百害あって一利なしの日本の報道。
その一つとして
「現代ビジネス 」という
ニュースサイトにある
「『対中国包囲網』がついに完成!四面楚歌に追いこまれた習近平の『次の一手』とは?」
(10月12日(月)11時1分配信)
という記事を上げられる。
onodekita@onodekita さんが
―― どこをどう考えたら、こんな記事が書けるのか。国連で見放されたニッポン。現実を見ろ〔6:35 - 2015年10月13日 〕――
とコメントされている。
普通に考えてそうだろうな。
「現代ビジネス 」で
『対中国包囲網』として捉えている
TPPという
条約を自国が
米国グローバル企業の餌食になる
という面が
忘れさられている。
いわば、
第二次大戦当時の
ブロック経済を成り立たせるものとして
この条約を受け取っているようだ。
しかし、その根拠ゼロだ。
願望が
事実を規定するような
発想で
記事が書かれている。
男の子がオナニーをするとき、
好きなように思い描く女性との関係としか
言いようがない。
こういう戯けた思いこみを
記事として
書いているニュースサイトがあった
という証拠として、
転載しておくことにする。
〔資料〕
「「対中国包囲網」がついに完成!四面楚歌に追いこまれた習近平の「次の一手」とは?」
現代ビジネス (10月12日(月)11時1分配信)
☆ 記事URL: http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151012-00045761-gendaibiz-int&p=1
「弱り目に祟り目」の習近平主席
国家、あるいは国家を背負う政治家には、「流れ」というものがある。ある時には、「勝ち将棋鬼のごとし」と言うように、何をやっても面白いようにうまくいく。まるで世界中の「運」という磁力を、掌中に収めているような錯覚を覚えるほどだ。
ところが逆に、「弱り目に祟り目」と言うように、打つ手打つ手がうまくいかないこともある。まるで水流に逆行するサケのように、このような時の周囲からの「抵抗感」は半端ではない。まさに四面楚歌となりがちだ。
2015年後半の中国及び習近平主席を見ていると、どうも後者の「流れ」に入ったように思えてならないのである。
中国経済は、株価暴落、過剰投資、債務過多、消費低迷などの影響で、減速感が強まっている。そこで状況を打開すべく、習近平主席は9月下旬に訪米したが、国賓待遇のはずなのに、まるで「国賊待遇」のような扱いを受けた。
その結果、期待していたBIT(米中投資協定)を締結できなかった。それどころか習近平主席は、南シナ海とサイバーテロ問題で轟々たる非難を浴び、オバマ大統領との米中首脳会談を終えた後、共同声明すら出せなかったのだ。
散々たる思いで帰国すると、今度はVWの排ガス規制偽装問題が火を噴いた。中国の最大の貿易相手はEUで、中でもその中心がドイツで、ドイツの中でも中心がVWである。
VWは2014年の全世界での販売台数1016万台中、中国で368万台も販売していた。実に全体の3分の1を超える量だ。中国はアメリカに右の頬を引っぱたかれた上に、EUから左の頬を引っぱたかれたようなものだ。
日米による経済的な「中国包囲網」が完成
そして先週、アジア太平洋地域から「次なる津波」が押し寄せた。10月5日に、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)が大筋合意に達したのである。オバマ大統領は同日、「中国ではなく、われわれが世界経済のルールを作るのだ」と、語気を強めて語った。
安倍首相も10月6日、こう力説した。
「TPPは、日本とアメリカがリードして、アジア太平洋に自由と繁栄の海を築き上げるものです。経済面での地域の『法の支配』を抜本的に強化するものであり、戦略的にも非常に大きな意義があります」
TPPとは、日米が中心になった経済的な「中国包囲網」に他ならないことを、図らずも日米両首脳が吐露したようなものだった。
今回の大筋合意へ至るTPPの交渉過程を振り返ると、主に「三つの流れ」があったことが分かる。「第一の流れ」は、単純な多国間貿易交渉としてのTPPである。
TPPはもともと、2002年のメキシコAPEC(アジア太平洋経済協力会議)で、シンガポール、ニュージーランド、チリの3ヵ国で始めたEPA(経済連携協定)交渉が源流である。2005年に、シンガポールと並ぶ「ASEANの先進国」ブルネイも加わり、2006年5月に4ヵ国で発効した。
