goo blog サービス終了のお知らせ 

On The Road

小説『On The Road』と、作者と、読者のページです。はじめての方は、「小説の先頭へGO!」からどうぞ。

4-17

2010-02-04 19:05:17 | OnTheRoad第4章
 「タカハシさんが大福を売ってるのを見ましたよ。がんばってくださいね」とワタナベ君はピザを積みながら言った。
 「ありがとう。ナカムラ君にもよろしく言っておいて」と僕は駅に向かって歩き出した。三輪バイクにエンジンがかかり、ワタナベ君がすぐに僕を追い抜いた。

 駅に着いて改札の前に立ったとき、ケータイが鳴った。受信音は3回。メールだと思った。

コージ先輩へ(*^_^*)
もしレンタカー借りるなら私の愛車で行きませんか? 軽だけど(笑)
レンタカー代でおいしいデザート食べよσ(^◇^)
あずさ

僕はすぐに返信した。

あずさちゃん
デザート食べて、次のデート代にまわす
コージ


4-16

2010-02-04 19:04:01 | OnTheRoad第4章
 「ササキさんのお子さんって、漁師さんなんですか?」と僕は聞いてみた。「娘のダンナはただの海好きな会社員で、これは友達の船ですよ」とササキさんに言われて、漁師なら紹介してもらおうと思った自分の甘さに腹が立った。

 「赤ん坊が生まれてもサーフィンがやめられない、ガキみたいな男で困ってるんだ」。ササキさんが言った。娘のダンナとしては不足かもしれないけど、僕はぜひ紹介してほしいと思った。

 ササキさんと僕がもっと親しくてササキさんと娘さんのダンナさんがもっと仲がよかったら、サーファーいちオシの店を教えてもらえたかもしれない。でもそれには時間がかかりそうだ。
 ヨシユキさんが駅に着く時間が迫ってきて、ピザ店のみんなに「今度は大福持ってきます」と言って、僕は店を出た。ワタナベ君もヘルメットを持って僕と一緒に外へ出た。忙しくなる頃だから、帰るのはちょうどよかったと思う。

4-15

2010-02-03 20:37:49 | OnTheRoad第4章
 「近くまできたから寄ってみただけで、忙しそうだからまた来ます」と僕が言って、「ササキさんの前にいたタカハシ君」とオジサンに紹介された。会うのは2度めだけどオジサンのことはあまり知らない。

 ササキさんははずしたヘルメットを台に置いて、ワタナベ君の隣りに座った。ワタナベ君が何か言って、ササキさんはケータイを取り出して待ち受け画面を見せている。僕はワタナベ君にあいさつしようと思って、2人のところに行った。
 ササキさんが見せていたのはユリナちゃんくらいの女の子と性別不明の赤ちゃんの写メだ。赤ちゃんは真っ黒に日にやけたたくましい男に抱かれている。

 孫の写真を待ち受けにしてるおじいちゃんがピザ店のデリバリーなんて、なんか変な気がするけど、家族のために働きたいと面接にきたことを思い出した。家族ってこの子たちも含まれているのかもしれない。
 男や子供たちの背景には小さい船が写っていて、海で撮った写メなんだと思った。ちょっとラッキーかも。

4-14

2010-02-03 20:37:12 | OnTheRoad第4章
 情報を取り入れるのは簡単にできる。たくさんの情報を持っているのがいいことなはずなのに、捨てる情報を決めるなんて方法を僕は知らなかった。
 ペットを連れて食事のできる店、女の子どうしで盛り上がれる店の情報を削除した。写真ではオシャレな店だったけど、本当に行きたいのは魚がおいしくてゆっくり話せる店だから。

 辞めた店には近付かないことにしている僕がピザ店に向かったのは、ナカムラくんを思い出したからだ。サンタスーツを着て彼女に会いに行ったナカムラ君ならいいアドバイスをくれそうな気がした。
 ピザ店の前に立つと、でもすこし緊張した。キッチンのオバサンが僕に気付いて頭を下げた。オバサンと話していた店長が僕のほうを向いて笑い、キッチンから出てドアを開けた。

 「久しぶり、タカハシ君。おじさんのお店はどう?」と、店長が割引き券をくれたときの顔で聞いた。店に入りにくかったのはウソを言って辞めたからだと気付いた。
 「おかげさまで、どうにかやってます。皆さんもお元気ですか?」僕たちの声が聞こえたらしく、ワタナベ君もあの笑顔を見せた。ナカムラ君は配達中なのか姿が見えない。
 店長に中に入るように言われて店に入ったとき、店の前に三輪バイクがとまった。ナカムラ君だと思ったけど、「いらっしゃいませ」と言った声が違った。僕が辞めて、ナカムラ君の後輩とオジサンが入ったことを忘れていた。

4-13

2010-02-02 21:06:41 | OnTheRoad第4章
 そのあと見たアネキのメールには

7時26分にパパが駅に着くから相談してみて(‘o^)

と書いてあった。ヨシユキさんと外で会うのは初めてだけど、先輩を頼ってみてもいい気がした。

本屋で地図やタウン誌を見ていたら、ヨシユキさんから電話が入った。駅のそばにいるらしく、電車の音や発車のアナウンスが聞こえた。ヨシユキさんはまだ東京だ。

 「あ、もしもし、ヤマダです。コージ君ですか? 資料集めてみたけど、地元のほうが有利みたいです。サーファーの友達とかいたら当たってみたら? 駅に入ります」

 定期券を改札にかざす音がして、ケータイから聞こえる音がにぎやかになった。「もー、サイテー」と元気な女の子の声が聞こえた。
 「サーファーの友達なんていないし、まだいいですよ」と僕は言った。「雑誌見たら余計わからなくなっちゃって」。本屋で見た記事だけで、僕は混乱していた。
 「情報を取り入れすぎたら、捨てていいものから捨てていくといいよ、あ、電車きてるから」とヨシユキさんからの電話が切れた。