この週末、「中立」についてエントリーする必要を感じ
確か以前にも書いたはずと検索してみたら・・・
昨年の今日のエントリーに
「社会保険労務士の立場と「中立」についてのメモ」
を見つけました
1年後の今日、読み返してみても本筋は変わらない
私と石崎弁護士との共通点、相違点を明らかにするためにも
前提となるものと考えますので多少手直しして再投稿します
使用者と労働者の間に紛争が生じる恐れがある場合、
また労使紛争に発展した場合には
社会保険労務士は紛争の予防、解決にあたるのが仕事
紛争の予防の場合には
労使どちらからの依頼であっても
問題を円満に解決したい意思が確認できれば
法律専門家としてアドバイスすることとなる
ただ社会保険労務士に相談する依頼者の背景には
法律専門家にこの問題を判断してもらおう
法律という刀で相手を切れるか知りたいという心理がある
使用者、労働者にとって労使間の法律といえば労働基準法
多くの社会保険労務士にもその認識がある
社会保険労務士試験の構成からも当然だし
そもそも行政にとって社会保険労務士の役割は
労働保険料の徴収代行資格なのだから
それが従来の社会保険労務士の限界でもある
しかし労働基準法の実態は民法の特別法というよりは
行政判断基準であり、また刑法的な強行法規の側面が強い
社会保険労務士はそのモノサシで行政指導的な判断を下すか
労働基準法で判断できない問題は判断停止に陥ってしまう
実際労使間で起こる様々な問題の中で
労働基準法で解決できる問題はそれほど多くない
それに労働基準法は強行法規なのだ
違反ならば監督機関である労働基準監督署の出番
しかし労働基準監督官の判断基準はあくまで労働基準法
そして労働基準監督署は労使紛争の解決機関ではない
労使間の問題の多くは労働基準法では解決不能な問題
法律的に言えば民法上の雇用(労働)契約の問題
労使間でどのような契約が存在するか、していたかの問題
これを解決するには社会保険労務士が置き去りにしていた
民法の、というか市民社会の根幹に関わる
「私的自治の原則」「契約自由の原則」に立ち戻ることが必要
私的自治という大原則とその限界を見据える中で
労使という対等な私人とは言い難い関係性を踏まえ
判断の基本となるのは労働基準法より労働契約法だ
特定社会保険労務士となる前提としての特別研修は
労使間の問題を弁護士同様の視点から判断するための訓練
そして試験はその視点が備わっているかをみる試験
さて問題判断のための法律的な視点はそれで定まった
労使間の法律関係の中で代理人となる資質は確認された
あっせんを申請する代理人としてはそれで十分かもしれない
しかしあっせんの結果としての和解は裁判とは違う
要件事実を並べてもそれが判断の基準になるとは限らない
善悪、正邪、良否の判断と和解による解決は全く異なるものだ
依頼者が自分の考える正義の実現を求めるのなら
紛争調整委員会などのあっせん、調停を利用するより
弁護士に代理人となってもらい司法判断を求めればよい
ただそれで紛争が解決したといえるのだろうか
社会保険労務士は労使関係という継続的な人間関係の中で
根本的な紛争の解決を目指さなくてはならない
たとえそれがとてつもなく困難であっても
それが社会保険労務士に与えられたMissionではないのか
そのMissionのための道具となるものは
敢えて言えば民法でも労働契約法でもない
労使間の和解を目指すために何が必要を考えたとき
代理人とはおのずと異なる資質の必要性が見えてくる
これは単に労使間で中立であることではない
「中立」は労使それぞれの立場からの位置を示すだけで
そこには主体的な紛争解決のための視点は見えてこない
それでも敢えて「中立」を宣言するとき
それは「中立」という政治性を帯びることになり
労使どちらからも信頼に足るものとは判断されないだろう
紛争の解決に必要なのは
代理人として依頼者の正義の実現を目指すことでも
「中立」の立場で両者の間を取り持つことでもない
和解によって本当の意味での紛争の解決を求めること
あくまでも本質的な紛争の解決を追求する姿勢を貫くこと
あっせんの代理人ではなくあっせん人となること
その意思を両者に伝えることは「中立」とは違う
紛争解決における社会保険労務士の存在意義はそこにある
と、私は考えます
ぽちっとな
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orangeさんの足元にもおよびませんが、労組時代に小さいながらトラブルを試行錯誤しながら解決していた頃の自分を思い出しました。
労組役員としては異質だと思われていたかもしれませんがトラブル解決に対する自らの立ち位置は今でも間違ってなかったと思っていますし、これからもスタンスは変えずに泥臭い社労士としてやっていくつもりです。