これによって4ヵ国の貿易において、関税の9割が撤廃された。この段階までは、いわば小国同士がまとめて締結した「共同EPA」に過ぎなかったのだ。
続いて「第二の流れ」は、アメリカが、ブレトンウッズ体制の存続のために利用したことだった。
2008年9月のリーマン・ショックで、金融危機に陥ったアメリカは、すぐにTPPへの参加を表明した。TPPを利用して、アメリカが中心となった21世紀の自由貿易体制を再構築しようとしたのである。
アメリカの呼びかけに、オーストラリア、ベトナム、ペルー、マレーシアが応じた。2010年11月の横浜APECでは、オバマ米大統領が9ヵ国の議長を務め、早期の交渉妥結を図ることを決議したのだった。
2012年11月に、アメリカとNAFTA(北米自由貿易協定)を結んでいるカナダとメキシコも合流。同年末の時点で、交渉参加国は11ヵ国となった。ここまでが、「第二の流れ」である。
そして「第三の流れ」は、2013年7月に、安倍晋三政権下の日本が参加表明したことだ。安倍政権の目的はズバリ、「アメリカと組んで経済分野で中国包囲網を築く」ことだった。
安倍政権は中国とどう向き合うのか
安倍首相は第1次政権の2006年末、「自由と繁栄の弧」という外交戦略を打ち出した。これは、自由と民主主義という同じ理念を持つ国々が、そうでない国(=中国)を海上から包囲することによって繁栄を築こうというものだった。
具体的には、日本、韓国、フィリピン、オーストラリア、タイ、インド、トルコなどを結ぶ「中国包囲網」を、日本が主導権を取って築く構想だ。もちろん、そのバックに控えるのはアメリカである。
だが、この「自由と繁栄の弧」構想は、未完に終わる。その最大の理由は、中国の周辺国の多くは、すでに中国が最大の貿易相手国か、もしくは近未来に最大の貿易相手国となることが見込まれていたからだ。
この頃からアジアの国々では、国防はアメリカに依存し、経済は中国に依存するという傾向が顕著になってきた。そのため中国の周辺国は、中国を怒らせるような戦略に与することは望まなかったのだ。
かつ2007年9月に、安倍首相の持病である潰瘍性大腸炎が悪化し、第1次安倍政権自体が崩壊してしまった。そのことで、「自由と繁栄の弧」は幻に終わった。
だが安倍首相は、諦めたわけではなかった。2012年12月に第2次安倍政権を発足させると、今度はTPPを中国包囲網に利用しようと考えたのだった。
私は安倍政権の政策に詳しい政府関係者から聞いたことがあるが、第2次安倍政権が発足した時、外交問題に関して政府内部で一番議論になったのは、「中国とどう向き合うか」という問題だったという。中国では同時期の2012年11月に、強硬派の習近平が、中国共産党トップの党中央委員会総書記に就任していたからだ。
その政府関係者は、次のように述べた。
「大まかに言えば、安倍政権には3つの選択肢があった。第一は、中国に従属する。これは古代アジアの冊封体制のように、中国に朝貢するものだ。メリットは、習近平政権と友好関係が築け、中国ビジネスの恩恵を受けられる。デメリットは、アジアにおける中国の覇権を認めてしまうことだ。
第二は、中国に対抗していく。この場合のメリットは、過去150年間にわたってアジアを牽引してきた日本の自負が保たれること。デメリットは、中国との対立による経済的損失と、軍事的緊張だ。そして何より、この選択肢の成立は、過去よりもさらに強固な日米同盟が築けるか否かにかかっていた。
第三の選択肢は、中国を無視する。これは、江戸幕府が取っていたような中国に対する鎖国政策だ。
まず第三の選択肢は、21世紀にはふさわしくない。次に第一の選択肢は、安倍首相を始め、『悪夢の選択』と呼んでいた。そこで第二の選択に舵を切っていくことにした。そのためには、アメリカを中心としたアジア太平洋地域の経済の新秩序であるTPPに、一刻も早く加わる必要があった」
そこで安倍首相は、2013年2月22日にホワイトハウスで開かれたオバマ大統領との初の日米首脳会談で、「7月の参院選が終わったら、すぐにTPPに参加する」と約束したのだった。参院選を5ヵ月後に控えていたため、自民党の支持層が多い農家に気を遣ったのである。日本国内にとってTPPへの参加とは、一言で言えば、農業を犠牲にして工業の発展を選択するものだったからだ。
2013年当時のアジアの国々は、前述のように軍事的にはアメリカに依存し、経済的には中国に依存していた。そのため日本は東アジア地域を、軍事面だけでなく、経済的にもアメリカと日本に依存させていくようなTPP体制を構築しようとしたのだった。
