びわこ学院大学・同大学短期大学部(沖田行司学長)はこのほど、滋賀県特有の町屋の価値を広く知ってもらおうと、「滋賀県の町なみ 地域の歴史と生活の器を知る」を発刊し、地域貢献の一環として滋賀県内全ての小中学校・高校と公立図書館、教育委員会、観光協会などに寄贈した。
同書は、びわこ学院大学短期大学部の日本史・建築史・都市史専門の丸山俊明教授らが、滋賀県内の宿場町や在郷町であった歴史的な町並みを紹介したもので、「開発で町屋のある風景が失われつつある中、その価値を知る教育に少しでも役立てて欲しい」と話している。
文科省の指導要録では、町屋や町並みが地域の「生活の器」であったとして教材に位置付けられているが、これまで滋賀県内の町並みの特徴やその形成過程、歴史的背景を取り上げた書籍はなく、学校教育で「生活」、「社会」、「歴史」を教える際、京都の町屋を取り上げた通説しか教えられなかった。
本書では江戸時代の近江国にあった多様な支配形態や建築規制の実態など、従来は知られていなかった内容を紹介している。
例えば、近江の町屋の特徴である、
▽しっくいで塗りこめて防火性能を高めた塗家(ぬりや)、
▽京にはなかった草ぶき町屋、
▽自立を象徴するウダツや袖ウダツ
が形成された歴史的な背景や要因をわかりやすく解説している。
丸山教授は、「塗屋は財政的な余裕がなければできず、ウダツは富の象徴として設けた。このことから、近江商人が領主のバックアップのもと全国に雄飛し、富を築いた繁栄ぶりがうかがえる」と話している。
丸山教授は、「塗屋は財政的な余裕がなければできず、ウダツは富の象徴として設けた。このことから、近江商人が領主のバックアップのもと全国に雄飛し、富を築いた繁栄ぶりがうかがえる」と話している。
<滋賀報知新聞より>