『音惚花活気好@kakky』=垣内政治的《霊界物語学》の日記的な雑記の様なレポート状の諸々?

出口王仁三郎聖師による弥勒胎蔵経『霊界物語』を『音惚花活気好@kakky』的に学問してみるランダムレポート?

第4章 立春到達(リツシユンタウタツ) (254)

2010年11月05日 21時54分27秒 | Weblog
霊界物語 第六巻 霊主体従 巳の巻 第一篇 山陰の雪

 花の顔色(カンバセ)、霞の衣(コロモ)、姿優(スガタヤサ)しき春の日の、
花に戯(タハム)る蝶々(テフテフ)の、得も言はれぬ風情をば、
遺憾なくあらはしながら、宣伝使の前に座を占めたる美人あり。

 足真彦(ダルマヒコ)は思はず、

  「ヤア」

と叫べば、女性はハツと胸を仰(オサ)へ、

 『鬼熊(オニクマ)はあらざるか、鬼虎(オニトラ)はいづこぞ。
  申付くべきことあり、早く来れ』

と、しとやかに呼ばはりたり。

されど何れの者も、この女にまかせて何彼の準備に取りかかり、
近辺には一柱(ヒトハシラ)の厄雑男(ヤクザヲトコ)さへをらざりける。

 女性はあたりに人無きを見すまし、
梅花のごとき美しき唇をやうやく開きて、

 『アヽ貴下(キカ)は足真彦にまさずや。
  月照彦天使(ツキテルヒコノカミ)は、
  当山に割拠する美山彦(ミヤマヒコ)の謀計にかかり、
  今や奥殿に休息されつつあり。
  悪人の奸計にて、痛はしや、今宵のうちにその生命(イノチ)も、
  晨(アシタ)の露と消えたまはむ。
  貴下もまた同じ運命のもとに
  刃(ヤイバ)の露と消えさせたまふも計りがたし。
  心配(ココロクバ)らせたまひ、妾(ワラハ)と共に力を協(アハ)せ、
  この館の悪人どもを打亡ぼして、世界の難を救ひたまへ。
  妾は月照彦天使の懇篤なる教示を拝し、
  吾が夫鷹住別(タカスミワケ)は宣伝使となりて天下を遍歴し、
  妾は御恩深き月照彦の御跡(ミアト)を慕(シタ)ひ、
  一つは吾が夫鷹住別にめぐり会はむと、
  モスコーの城を後にして、雨に浴し風に梳(クシケヅ)り、
  流浪(サスラ)ひめぐるをりから、
  今より三年のその昔、美山彦の計略に乗せられ、
  鬼熊彦の馬に跨(マタガ)り、この深山の奥に誘拐(カドハ)かされ、
  面白からぬ月日を送りつつある春日姫(カスガヒメ)にて候』

とありし次第を涙とともに物語り、
かつ足真彦の耳に口寄せ、何事か囁(ササヤ)きにける。

 足真彦は、無言のまま打ちうなづきぬ。
春日姫は、あたりに何人も無きに安心したるものと見え、
涙を片手に、激昂の色を満面に漂はせながら、

 『妾(ワラハ)は美山彦の妻なる国照姫(クニテルヒメ)が、
  ウラル彦に招かれて、ウラル山に出発せしより、
  閨淋(ネヤサビ)しき美山彦のために

  「昼は娘となり、夜は妻となれよ」

  との日夜の強要に苦しみ、
  涙の日を送ること茲(ココ)に三年に及ぶ。
  されど妾は貞操(ミサヲ)を守り、今にその破られたることなし。
  しかるに美山彦は執拗にも、
  最初の要求を強要してやまざるを幸(サイハ)ひ、今宵は一計を案出し、
  美山彦の一派の悪人等を打ち懲(コラ)しくれむ。
  その手筈(テハズ)はかくかく』

とふたたび耳うちしながら、悠々として一間に姿を隠したりける。

 場面は変りて、ここは見晴らしの佳(ヨ)き美山彦の居間なり。
美山彦にとりて強敵たる月照彦、
足真彦の甘々(ウマウマ)とその術中に陥(オチイ)り、
吾が山寨(サンサイ)に入り来れるは、
日ごろの願望成就の時到れりとなし、勝誇りたる面色にて、
花顔柳腰(クワガンリウエウ)の春姫(ハルヒメ)に酌(シヤク)させながら、