アメリカに「新たな大国関係」を提案した習近平主席
こうした日本のTPP参加表明は、2013年3月に国家主席に就任し、正式に政権を発足させた習近平主席にとって、大きな脅威と映った。そこで習近平政権は、経済面でますます周辺諸国を中国に依存させていくことに腐心したのだった。
具体的に習近平政権は、主に3つの対抗策を取った。第一は、RCEP(包括的経済連携構想)の早期締結を目指したことである。
RCEPは、東アジア共同体構想に入っている16ヵ国、すなわちASEAN10ヵ国と、日本、韓国、中国、インド、オーストラリア、ニュージーランドによる自由貿易協定である。
この協定が実現すれば、人口で世界の半数、GDPと貿易額で世界の3割を占める広域経済圏が、アジアに出現することになる。RCEPの最大のポイントは、アメリカが参加していないことだ。
RCEPは2011年11月に、ASEANが提唱して始まった。習近平政権は、アジア最大の経済大国として、このRCEP交渉の主導権を握り、2013年5月にブルネイで交渉の第1回会合を開いたのだった。
ところが、この初会合は、前途多難を予想させるものだったという。当時担当していた日本の経済産業省関係者が、次のように述懐する。
「この時は、ハイレベルの実務者による貿易交渉委員会に加えて、物品貿易、サービス貿易、投資に関する作業部会を開催し、交渉の段取りや分野といった大枠を話し合った。だが、議論を仕切ろうとする中国は、中国の基幹産業を独占している国有企業の民営化や自由化については、絶対にノーだと突っぱねた。
日本も、非参加国のアメリカに気兼ねして積極的ではなかった。そもそも経済産業省では、TPPの交渉グループとRCEPの交渉グループが同じメンバーで、安倍首相官邸や茂木敏充大臣からは、TPPを優先するよう指示が出ていたのだ」
世界第2の経済大国と第3の経済大国がこのような調子では、交渉が順調に進んでいくはずもなかった。習近平政権が当初期待していたRCEPは、とてもTPPより先に締結される見込みがなくなってきたのである。
習近平政権が、TPPへの対抗策として取った二つ目の措置は、オバマ政権との直接交渉だった。
政権発足から3ヵ月近くを経た6月7日、8日に、カリフォルニア州のアンナバーグ農園で、オバマ大統領と習近平主席の初めての米中首脳会談が開かれた。
習近平主席は、次のように述べた。
「ここは太平洋から近く、太平洋の向こう側は中国だ。太平洋には、中国とアメリカという両大国を包み込む広大な空間がある。
今日、オバマ大統領と会談を行う主要目的は、『太平洋を跨ぐ提携』の青写真を作ることだ。中米双方は、『新たな大国関係』の構築に向けて、共に進んでいこうではないか」
この時、習近平主席は満を持して、「新たな大国関係」という新概念を提起した。習近平主席はオバマ大統領に対して、随分と柔らかい言い回しをしたが、要は言いたいのは次のようなことだった。
「世界は、中国とアメリカの2大国が牽引していく時代(G2時代)を迎えた。これからは、太平洋の東側、すなわちアメリカ大陸とヨーロッパは、アメリカが責任を持って管理する。そして太平洋の西側、すなわち東アジアは、中国が責任を持って管理する。そのような『新たな大国関係』を築こうではないか」
習近平主席は、この「新たな大国関係」という概念を、オバマ大統領に認めさせようとしたのだった。それに対し、オバマ大統領は即答を避けた。
アメリカの外交関係者が語る。
「この時のわれわれの最優先事項は、習近平新政権と何かを決めることではなくて、習近平という新指導者について見極めることだった」
アメリカとの直接交渉でも思い通りに行かなかった習近平政権は、第三の手段に出た。それは、『一帯一路』(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)の構築と、これを推進するためにAIIB(アジアインフラ投資銀行)を設立することだった。2013年の9月から10月にかけて、習近平主席は立て続けに、これらの構想を外遊先で発表した。
シルクロード経済ベルトは、中国を起点にして、ヨーロッパへ至るユーラシア大陸のインフラ整備を進めるという構想で、その中心は北京とモスクワを結ぶ高速鉄道の敷設である。
また、21世紀海上シルクロードは、2015年末に6億人の経済統合を果たすASEANを取り込むことに、主軸が置かれていた。そしてこれらを推進するために、日本とアメリカが中心になって1966年に設立したADB(アジア開発銀行)に対抗するAIIBを、2015年末に北京に設立することにしたのである。
