すてきな命 vol.105

　私がヨガやベリーダンスのクラスをしていると、窓の外に人影が見える。いつも来る84歳のきよみさんだ。声をかけて入ってもらう。「私も心臓が悪くなければ踊りを教えてもらうんだけどねぇ」。きよみさんの足腰はしっかりしているので、身の回りのこともできるし、いつも近所を一人で散歩している。お住まいは介護ステーション「むーみん」。看護士や介護士が常駐しているので安心だ。栄養学をふまえて食事もつくってくれる。

　レッスンが無いときはお話を聞かせてもらう。22歳から25歳まで従軍看護婦でハルピンに行っていたそうだ。私が「苦労されたんでしょう」と聞くと、「戦争はそりゃあ大変だったけど、帰ってきてからも苦労したよ」。きよみさんには一人息子がいるそうで、「ぼくちゃんがいくつの時何々、ぼくちゃんと何々したんだ」などなど、84歳になっても「ぼくちゃんが時々会いに来てくれたんだよ」と語る。

　きよみさんは遠慮しながら入ってきて、ありがとうと言って帰る。毎日来てほしい。いっぱいお話がしたい。先週末、隣部屋のおじいちゃんが亡くなったことを教えてもらった。苦労や幸せ、乗り越えてきた人生にお線香を上げさせていただいた。壁には、本人の笑顔の写真がたくさん張られていた。
（坂口せつ子）

（高崎市民新聞　2005年6月2日）


※せつ子は「すてきな命が輝くまちづくり」を目指しています。
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