彼のHIVと私の太陽

2011年夫がAIDSを発症しました。2018年無事です。

入院生活 6

2011-07-14 20:00:35 | 入院生活
ニューモシスチス(カリニ)肺炎の治療は、
バクターとプレドニンの3週間の投薬治療でした。
その後は、肺炎の再発を抑えるための予防として、
バクターを1日1錠飲むことがいいそうです。
以前にこの薬の副作用が出たため、
バクターを1日0.005mgから毎日倍ずつ増やして、
夫の副作用が出てくるまでを見極める減感作療法というやり方をするため、
1gまで9日かかりました。
でも副作用がでなかったために、再発予防に毎日1錠飲めることになりました。
念のため、肝臓のお薬ウルソ1錠を朝昼晩3回飲みます。

日和見感染症には、カリニ肺炎のほかにもいろいろあります。
夫は、サイトメガロウイルス(CMV)感染症もあるため、
眼科の眼底検査及び診察をしました。
幸いなことに、今のところ目には異状がありませんでしたが、
定期検査と、いずれ治療薬を飲むほうがいいと言われました。
それと、非定型抗酸菌症の予防薬です。

でも、他の薬を今一緒に飲んでしまうと、
副作用が出た場合、何の薬が原因かわからないため、
バクターをもう少し飲んでみてからにしましょうとなりました。


薬のおかげで、夫はだいぶ元気になっていきました。
これは、本当は喜ばしいことなのですが、
だんだん元気になっていく夫とはうらはらに、
私はだんだん怒りに支配されてきたのです。
今にも死にそうな彼をみていた時は、
なんとか生きていてほしいと思っていたのに、
入院生活が暇だから早く退院したいとか、
食事がどうだとか、
仕事が心配だとか、
そう言ってる彼の話を聞きながら、
「この人、私を裏切ったんだよね。」と何度も思い、
夫に対しての嫌悪感がどんどん湧いてきたのでした。
そのため、彼への態度が冷たくなって、
でもなんとか入院中はやり過ごす形でも、
夫との関係はぎくしゃくしていったのです。


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退院するまで

2011-07-13 14:44:57 | 入院生活
夫が退院するまでに、なんとか自分の感情を整理しないといけないなと思うのですが、
なんだかその時は、選択肢が2つのように思えて、
彼を許せるのか、許せないのか、
と、どっちなのか考えることが多くなっていきました。
許せたら、このまま結婚生活を続けていける、
許せないなら、離婚なのか。子どもはどうするのか。生活は・・・。

そう考えているうちに、今までの20数年間の結婚生活が思い出されてきました。
いろんなことあったなあ、と。
3人の子どもに恵まれました。
初めての子どもは流産で、手術後二人で泣いたこと。
原因不明の病気で、子どもが入院し、二人であたふたしたこと。
小学生のころの子どもたちを、よく旅行へ連れて行ってくれたこと。
中学生になってからの子どもの非行で、夜中に警察署へ子どもを二人で迎えにいったこと。
また別の子どもは不登校で、二人で夜な夜などうしていこうかと悩んだこと。
うつ病の私を、2週間ごとに毎回病院へ連れて行ってくれ、
そのおかげで、今ではすっかり良くなって投薬も通院もなくなったこと。
私の両親兄弟にも、また自分の両親兄弟にも優しくしていることとか、
次から次へと、普段は忘れていたような記憶まで、よみがえってくるのです。

一人の私は、
これからも結婚生活を続けて、彼の支えになりましょう、と言い、
別の私は、
裏切られたんだから、即別れなさい、とささやく。

結局私は、まだ今は夫を許せないけれど、
退院してくる夫は受け入れてみようという結論に至りました。
退院してから、ゆっくり考えていこうと決めたのでした。
あと一つ、彼に確かめたいこともあったからです。
それは、私以外のその人が、彼にとって特別な誰かなのかどうなのか。
それを、はっきりさせてから、次へ進もうと思いました。


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限られた感染経路

2011-07-06 15:28:46 | HIVとエイズ
そもそも、HIVはどうやって感染するのでしょうか。
私も、しっかりとした知識はありませんでした。
検査へ行った保健所で、
「これだけは知っておきたい!HIVエイズの基礎知識」(エイズ予防財団発行)
という小冊子を、無料で、もらって来ました。
それによると、HIVの感染経路は、3つに限られているということです。

1.性行為による感染
    もっとも多い感染経路。
    HIVは感染者の血液・精液・膣分泌液から、
    その性行為の相手の性器や肛門、口などの粘膜や傷口を通ってうつる。

2.血液を介しての感染
    HIVが存在する血液の輸血、
    または覚せい剤などの依存性薬物の回しうちによる注射器具の共用による感染。

3.母親から赤ちゃんへの母子感染
    母親がHIVに感染している場合、妊娠中・出産時・授乳などにより子どもに感染することがある。
 
この3つの感染経路しかないそうです。
感染を予防する方法もきちんとあるのです。

1.無防備な性行為はしないこと・・・性交・オーラルセックス(口腔性交)の際は、必ずコンドームを使う。
                 コンドームは最初から最後まできちんと装着する。
                 性器具の共用をしない。

