放射線治療と医学物理

放射線治療、特に医学物理に関する個人的記録

線量率効果の理論的考察と臨床応用

2008年05月11日 | Radiological Biology
線量率効果の理論的考察と臨床応用 
  高線量率と低線量率の比較
茂松直之等, 臨床放射線, Vol.40, No.6, 1995

放射線治療の分野では、0.1cGy/minから、数Gy/min程度まで及ぶ広い範囲の線量率の放射線が使われています。

LINACにおいては、エネルギーによっても選択できる線量率は異なりますが、いったいがん治療に最適な線量率とはどの程度なのか?

たとえば、LINACの線量率400cGy/min at SADから1000cGy/min at SADに変更した際には治療効果は変わるのか?

その解決の一助として、linear-quadric modelを使用して著者は丁寧に解説しています。

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実験的に抗腫瘍効果に関連する(α/β)E
および
慢性障害に関与する(α/β)Lの比はおよそ2:1とされており、
腫瘍線量と正常組織線量の比をRとすると、
R<(α/β)E/(α/β)Lとなる。

したがって、正常組織線量が腫瘍線量の1/2以下にできる条件が確立できれば、高線量率照射でも障害を少なく治療できることとなる。

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最近では照射技術の進化により、正常細胞の線量を低減させ腫瘍細胞の線量を増加させることが可能となってきた。
ゆえに更なる高線量率治療も可能かもしれない。

一方でLINACでは線量率可変に関連するAcceptance test/criteriaも記されている。
線量率のQAもないがしろにしないように心がけたい。