大阪芸大ジャーナリズム研究会

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「時代に即応したカリキュラムへ」 榊原・新放送学科長に聞く

2024-04-01 00:00:00 | ニュース

 この4月、新しい放送学科長に榊原廣教授が就任しました。大学では環境生物学を学び、広告会社でマーケティングやメディアの部署を幅広く担当した榊原教授。ジャーナリズム研究会との単独インタビューに、「2年ほどかけて、変わりゆく時代に対応できるように、カリキュラムの見直しに組んでいきたい」と意欲的に語りました。<記事:善家碧唯、小畠綾花、宮原裕/写真:曽我亮翔>

(写真:ジャーナリズム研究会との単独インタビューに答える榊原廣・新放送学科長 2024年3月 大阪市阿倍野区の大阪芸大「スカイキャンパス」で)

●突然の打診にびっくりした

 学科長就任を打診された時は、「突然でびっくりした」という榊原教授。神奈川から通勤しながらの多忙な業務ということもあり、家族に相談したところ、「奥さんには『家にいるより楽しそう』といわれた」と笑います。
「学科長は究極の『事務局』なので、スケジュールやお金(予算)をみながら環境を整えることならできるかな」と考え、引き受けたと打ち明けます。

●大学の専攻は環境生物学 「冒険家にあこがれていた」

 筑波大学第二学群生物学類環境生物学科で学んだ榊原教授は、高校時代はイルカの研究者になりたいという夢を持っていました。小学生のころに、『イルカの日』(1973年米制作)という映画を見たのがきっかけだったといいます。
 大学の課外活動は自転車部で、「サークルの方が勉強よりも一生懸命だった」。授業で海や山でフィールドワークをしたり、自転車で体を動かしたりすることが多かったことから、「学生のころは冒険家にあこがれていた」という一面も。「いまだったら環境生物学、生態学の学生は就職が良かっただろうけど」と振り返ります。

●広告会社に入社 幅広くマーケティングやメディアの仕事に

 1984年に広告会社の博報堂に入社。マーケティング、プロモーション、デジタルマーケティングを皮切りに、メディア系シンクタンク所長、雑誌局長、メディアクリエイティブセンター長などを歴任しました。
 最初は広告主にどんな広告を出せば良いかを企画提案するマーケティング、後半はメディからどんな広告枠を調達するか企画する部門に携わり、化粧品や自動車、金融、デジタル系など幅広い分野にかかわってきました。「ぜんぜんちがう分野にかかわった。違うセンスが求められた」と話します。
 「学園祭の前日がずっと続いている感じ。どたばたしていて、(プレゼンに)勝った負けたはあるけれど達成感がある。うまくいけばスポンサーやコンシューマー(消費者)が喜んでくれるのが楽しい。目の前にあることを面白く頑張り続けて、今に至る」と、広告会社の魅力を目を輝かせて語りました。

●4年間で「面白いこと」見つけ「チームで作り上げる力」つけよう

 2021年、大阪芸大放送学科広告コースの教授に着任。2022年4月からは名称がかわった「先端メディアコミュニケーションコース」で学生を指導してきた榊原教授。
 学生に対しては、「芸術大学に入ったことは、すごくラッキーでハッピーなこと」と語りかけます。他の大学の学生と違って、高校までの学びとは異なる、スタジオカメラを回したりするといった、ゼロからのスタートラインに立てるから…。その意味に気づいていない学生が多いと指摘します。
 大阪芸大の学生に対して、社会の人々からは「なにか面白いことができそう」という期待がある。そこで、「面白いことできます」と答えられるものがあるかどうかが勝負だという。
 なぜ面白いか、どこが面白いかを4年間で見つけて、コミュニケーション能力を大切にして、仲間と共にチームで作り上げる力をつける。それが他大学生と違う強みになると、放送学科生に向けてエールを送ります。

●志す道に進むなら「得意なことを探せ」

 「将来これになれたらいいな」と思う人は多い。でもその道に本当に進めるかは、結局自分次第。「よしやろう」と取り組むかどうか。「やりなさい」とは言われないけれどやれるかどうかがポイント。それが大きな運命の分かれ道だと、榊原教授は語ります。
 一方で、好きなことはあるけど、やりたいことが具体的に見つからない人には、「得意なことを見つけることが鍵になる」とアドバイスします。「他人より少し早くできる」、「寝ないでもできる」ことを探して一生懸命やると道が開ける、とも助言します。第三者が「これ向いているのでは」と言ってくれることも気にかけるといいと言葉を添えました。

●好奇心を持ってゼロからのスタートラインに立って

 クリエイティブの根は経験の広さであり、それは好奇心につながる。自分の知らない出来事を伝える新聞を読み、好きな分野でいいから本を読む。街に出る、旅をする…。「学生に求めるものは」という質問に対し、「好奇心」だと即答しました。
 「仲間と何かをつくる楽しさ、大変さ」を面白いと思うことができれば、学ぶことは何でもいい。それを身につけられるところが放送学科の魅力であり、学んでいくうえで一番大事だと強調します。
 「大学は人生のスタートライン。授業選択をはじめ、自分で何かを選ぶ人生はここから始まる。今までみんなと同じことを学んでいたのが、ここからは違ってくる。芸大の1年生は特に、みんな同じゼロからのスタートライン。そういう素敵な場所にいることに気がついていない芸大生は多いが、自信を持って欲しい」。

●時代に即したカリキュラムを検討したい

 放送学科は、「メディアを使ったコミュニケーションを学ぶ学科」だという榊原教授は、学科長の役割は、「変わりゆく世の中に対応できるように(学生たちに)準備をしてあげること。そのためには、授業の中身やカリキュラムの検討が必要になってくる」と即答。
 「具体的には学生や先生方と一緒に考えていきたい」と身を乗り出して答えました。『AIとクリエイティブ』(放送特講A)といった最先端技術に関する講義は、早速この4月から登場します。
 ただ、学科の教育内容が時代に合っているかどうか考え、全体を組みあげていくには2年間はかかるだろうといいます。

●人の生きる道に影響与える“メディア” それを学ぶのが放送学科

 小学生のころ、映画でイルカに興味を持って大学で生物を学ぶ道に進んだ榊原教授。
 「他人の生きる道に影響を与える作品を生み出すことができるのがメディアで、それを学んでいるのが放送学科生なのだからすごいよね」と、ソフトな榊原スマイルで話します。
 メディアでものごとを表現し、人を、世界を変えることができる。放送学科はそれを学べる場所だと、榊原教授は真っ直ぐ前を見ながら力強く語りました。

▼関連記事=2024年2月17日「新しい放送学科長に榊原廣教授 2024年4月から」https://blog.goo.ne.jp/oua_journal/e/8044870609893607679da9adbd1f877c


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