2.血液を介して(血液にふれることや、血液が体内に入る)・・・注射器具の共用はしない。

3.母親から赤ちゃんへ(母子感染)・・・予防措置
                    [服薬、帝王切開、人工栄養(粉ミルク)での養育]を行う。

性行為での感染については、やはりコンドームの正しい使い方が大事なようです。
コンドームの使用は、梅毒・クラミジア・淋病などの性感染症(STI)の予防にも役立つそうです。

コンドームは、避妊のためだけではないのですね。知りませんでした。


HIV感染者・AIDS患者の状況(平成22年12月27日~平成23年3月27日)
(平成23年5月23日厚生労働省健康局疾病対策課の資料より引用抜粋)
 
   新規HIV感染者報告数は243件(前回報告303件、前年同時期227件)で、過去16位。
   そのうち男性226件、女性17件で、
   男性は前回(295件)より減少、前年同時期(207件)より増加、
   女性は前回(8件)より増加、前年同時期(20件)より減少。

   新規AIDS患者報告数は117件(前回報告119件、前年同時期94件)で、過去6位。
   そのうち男性107件、女性10件で、
   男性は前回(116件)より減少、前年同時期(91件)より増加、
   女性は前回(3件)および前年同時期(3件)より増加。

    HIV感染者とAIDS患者を合わせた新規報告数は360件で過去12位。

感染の危険が少しでもあると思われたら、自分や自分の大事な人のためにも、
夫のように発症して苦しむ前に、保健所で検査してほしいと強く強く思います。


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入院生活 5

2011-07-05 21:12:47 | 入院生活
実はこの時入院して2週間の間、まだ私は、
主治医と、夫の病気の話を、夫抜きでしていませんでした。
HIVに感染していることを、夫が私に話すことが出来なければ、
主治医が代わりに話してくれるということだったようですが、
夫は自分で私に話をしましたし、
私自身も、自分の検査結果がはっきりしてから、
夫の状態をきちんと主治医に聞いてみようと決めていたのでした。

検査の結果が出た日、 夫の様子を診察して、病室を出た主治医を追いかけ、
私のHIV検査の結果の用紙を渡しました。
「良かったですね。」
主治医は、20代後半から30代前半くらいの好青年で、
にこやかにそう言ってくれたのですが、
「良かったんでしょうか。」と言った私をどう思ったでしょう。

「夫は、どんな状態なのですか?」
「廊下で話すのはなんですから、こちらへどうぞ」
そう言われて通された部屋で、今までネットで知り得た情報の確認をしたのでした。

「夫は、いきなりエイズで、エイズを発症したのですか?」
「HIVとエイズの違いはわかりますか?」と主治医。
「はい。」と私。
「今は、来るもの(日和見感染症と解釈しました。カリニ肺炎以外にもたくさんあるのです。)を
片っ端からやっつける感じです。 細胞が疲弊してしまう可能性がありますが、がんばっていきましょう。」

確かこんな話をしたんだとは思うのです。
ほんの5分間くらいだったと思いますが、
私も怖くて、その時のことを良く覚えていないのです。
主治医は、鬼の形相の私が怖かったことでしょう。

そう、でも、「エイズではないですよ」とは、
やっぱり言われなかったのです。

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保健所でのHIV検査

2011-07-04 17:12:05 | HIVとエイズ
電話で予約してから5日後、私は、最寄の保健所(どこの保健所でも受けられます。)で、
匿名で、無料で、採血してから1時間くらいで結果の出る「即日検査」を受けることにしました。

検査までの5日間は、やはり感染しているかもしれないと思い、
夫婦で治療することになる未来を想像すると、眠れませんでした。
子どもたちには、何て言おうか、どうしたらいいんだろうと。
でも、まずはこの検査をしなければ、私たち夫婦は、先へ進めないのです。
結果が出れば、どっちに転んでも、次のステップへ行けるのです。

検査当日、保健所へ開始時間ギリギリに行った私は、9人目でした。
受付を済ませた(匿名)順番に、番号をもらいます。
ここからは、番号で呼ばれます。
後からも、次から次へと受付していました。
30人くらい集まったでしょうか。もっと、居たかもしれません。

カップルが、何組も居たことが、とても印象深かったです。
お互いを想いやり、二人で検査に来た若い子たちは、なんだかとても眩しかったです。
愛する人ができたら、二人でHIV検査へ行くという事が当たり前の世の中になったら、
素敵ですよね。
検査をしてから、そういう関係になるほうが、感染を防ぐためには今は大事なことかも。
「お互いのために、検査へ行こう」と言ってくれる彼氏・彼女が、かっこいいです。
いえ、私が知らなかっただけで、もうそういう世の中になっているのかもしれません。
今の学校教育では、小学校から性病・たばこ・アルコールの恐ろしさを教えていますから、
その教育の賜物なのでしょう。
我が子たちも、ぜひそうであって欲しいと強く思いました。

順番に呼ばれ、説明事項(感染したと思われる時から3か月過ぎているかどうかの確認や、擬陽性の話)
を聞いてから、採血をして、1時間後に番号で呼ばれ、個室に入って結果を聞きます。
私は、陰性でした。
HIVに感染していませんでした。
たまたま感染していなかっただけです。感染していても、おかしくなかった・・・
夫がHIVに感染していて、妻がその夫から感染している人も、この世の中にはきっといるはず。
そう考えると、心が痛み、手放しでは喜べない気がしました。

陰性の結果が書かれている用紙をもって、
私は、夫のいる病院へ向かいました。

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