7分野の現場の声 冊子 「大阪の貧困」 発行

2010-07-27 16:40:35 | Weblog

   7分野の現場の声 

 冊子 「大阪の貧困」 発行 

 大阪の貧困問題を支援者や当事者の声で読み解く冊子

「大阪の貧困 格闘する現場からの報告」が刊行された。

 女性や野宿者など7分野について、生活困窮に至る過程や、必要な対策などが示されている。約30団体でつくる「反貧困ネットワーク大阪実行委員会」が発行。

 2009年から定期的に開く学習会の内容をまとめた。

 冊子では、貧困への”扉”がさまざまな場面で開くことを伝える。一家の稼ぎ頭が大病にかかたとき、夫の暴力で女性が離婚したとき、家族がギャンブルやアルコールの依存症になったときー。多くの人が無関係ではない中で、一度貧困に陥ると容易には抜け出せない社会の構造を明らかにする。

 病気が長引けば、生活費の確保も難しくなる療養現場。母子家庭は、子育てと仕事の両立の中で低収入の環境から抜け出せない。親の困窮は、子供の学力低下を招く場合も多く、貧困の連鎖は続いていく。

 一方で対策の提案もある。高校教諭は、子どもたちが貧困の仕組みを理解し、対応力を向上させる授業を紹介。住宅問題に取り組む専門家は、公営住宅を生活困窮者のセーフティーネット(安全網)に役立てる制度を求める。

 偏見の解消も重視される。さまざまなきっかけを経て行き着く野宿生活。
一人一人の人生があり「野宿者を一緒くたに見てはならない」と訴える支援者は、
「社会の役に立たない」等の偏見が解消されないと「野宿者の襲撃という深刻な問題は解消されない」と指摘する。

 また精神保健福祉士からは、意思の強弱などで片付けられがちなギャンブルや
アルコールの依存症問題で、「意思ではどうにもならない疾病」との認識で支援するよう呼び掛ける。

 貧困問題の学習は支援者側にも変化をもたらしている。冊子を編集した伊東弘嗣司法書士は、これまでギャンブル依存による借金問題の解決に尽力。学習会で依存症についてあらためて見詰め直し「周りの家族を含めた貧困問題としてとらえられるようになった」と話す。

 同実行委員会事務局長の小久保哲郎弁護士は「一見異なる分野でも貧困というキーワードで見ると諸課題が有機的につながっている」と強調する。

 大阪では、日雇い労働者の街・釜ヶ崎があって野宿者は多く、生活保護受給者は急増中。小久保弁護士は「行政は、生活困窮者を”お荷物”扱いするのか、貧困を生み出す労働、社会保障制度の再構築を国に求めていくのか、大阪の街は全国に先駆けてその選択を迫られている」と力を込める。

 現在も学習会は続いており、続編の刊行も検討されている。
 A5版。100ページ。800円。

 問い合わせは電話06(6885)0074、伊東司法書士事務所へ。
                                        2010.7.27