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On a bench ブログ

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聴いたCD The Young Beethoven (Igor Kipnis)

2024年05月22日 | クラシック

 

〔曲目〕
 ・6つのメヌエット WoO.10 
 ・喜びと悲しみ WoO.54
 ・アレグレット WoO.53
 ・ロンド WoO.51-1
 ・ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」
 (インターミッション)
 ・創作主題による6つの変奏曲 WoO.34
 ・ピアノ・ソナタ第14番「月光」

 これは、何年か前に、ディスクユニオンのどこかの店に安く落ちていたのを拾ったものの、ジャケットが地味だったりして今一つ聴く気にならず、ずっと放置してしまっていたCD。

 で、今回久しぶりに出てきたので(半ば義務感で)聴いてみたところ、最初は今回採用されているベートーヴェンの若い頃の作品と同時期に作られたフォルテピアノ(1793 Graebner Brothers Fortepiano (Dresden)と書いてある)による演奏が、やっぱり地味かなあとも思ったのだが、でも2,3度聴いてみるうちにだんだん良くなってきて、今ではちょっとお気に入りに。

 まず、そのフォルテピアノの音が、慣れてくるにつれてけっこう迫力があることに気づいて、その上に特に低音の和音のザックリした感触に耳をくすぐられて、また演奏者であるイーゴリ・キプニスというピアニスト(というか、恐らくチェンバロを主にやっていたと思うのでチェンバリストというべきか)がかなり個性的で、曲にちょっとした装飾音を即興的にいれたり(特に「悲愴」の第3楽章の途中で大胆に技巧的なパッセージを挿入しているのにはすごく驚いた)、また冒頭の「6つのメヌエット」でも、6曲弾き終わったところでダカーポで最初の1曲目に戻って実質7曲にしてみたり。

 さらに後半、「悲愴」が終わったところで何だか長い無音部分が続くので変だと思ったら、「インターミッション」と称した10秒ほどの空白だったりと、写真で見たところ、ちょっと太めの陽気そうなおじさんなのだが、この頃からピリオド楽器を使ったりしているので最初は堅苦しい人かとも思っていたところ、むしろ茶目っ気もあるような人だった感じ。

 このキプニス氏、ネットでちょっと調べると日本語の情報は簡易な基本情報以外ほとんど何も出てこなくて寂しい状況なんだけど、英語情報はすごく多いし、YouTubeでも古めの演奏がかなりアップされているので、欧米ではかなり著名な演奏家だったのかも(ちなみに、キプニスは1930年生~2002年没。この録音は1994年)。

 先ほどからYouTube動画を見ている限り、彼の演奏はやはりバロック作品をチェンバロで演奏しているものが多く、もしかしたら今回のベートーヴェンは彼のレパートリーの中では最も後の時代の作曲家なのかもとも思うのだが、こういう独創的な演奏をしてくれる人のベートーヴェンなら、もっともっと聴きたかったところ(Discogsでディスコグラフィーを見る限りでも、ほかに録音は見当たらない)。

 ていうか、こうしてこの文章を書きながら今もこのCDを何度か聴いているのだが、先ほども言及した「悲愴ソナタ」の第一楽章、副次主題(第51小節~)が変ホ短調で出てくるところで、低音部に明らかに「運命」の「ダダダダーン」の4音を忍ばせているのに気づいたりして、さっきから一層興奮してきてしまった(ちなみに、この「悲愴」は、聴けば聴くほどダイナミズムも強く感じて、かなりの熱演。超オススメです)。

 そして、他の小曲たちも、日頃あまり聴いたことがないから気づかないけど、もしかしたら「悲愴」みたいな独創的な仕掛けが隠れているのかも(今まさに、「創作主題による6つの変奏曲 WoO.34」の熱演ぶりにも気づきつつある。いや、・・・最後の「月光」もすごく熱いぞ!)。

 このキプニス、すごく即興性も感じるし、それにきっと、今回のベートーヴェンは普段の守備範囲であるバロックから大きく一歩ジャンル的に踏み込んだ録音で、すごく気合も入っていたのではないかと思う。

 ジャケットが地味なせいで聴くのが遅れたけど、これを見つけた時に当時の自分はよく拾っておいたなあと(かなりのファインプレーだったような気がする)、今マジで思い始めているところです。

↓(ベートーヴェンの演奏は見つからなかったものの、何とかモーツァルトのフォルテピアノの演奏が見つかりました。どうやら、使用楽器は同じなようです)

Piano Sonata No. 11 in A Major, K. 331: I. Theme and Variations. Andante grazioso

 

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