 『飲(ノ)めよ騒(サワ)げよ
  一寸先(イツスンサ)きや暗黒(ヤミ)よ
  暗黒(ヤミ)のあとには月が出る
  月照彦(ツキテルヒコ)の運(ウン)のつき
  足真(ダルマ)の寿命(ジユミヨウ)も今日かぎり
  春日(カスガ)の姫(ヒメ)は軈(ヤガ)て妻(ツマ)』

と小声に謡(ウタ)ひながら、
上機嫌にて果物(クダモノ)の酒をあふりゐたり。

 かかるところに、衣摺(キヌズ)れの音しとやかに、
襖(フスマ)を押開け入りきたる女は、
美山彦の須臾(シユユ)も忘るる能(アタ)はざる春日姫なりける。

 春日姫は満面に笑(エ)みをたたへ、
美山彦にむかひて会釈しながら盃(サカヅキ)をとり、
美山彦に差したりしに、美山彦は意気揚々として、
満足の色をあらはしながら、春日姫の顔を酔眼朦朧として眺めゐたり。

春日姫は春姫に目配(メクバ)せしたれば、
春姫はこの場を立ちて、奥殿の月照彦命の居間に急ぎける。

春日姫は形容をあらため、襟を正し、さも嬉しげにいふ。

 『今日は如何(イカ)なる吉日ならむ。
  日ごろ妾が念頭を離れざる彼の月照彦の、
  貴下(アナタ)の術中に陥(オチイ)れるさへあるに、
  又もや足真彦の、貴下の神謀鬼略によりて、
  この山寨に俘虜(トリコ)となりしは、
  まつたく御運の強きによるものならむ。
  妾はこの二人さへ亡きものとせば、
  この世の中に恐るべき者は一柱(ヒトハシラ)も無し。
  今宵は時を移さず、貴下の妻と許したまはざるか。
  幸ひに夫婦となることを得ば、
  たがひに協心戮力(リクリヨク)して二人を平げ、
  彼が所持する被面布(ヒメンプ)の宝物を奪ひ、
  かつ足真彦は、天教山(テンケウザン)の木(コ)の花姫(ハナヒメ)より得たる
  国(クニ)の真澄(マスミ)の玉(タマ)を所持しをれば、
  之(コレ)またマンマと手に入るからは、大願成就の時節到来なり。
  この吉祥(キツシヤウ)を祝するために、今宵妾と夫婦の盃をなし、
  かつ残らずの召使どもに祝意を表するために、
  充分の酒を饗応(フルマ)はれたし』

と言ふにぞ、美山彦は大いに喜び、心の中にて、

 「アヽ時節は待たねばならぬものだなア、
  日ごろ吾を蛇蝎(ダカツ)のごとく、
  毛蟲のごとく嫌ひたる春日姫の今の言葉、
  まつたく縁(エニシ)の神の幸(サキハ)ひならむ。
  善は急げ、又もや御意の変らぬうちに」

と二つ返事にて春日姫の願を容(イ)れ、手を拍ちて侍者を呼び招けば、
禿頭(ハゲアタマ)の鬼熊彦(オニクマヒコ)はたちまち此の場に現はれたり。

美山彦(ミヤマヒコ)は機嫌よげにイソイソとして、

 『今宵ただちに結婚式を挙ぐる用意をせよ。
  召使(メシツカヒ)一同に残らず祝酒を与へて、思ふままにさせ、
  各自に唄ひ舞ひ、踊らしめよ』

と命令したれば、鬼熊彦は、

 「諾々(ハイハイ)」

と頭(カシラ)を幾度も畳にうちつけながら、
喜び勇みて此の場を駆(カ)けだしたり。
而(シカ)して一般に、今宵の結婚の次第を一々伝達せしめたりけり。

 (大正十一年一月十六日、旧大正十年十二月十九日、藤松良寛録)

最新の画像もっと見る

コメントを投稿