つまりこれら一連の構想は、アメリカも日本も頼りにならないなら、自分の道は自分で切り拓いていくという、アジア最大の経済大国としての中国の自負だった。実際、2015年12月には、57ヵ国が参加して、AIIBが設立される予定だ。
中国は「マイナスの流れ」を払拭できるのか
このようにTPP交渉は、「単純な多国間貿易交渉 → ブレトンウッズ体制維持のための交渉 → 中国の台頭を阻止するための交渉」と、漂流を続けた。前出の日本政府関係者によれば、12ヵ国全体のGDPの81%を占める日米の結束と、残り10ヵ国が日米にうまく乗っかってくれたことが、大筋合意につながった勝因だという。
「決定的だったのが、中国軍が南シナ海を埋め立てて軍用飛行場を作り始めたことと、アメリカに対してサイバーテロを起こしたことだった。南シナ海の埋立地に関しては、かつてアメリカと戦争したベトナムまでもが、必死にアメリカ軍を頼った。日本は、4月末に安倍首相が8日間も訪米して、中国の脅威を訴えた。
サイバーテロに関しては、7月9日に、アメリカ連邦政府の職員ら2000万人もの個人情報が、サイバーテロに遭って流出した。米国防総省はこれを中国人民解放軍の仕業と断定して、すぐさま中国政府のITシステムに対して報復のサイバー攻撃を行ったと聞いている」
このような状況下で、TPP参加12ヵ国を牽引するアメリカと日本は、何とか妥結させようと、互いに譲歩する姿勢を見せた。9月26日から米アトランタのウエスティンホテルで始まった交渉の最終ラウンドは、延長、再延長、再々延長し、10月5日、ついに12ヵ国が大筋合意に達したのだった。
これまで書いてきたように、安倍政権はTPPを、単なる貿易協定とは見ていない。前出の政府関係者は、改めて語った。
「日本政府はこれまで再三、アメリカ政府に、TPP交渉の首席代表を、フロマン米通商代表から、国防長官かCIA(米中央情報局)長官に換えてほしいと要請してきた。それはTPPが、今後日本が東アジアで中国に対抗していく『武器』だという認識を持っているからだ。
日本は9月に安保法制を整備して、軍事的に中国に対抗していく法整備を行った。続いて10月に、経済的に中国に対抗していくTPPというシステムを整えた。これからはこの『二つの武器』を駆使して、アジアにおける中国の覇権取りを阻止していく」
これに対して中国では、大筋合意が発表された10月5日以降、TPPに関して様々な見解が発表されている。それらを整理すると、「TPPを恐れるなかれ」と鼓舞するものが多い。なぜ恐れる必要がないかという根拠になっているのは、主に次の5点だ。
1)TPPが発効しても中国の貿易への影響は少ない
中国には世界最大14億人の巨大市場がある。また、多くの熟練工、先端的設備、豊富な部品供給体制があり、世界の工場としての地位も揺るがない。
2)TPPが大筋合意したからといって、アメリカで批准されるとは限らない
大筋合意が発表されたとたん、アメリカでは与党・民主党も野党・共和党も一斉に反対論が噴出している。来年は大統領選イヤーであり、反対論はますます強くなることが予想される。
3)TPPが発効したからといって、直ちには貿易システムは変わらない
例えば、アメリカは25年以内に日本製自動車の関税2.5%を撤廃するとした。だが25年も先の世界など、誰にも想像できない。
4)中国は個別に各国と自由貿易協定を結んでいる
TPP加盟国で言えば、2008年にニュージーランドをFTAを結んだのを皮切りに、ペルー、シンガポール、オーストラリアとFTAを結んでおり、他の国とも個別交渉を進めている。
5)中国には「一帯一路」とAIIB、自由貿易区がある
習近平主席は2013年秋に「一帯一路」(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)と、これらを推進するためのAIIB(アジアインフラ投資銀行)構想を発表しており、AIIBは今年末に、57ヵ国が参加して北京で設立される。また、2年前に始めた上海自由貿易区や、今年発表した天津、福建などの自由貿易区もある。
***
習近平主席は、10月20日から、ドイツと並ぶ「EUの盟友」と位置づけているイギリスを、国賓として訪問する。冒頭述べた自身と中国に吹く「マイナスの流れ」をどこまで払拭できるのか、お手並み拝見である。
その一つとして
「現代ビジネス 」という
