沖縄県外に沖縄居酒屋は数多くあるが、外国人が店主を務める店は多くはないはずだ。ルーマニアから来たティーファ・マリアさん(36)は大阪市内のビジネス街で店を営み、三線で沖縄民謡を歌う。マリアさんの明るい人柄を慕い、歌を聞きに来る客で連日にぎわっている。
2000年8月に来日したマリアさんが初めて沖縄へ行ったのは、それから3年後のこと。ルーマニアの生まれた町から黒海までは車で8時間もかかる。「だから海を見たのは生まれて2回だけだった」と言うマリアさん。沖縄の海を見た時、「あまりの美しさに言葉が出なかったほど感激した」。民謡ライブの店にも行き、沖縄にはまった。
「ラテン系なので、盛り上がると歌ったり踊ったりしていた。そんなところが沖縄と似ているので大好きになったのかもしれない」。はまってからは何度も沖縄へ通い、知り合いも増えた。
11年に三線を手に入れて3年間は独学で演奏を始め、その後、師匠に付いて学んでいる。工工四を見れば、だいたいの曲は演奏できるほどの腕前になった。
16年3月に念願の店をオープン。20種類以上の泡盛と沖縄料理を出すだけでなく、母国の肉料理やワインも人気がある。毎日のようにマリアさん自身が三線を片手に歌ったり、沖縄の演奏者も来阪してライブを開いたりしている。
沖縄料理もお手の物で「豚肉を余すところなく使う点が、ルーマニア料理と似ている」と話す。
今は店だけでなく、手作りのガラス工芸のアクセサリーを販売する会社も経営している。母親のクリスティーナさんが観光で来日しており「母が日本語に慣れたら、いつか一緒に沖縄に住みたい」と夢を語る。
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ティーファ・マリア 1982年6月生まれ、ルーマニア北東部のロマン出身。2000年に来日、16年に大阪市中央区に沖縄ダイニング「美ら島物語」をオープン。