事でもないだろ」
ちっ、いいところで邪魔が入る。わざわざバイブモードにしておいたのに細かいことに気づく女だ。
少々気は萎えたが仕方がない。なにしろ久しぶりの食事なのだ。選り好みはしていられない。それでもガブリ、チュウといかなかったのは単に俺のモラルだ。俺の信条は等価交換。頂くだけではこれに反するので、食事に見合うだけの快楽を提供し、果てたところを頂くのが俺のやり方だ。
さて、気を取り直してディナータイムといこう。
汗に濡れた首筋が食欲を刺激する。うむ、いい匂いだ。
「やだ、ちょっと休ませて」
二回戦が始まると思っているのか、顔を紅潮させてはいるものの言葉ほど嫌がっていない。
やれやれ、その二回戦がどんなことになるか。無知ってのは罪だぜ。もっとも、俺は果てていないのだから、一回戦の延長といったところか。
それでは、いただきまーす。
と、俺の耳にある空気の振動が入ってきた。
地上四十階のこの部屋にロケットランチャーが放たれたのだ。
都会ってヤツはどこも高層ビルでいっぱいだから、狙いをつけることはそう難しくない。
問題なのはこの俺に喧嘩を吹っかけるバカがまだいやがったことだ。
おっと、講釈を垂れてる場合じゃない。
俺は霧に変化して爆発に備えた。
女は突然いなくなった俺を探してきょろきょろしている。
着弾まであと二秒。恨むんならこんなところにロケランを放つキチガイを恨んでくれ。南無三。
フロアが一瞬で赤くなった。
爆発で生じた炎は、ご丁寧にこの階だけを焼き尽くしていく。
俺は爆発の直前に弾によって割れたガラスから抜け出し、燃えていく俺の部屋を見ていた。
蝙蝠に変化した俺の足にはさっきの女がぶら下がっている。気を失っているため暴れることはない。
こいつを見捨てていれば、俺の死を確認に来るだろうバカを霧に変化したままで待ち伏せ、しかるのちゴウモ、いや、詰問してやるのに。
なぜ女を助けたのかはわからない。
わからないが、このまま滞空しているのも面倒だ。近くのビルに降りよう。
屋上の貯水タンクの陰に女を下ろし、ぐるりと周りを見回してみた。
自慢だが、俺の視力は10.0だ。おかしなヤツがいたらすぐに気づく。
幸いそんなヤツはいないらしい。俺は人型に戻って女を見下ろした。一糸纏わぬ艶やかな裸体がそこにあった。豊満な胸に、緩やかなカーブを描く腰、尻は引き締まって美味そうだ。目蓋は閉じられ、口はOの字に開きわずかに荒い息を吐いている。
涎が出てきた。俺は食事前だったのだ。
人間の男ならいただきまーすといくのだろうが、俺のいただきまーすは文字通りだ。今度は邪魔も入らない。
俺は女に覆いかぶさり、一気に喉に咬みついた。
溢れ出る真紅の液体が喉を通っていく。この感覚、数十年ぶりだ。温かい生命の水が俺の体に満ちていく。片手が女の胸を揉んでいるのはご愛嬌ということで。
ひとしきり飲み終えると大きなげっぷが出た。久しぶりの充足感に俺はすっかり眠くなってしまった。
起きたら服を取りに行かないと。しまるむらで買ったものだが割と気に入っている。
とりあえず、おやすみなさい。

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