パペット劇場ふらり旅 ~広島~

芝居好きの私がめぐり合った人形劇の魅力、たっぷりとお伝えします。

坂口芳貞 演技ワークショップ 

2007-08-20 | Weblog
『演劇引力廣島』の演劇講座第2弾「素直に自分を解放するための演技ワークショップ」
講師は文学座の俳優で演出もこなす坂口芳貞。お仕事柄か日頃からストレッチを欠かさない生活のためか年齢よりも遥かにお若く見える。とても羨ましい。
恥ずかしがっていてはダメといわれることの多い演劇ワークショップが私はあまり好きではない。今回は「恥ずかしがること」は大事という坂口さんの言葉につられて参加することにした。7月28日(土)3時開始、私は初日だけの参加である。

会場は7Fの研修室。参加者は40名弱。高校生と地元の役者さんと熟年の女性陣。男性参加者は4名。台詞のある男役は彼らに優先的に振られた。
開始前に坂口さんの演劇観を30分ほど話してくれる。演劇は自分と何か(他者、世界など)との関係作り。自分という「分からないもの」を知るために他者に働きかけることが大事で、「恥ずかしさ」「照れくささ」の自意識は演劇の源なのだと。なんでも平気になってしまってはツマラナイ。恥ずかしさの中からチラッと自分の本当の姿を見せるのが色っぽいんだと坂口さん。
年齢や立場というのは長く続けていれば分かってくることもあるが、逆に若いからこそ見えることもある。だから自分のことは「先生」とは呼ばずに「坂口さん」と呼んで欲しいとも。
亡くなった杉村春子さんへの強い思い入れもあって文学座の役者さんたちが広島を訪れてくれることに感謝であります。

自分の身体を自由に動かしてみるエクササイズをいくつか組み合わせて身体馴らし。
なかでも一番印象に残ったエクササイズは、8人でグループになり真ん中にひとり、目を瞑って後ろにバタンと倒れるというもの。他のメンバー(4名)が腕でしっかりと抱きとめてくれる。これ、実は抱きとめるほうがずっと難しい。繰り返しているうちに段々と抱き留め方が巧くなるのも実感。倒れる側の体験では目を瞑って後ろ向きに身を預けるのはちょっとした恐怖だ。受け留めてもらったときの体感は忘れられない。すごく感激した。これはとても危険を伴うエクササイズなので慎重な配慮が必要なのだそう。怪我をする人がないように坂口さんが一組ずつ付きっ切りでアドバイスしてくれた。

向かい合って、あるいは背中合わせで、相手の動きを見ながらバランスを取って自分の身体を傾けていくエクササイズ、変にどこかに力が入っていたりする失敗する。自分ひとりが頑張ってもダメなのだ。2人の呼吸が合わないと上手くいかない。

見知らぬ他人に立ち混ざり初対面の人に身体をあずける体験は新鮮だった。
何ヶ月も何年も一日の大部分を一緒にすごしている会社の同僚ともこれほど身体的接近をすることはまずない。第一そんなふうに心を許すような場面がないのだ。
演劇ワークショップ、そんなサラリーマン諸氏にもオススメである。

休憩時間に、車座にすわり手を背中で握り合って信号を伝える電流遊びをした。変電所役の人がピッと言い、信号の方向を変えることができる。
じっと観察していると信号の移動していくのが分かるのだ。真ん中に座った鬼が信号が今どこにあるのかを当てるゲーム。結構難しい。馴れるとかすかな腕の筋肉の動きでピタリと当てる人が出てくる。

後半はお待ちかね台本を片手に演劇ワークショップ。
何種類かの平田オリザの脚本(一部)を使い、交代で台詞を読んで行く。
全員に順番に台詞を言う役が回ってくる。人物の関係が解かると台詞のリアル感が増してくる。他人がいる時と当事者だけのときとで人は口調が微妙に変化したり、その違いが自然に出ると面白い。
私は、ワイルダーの「わが町」を下敷きにした「わが町池袋」の秀夫役をした。平田オリザの芝居は何度か観ているので声を張り上げたりせずに坦々と読む。感情のほうがぐっと動いて自分でもよく読めた気がする。
坂口さんが選んだ台詞劇の課題の中には「上野動物園再々襲撃」の一部もあった。オリザ作品の中では珍しく日常会話の坦々とした感じと違い、時間と場所を異とした少女と青年の会話劇。
あるときは独白、ある時は叫ぶように、あるいは心情を抑えた情景描写に徹してと坂口さんが指示する。戯曲を読み解きこんなふうに言ってみてとか、ここは独り言のようにとアドバイスすると芝居がぐっと立ち上がってくる感じ。プロの演出ってすごいなと思った。
聞きながら平田さんにはこんな作品もあったのかと、同作品を観に行くチャンスを逃したことを今頃になって悔やむ。もうちょっとやりたいなと思ったがここで初日の終了時間。
初日のスケジュールは、3時から8時まで5時間のエクササイズと演劇ワークショップ。一日目だけの参加者は6名だった。記念に坂口さんと記念写真を撮って貰う。

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