ニュースサイトにある
「『対中国包囲網』がついに完成!四面楚歌に追いこまれた習近平の『次の一手』とは?」
(10月12日(月)11時1分配信)
という記事を上げられる。
onodekita@onodekita さんが
―― どこをどう考えたら、こんな記事が書けるのか。国連で見放されたニッポン。現実を見ろ〔6:35 - 2015年10月13日 〕――
とコメントされている。
普通に考えてそうだろうな。
「現代ビジネス 」で
『対中国包囲網』として捉えている
TPPという
条約を自国が
米国グローバル企業の餌食になる
という面が
忘れさられている。
いわば、
第二次大戦当時の
ブロック経済を成り立たせるものとして
この条約を受け取っているようだ。
しかし、その根拠ゼロだ。
願望が
事実を規定するような
発想で
記事が書かれている。
男の子がオナニーをするとき、
好きなように思い描く女性との関係としか
言いようがない。
こういう戯けた思いこみを
記事として
書いているニュースサイトがあった
という証拠として、
転載しておくことにする。
〔資料〕
「「対中国包囲網」がついに完成!四面楚歌に追いこまれた習近平の「次の一手」とは?」
現代ビジネス (10月12日(月)11時1分配信)
☆ 記事URL: http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151012-00045761-gendaibiz-int&p=1
「弱り目に祟り目」の習近平主席
国家、あるいは国家を背負う政治家には、「流れ」というものがある。ある時には、「勝ち将棋鬼のごとし」と言うように、何をやっても面白いようにうまくいく。まるで世界中の「運」という磁力を、掌中に収めているような錯覚を覚えるほどだ。
ところが逆に、「弱り目に祟り目」と言うように、打つ手打つ手がうまくいかないこともある。まるで水流に逆行するサケのように、このような時の周囲からの「抵抗感」は半端ではない。まさに四面楚歌となりがちだ。
2015年後半の中国及び習近平主席を見ていると、どうも後者の「流れ」に入ったように思えてならないのである。
中国経済は、株価暴落、過剰投資、債務過多、消費低迷などの影響で、減速感が強まっている。そこで状況を打開すべく、習近平主席は9月下旬に訪米したが、国賓待遇のはずなのに、まるで「国賊待遇」のような扱いを受けた。
その結果、期待していたBIT(米中投資協定)を締結できなかった。それどころか習近平主席は、南シナ海とサイバーテロ問題で轟々たる非難を浴び、オバマ大統領との米中首脳会談を終えた後、共同声明すら出せなかったのだ。
散々たる思いで帰国すると、今度はVWの排ガス規制偽装問題が火を噴いた。中国の最大の貿易相手はEUで、中でもその中心がドイツで、ドイツの中でも中心がVWである。
VWは2014年の全世界での販売台数1016万台中、中国で368万台も販売していた。実に全体の3分の1を超える量だ。中国はアメリカに右の頬を引っぱたかれた上に、EUから左の頬を引っぱたかれたようなものだ。
日米による経済的な「中国包囲網」が完成
そして先週、アジア太平洋地域から「次なる津波」が押し寄せた。10月5日に、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)が大筋合意に達したのである。オバマ大統領は同日、「中国ではなく、われわれが世界経済のルールを作るのだ」と、語気を強めて語った。
安倍首相も10月6日、こう力説した。
「TPPは、日本とアメリカがリードして、アジア太平洋に自由と繁栄の海を築き上げるものです。経済面での地域の『法の支配』を抜本的に強化するものであり、戦略的にも非常に大きな意義があります」
TPPとは、日米が中心になった経済的な「中国包囲網」に他ならないことを、図らずも日米両首脳が吐露したようなものだった。
今回の大筋合意へ至るTPPの交渉過程を振り返ると、主に「三つの流れ」があったことが分かる。「第一の流れ」は、単純な多国間貿易交渉としてのTPPである。
TPPはもともと、2002年のメキシコAPEC(アジア太平洋経済協力会議)で、シンガポール、ニュージーランド、チリの3ヵ国で始めたEPA(経済連携協定)交渉が源流である。2005年に、シンガポールと並ぶ「ASEANの先進国」ブルネイも加わり、2006年5月に4ヵ国で発効した。
これによって4ヵ国の貿易において、関税の9割が撤廃された。この段階までは、いわば小国同士がまとめて締結した「共同EPA」に過ぎなかったのだ。
