彼のHIVと私の太陽

2011年夫がAIDSを発症しました。2018年無事です。

入院生活 4

2011-07-03 13:54:09 | 入院生活
転院してから、9日目。
いつものように病室へ行くと、夫は神妙な顔をして、
「大事な話があるんだ。ここでは話せないから、コーヒー飲みにいこうか」と言いました。
「うん、わかった。」と黙って後をついていき、
病院の中の喫茶店へ行く途中のエレベーターの中で彼は言いました。
「カリニ肺炎のことは、ネットで調べたよね。」
「うん、調べたよ。」と私。
「じゃあ、いろいろわかってるね。」と夫。
あ~、そうか、エイズの事を気にしてるんだな。
そう思った私は、「そうじゃなくても、カリニ肺炎になるって。」と、努めて明るく言いました。
夫は、黙ってしまいました。
でも、まだ私はこの時も気がついていないのです。
気がついてあげられたら、彼は話すのに楽だったでしょうに・・・。

喫茶店でコーヒーを飲みながら、夫は自分が持ってきたメモ帳に、私に見えるように文字を書きました。
ペンを持つ手が、ひどく震えている。

HIV

絞りだすような声で、「これなんだよ。ごめん。」。
え~、ごめんって、何言ってるの、この人。

昨日、担当医から話があったということ。
自分が感染する事実が、過去あったということ。
私も、検査を受けたほうがいいと、担当医に言われたこと。
今は、エイズ=死ではないほど、医学が発達していること。

次から次へと話す彼に、私は、「ちょっと待って。何言ってるの。」。
涙がどんどん出てくるのを、止められませんでした。
頭の中は真っ白で何も考えていないのに、涙が勝手に出てきました。

彼がエイズで死んでしまうと思って泣いているのか、
私以外の誰かと関係を持ったということがわかったからなのか、どちらだったんだろう。

きっと、どっちもだ。

「今日は、もう帰る。」
この時は、この病気に対しての無知から、ひどく落ち込んだのでした。
そして次の日は、彼のいる病院へ行けませんでした。


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