すてきな命 vol.35

　川の流れに身をまかせる石のように、歴史の流れの中を生きてきた。十四歳で満蒙開拓青少年義勇軍として中国東北へ行き、シベリアに抑留され、日本に帰ってきたのは二十四歳の時。重労働と食糧不足で帰国の見通しは無く、精神的にも肉体的にも弱っていった友を凍土の中に埋葬した。

　私が四人の幼い子供を連れ、離婚した時、上の二人の子の小学校の校長先生だった中山五四一先生。乗附小学校にいたのはたった二年間だったが、多くの体験学習を実施し、子ども同士の多様な交流をはかられた。どんど焼き、田植え、稲刈り、野菜作り、自ら畑や田に出向き、麦わら帽子をかぶって作業している先生をみかけた。私は近くの幼稚園で、何の経験もなく四百五十人分の自然食給食をなんとか成功させていた。中山先生は、私が信念を持って生きていることを応援し、激励してくれた。中山先生はその後、倉賀野幼稚園の園長先生を四年間つとめた。自らの子ども時代の経験、戦争や抑留の経験から学んだ命の尊さを子供たちに伝えたに違いない。各方面で家庭教育講師として百回近くの講演をしている。

　今、「流石の跡」と題して自分史を執筆。先生、元気で長生きしてもっともっとお話を聞かせてください。
（坂口せつ子）

（高崎市民新聞２００２年４月１８日）

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