続いて「第二の流れ」は、アメリカが、ブレトンウッズ体制の存続のために利用したことだった。
2008年9月のリーマン・ショックで、金融危機に陥ったアメリカは、すぐにTPPへの参加を表明した。TPPを利用して、アメリカが中心となった21世紀の自由貿易体制を再構築しようとしたのである。
アメリカの呼びかけに、オーストラリア、ベトナム、ペルー、マレーシアが応じた。2010年11月の横浜APECでは、オバマ米大統領が9ヵ国の議長を務め、早期の交渉妥結を図ることを決議したのだった。
2012年11月に、アメリカとNAFTA(北米自由貿易協定)を結んでいるカナダとメキシコも合流。同年末の時点で、交渉参加国は11ヵ国となった。ここまでが、「第二の流れ」である。
そして「第三の流れ」は、2013年7月に、安倍晋三政権下の日本が参加表明したことだ。安倍政権の目的はズバリ、「アメリカと組んで経済分野で中国包囲網を築く」ことだった。
安倍政権は中国とどう向き合うのか
安倍首相は第1次政権の2006年末、「自由と繁栄の弧」という外交戦略を打ち出した。これは、自由と民主主義という同じ理念を持つ国々が、そうでない国(=中国)を海上から包囲することによって繁栄を築こうというものだった。
具体的には、日本、韓国、フィリピン、オーストラリア、タイ、インド、トルコなどを結ぶ「中国包囲網」を、日本が主導権を取って築く構想だ。もちろん、そのバックに控えるのはアメリカである。
だが、この「自由と繁栄の弧」構想は、未完に終わる。その最大の理由は、中国の周辺国の多くは、すでに中国が最大の貿易相手国か、もしくは近未来に最大の貿易相手国となることが見込まれていたからだ。
この頃からアジアの国々では、国防はアメリカに依存し、経済は中国に依存するという傾向が顕著になってきた。そのため中国の周辺国は、中国を怒らせるような戦略に与することは望まなかったのだ。
かつ2007年9月に、安倍首相の持病である潰瘍性大腸炎が悪化し、第1次安倍政権自体が崩壊してしまった。そのことで、「自由と繁栄の弧」は幻に終わった。
だが安倍首相は、諦めたわけではなかった。2012年12月に第2次安倍政権を発足させると、今度はTPPを中国包囲網に利用しようと考えたのだった。
私は安倍政権の政策に詳しい政府関係者から聞いたことがあるが、第2次安倍政権が発足した時、外交問題に関して政府内部で一番議論になったのは、「中国とどう向き合うか」という問題だったという。中国では同時期の2012年11月に、強硬派の習近平が、中国共産党トップの党中央委員会総書記に就任していたからだ。
その政府関係者は、次のように述べた。
「大まかに言えば、安倍政権には3つの選択肢があった。第一は、中国に従属する。これは古代アジアの冊封体制のように、中国に朝貢するものだ。メリットは、習近平政権と友好関係が築け、中国ビジネスの恩恵を受けられる。デメリットは、アジアにおける中国の覇権を認めてしまうことだ。
第二は、中国に対抗していく。この場合のメリットは、過去150年間にわたってアジアを牽引してきた日本の自負が保たれること。デメリットは、中国との対立による経済的損失と、軍事的緊張だ。そして何より、この選択肢の成立は、過去よりもさらに強固な日米同盟が築けるか否かにかかっていた。
第三の選択肢は、中国を無視する。これは、江戸幕府が取っていたような中国に対する鎖国政策だ。
まず第三の選択肢は、21世紀にはふさわしくない。次に第一の選択肢は、安倍首相を始め、『悪夢の選択』と呼んでいた。そこで第二の選択に舵を切っていくことにした。そのためには、アメリカを中心としたアジア太平洋地域の経済の新秩序であるTPPに、一刻も早く加わる必要があった」
そこで安倍首相は、2013年2月22日にホワイトハウスで開かれたオバマ大統領との初の日米首脳会談で、「7月の参院選が終わったら、すぐにTPPに参加する」と約束したのだった。参院選を5ヵ月後に控えていたため、自民党の支持層が多い農家に気を遣ったのである。日本国内にとってTPPへの参加とは、一言で言えば、農業を犠牲にして工業の発展を選択するものだったからだ。
2013年当時のアジアの国々は、前述のように軍事的にはアメリカに依存し、経済的には中国に依存していた。そのため日本は東アジア地域を、軍事面だけでなく、経済的にもアメリカと日本に依存させていくようなTPP体制を構築しようとしたのだった。
アメリカに「新たな大国関係」を提案した習近平主席
こうした日本のTPP参加表明は、2013年3月に国家主席に就任し、正式に政権を発足させた習近平主席にとって、大きな脅威と映った。そこで習近平政権は、経済面でますます周辺諸国を中国に依存させていくことに腐心したのだった。
具体的に習近平政権は、主に3つの対抗策を取った。第一は、RCEP(包括的経済連携構想)の早期締結を目指したことである。
RCEPは、東アジア共同体構想に入っている16ヵ国、すなわちASEAN10ヵ国と、日本、韓国、中国、インド、オーストラリア、ニュージーランドによる自由貿易協定である。
この協定が実現すれば、人口で世界の半数、GDPと貿易額で世界の3割を占める広域経済圏が、アジアに出現することになる。RCEPの最大のポイントは、アメリカが参加していないことだ。
RCEPは2011年11月に、ASEANが提唱して始まった。習近平政権は、アジア最大の経済大国として、このRCEP交渉の主導権を握り、2013年5月にブルネイで交渉の第1回会合を開いたのだった。
ところが、この初会合は、前途多難を予想させるものだったという。当時担当していた日本の経済産業省関係者が、次のように述懐する。
「この時は、ハイレベルの実務者による貿易交渉委員会に加えて、物品貿易、サービス貿易、投資に関する作業部会を開催し、交渉の段取りや分野といった大枠を話し合った。だが、議論を仕切ろうとする中国は、中国の基幹産業を独占している国有企業の民営化や自由化については、絶対にノーだと突っぱねた。
日本も、非参加国のアメリカに気兼ねして積極的ではなかった。そもそも経済産業省では、TPPの交渉グループとRCEPの交渉グループが同じメンバーで、安倍首相官邸や茂木敏充大臣からは、TPPを優先するよう指示が出ていたのだ」
世界第2の経済大国と第3の経済大国がこのような調子では、交渉が順調に進んでいくはずもなかった。習近平政権が当初期待していたRCEPは、とてもTPPより先に締結される見込みがなくなってきたのである。
習近平政権が、TPPへの対抗策として取った二つ目の措置は、オバマ政権との直接交渉だった。
政権発足から3ヵ月近くを経た6月7日、8日に、カリフォルニア州のアンナバーグ農園で、オバマ大統領と習近平主席の初めての米中首脳会談が開かれた。
習近平主席は、次のように述べた。
「ここは太平洋から近く、太平洋の向こう側は中国だ。太平洋には、中国とアメリカという両大国を包み込む広大な空間がある。
今日、オバマ大統領と会談を行う主要目的は、『太平洋を跨ぐ提携』の青写真を作ることだ。中米双方は、『新たな大国関係』の構築に向けて、共に進んでいこうではないか」
この時、習近平主席は満を持して、「新たな大国関係」という新概念を提起した。習近平主席はオバマ大統領に対して、随分と柔らかい言い回しをしたが、要は言いたいのは次のようなことだった。
「世界は、中国とアメリカの2大国が牽引していく時代(G2時代)を迎えた。これからは、太平洋の東側、すなわちアメリカ大陸とヨーロッパは、アメリカが責任を持って管理する。そして太平洋の西側、すなわち東アジアは、中国が責任を持って管理する。そのような『新たな大国関係』を築こうではないか」
習近平主席は、この「新たな大国関係」という概念を、オバマ大統領に認めさせようとしたのだった。それに対し、オバマ大統領は即答を避けた。
アメリカの外交関係者が語る。
「この時のわれわれの最優先事項は、習近平新政権と何かを決めることではなくて、習近平という新指導者について見極めることだった」
アメリカとの直接交渉でも思い通りに行かなかった習近平政権は、第三の手段に出た。それは、『一帯一路』(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)の構築と、これを推進するためにAIIB(アジアインフラ投資銀行)を設立することだった。2013年の9月から10月にかけて、習近平主席は立て続けに、これらの構想を外遊先で発表した。
シルクロード経済ベルトは、中国を起点にして、ヨーロッパへ至るユーラシア大陸のインフラ整備を進めるという構想で、その中心は北京とモスクワを結ぶ高速鉄道の敷設である。
また、21世紀海上シルクロードは、2015年末に6億人の経済統合を果たすASEANを取り込むことに、主軸が置かれていた。そしてこれらを推進するために、日本とアメリカが中心になって1966年に設立したADB(アジア開発銀行)に対抗するAIIBを、2015年末に北京に設立することにしたのである。
つまりこれら一連の構想は、アメリカも日本も頼りにならないなら、自分の道は自分で切り拓いていくという、アジア最大の経済大国としての中国の自負だった。実際、2015年12月には、57ヵ国が参加して、AIIBが設立される予定だ。
中国は「マイナスの流れ」を払拭できるのか
このようにTPP交渉は、「単純な多国間貿易交渉 → ブレトンウッズ体制維持のための交渉 → 中国の台頭を阻止するための交渉」と、漂流を続けた。前出の日本政府関係者によれば、12ヵ国全体のGDPの81%を占める日米の結束と、残り10ヵ国が日米にうまく乗っかってくれたことが、大筋合意につながった勝因だという。
「決定的だったのが、中国軍が南シナ海を埋め立てて軍用飛行場を作り始めたことと、アメリカに対してサイバーテロを起こしたことだった。南シナ海の埋立地に関しては、かつてアメリカと戦争したベトナムまでもが、必死にアメリカ軍を頼った。日本は、4月末に安倍首相が8日間も訪米して、中国の脅威を訴えた。
サイバーテロに関しては、7月9日に、アメリカ連邦政府の職員ら2000万人もの個人情報が、サイバーテロに遭って流出した。米国防総省はこれを中国人民解放軍の仕業と断定して、すぐさま中国政府のITシステムに対して報復のサイバー攻撃を行ったと聞いている」
このような状況下で、TPP参加12ヵ国を牽引するアメリカと日本は、何とか妥結させようと、互いに譲歩する姿勢を見せた。9月26日から米アトランタのウエスティンホテルで始まった交渉の最終ラウンドは、延長、再延長、再々延長し、10月5日、ついに12ヵ国が大筋合意に達したのだった。
これまで書いてきたように、安倍政権はTPPを、単なる貿易協定とは見ていない。前出の政府関係者は、改めて語った。
「日本政府はこれまで再三、アメリカ政府に、TPP交渉の首席代表を、フロマン米通商代表から、国防長官かCIA(米中央情報局)長官に換えてほしいと要請してきた。それはTPPが、今後日本が東アジアで中国に対抗していく『武器』だという認識を持っているからだ。
日本は9月に安保法制を整備して、軍事的に中国に対抗していく法整備を行った。続いて10月に、経済的に中国に対抗していくTPPというシステムを整えた。これからはこの『二つの武器』を駆使して、アジアにおける中国の覇権取りを阻止していく」
これに対して中国では、大筋合意が発表された10月5日以降、TPPに関して様々な見解が発表されている。それらを整理すると、「TPPを恐れるなかれ」と鼓舞するものが多い。なぜ恐れる必要がないかという根拠になっているのは、主に次の5点だ。
1)TPPが発効しても中国の貿易への影響は少ない
中国には世界最大14億人の巨大市場がある。また、多くの熟練工、先端的設備、豊富な部品供給体制があり、世界の工場としての地位も揺るがない。
2)TPPが大筋合意したからといって、アメリカで批准されるとは限らない
大筋合意が発表されたとたん、アメリカでは与党・民主党も野党・共和党も一斉に反対論が噴出している。来年は大統領選イヤーであり、反対論はますます強くなることが予想される。
3)TPPが発効したからといって、直ちには貿易システムは変わらない
例えば、アメリカは25年以内に日本製自動車の関税2.5%を撤廃するとした。だが25年も先の世界など、誰にも想像できない。
4)中国は個別に各国と自由貿易協定を結んでいる
TPP加盟国で言えば、2008年にニュージーランドをFTAを結んだのを皮切りに、ペルー、シンガポール、オーストラリアとFTAを結んでおり、他の国とも個別交渉を進めている。
5)中国には「一帯一路」とAIIB、自由貿易区がある
習近平主席は2013年秋に「一帯一路」(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)と、これらを推進するためのAIIB(アジアインフラ投資銀行)構想を発表しており、AIIBは今年末に、57ヵ国が参加して北京で設立される。また、2年前に始めた上海自由貿易区や、今年発表した天津、福建などの自由貿易区もある。
***
習近平主席は、10月20日から、ドイツと並ぶ「EUの盟友」と位置づけているイギリスを、国賓として訪問する。冒頭述べた自身と中国に吹く「マイナスの流れ」をどこまで払拭できるのか、お手並み拝見である。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます