朽木のトチノキについてお話を聴いてきました。
完結なレポートが研究会のウェブサイトにあるので
そちらをお読み頂くのが適切です。
民族自然誌研究会レポート
http://www.showado-kyoto.jp/news/n3583.html
こうやってまとめたらいいのかと感心しつつ、
印象に残った言葉なども記したメモを
ごく参考までに残しておきます。
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「トチノキをめぐる社会生態誌―滋賀県高島市朽木を事例に」
2015年7月18日民族自然誌研究会
> 手代木功基(総合地球環境学研究所)
> 「滋賀県朽木地域におけるトチノキ巨木林の立地環境」
1.自然環境
小径木は谷沿いに一様にある
巨木は上流に密集してある…最上流部のなだらかな斜面
->(詳しくは)谷頭凹地と上部谷壁斜面と下部谷壁斜面の間の緩急線付近
←トチは水分と土壌の肥沃な谷底が好適だが、土石流など撹乱が多いため
撹乱が少なく谷底に根を伸ばせる最上流部の斜面に巨木が残る
2.人為的環境
「朽木の杣」古代から木材生産地
鎌倉から明治、朽木氏による安定した統治
ホトラ(肥料用のコナラの枝)や薪炭林・入会と木地生産
戦後はパルプ用材・スギ植林
集落から歩いていける場所
明治以降個人単位に山割りが行われ、利用の仕方が個人単位になった
単木での「トチ買い」も行われてきた
「トチ植えるバカ、トチ伐らんバカ」
…炭用材やスギに良くない
ただし、全体的にはトチの生育を維持する方向に
・奥山ではなく利用されてきた山林に残る。選択的に残された。
・トチ以外の利用(伐採)により生育促進された。
> 八塚春名(日本大学)
> 「トチ餅づくりを支える超地域的なトチノミ利用ネットワークの形成」
山村の衰退→商品化・特産品化
-朽木では鯖寿司と共にトチ餅
…実は流通させても都市では食べられない(アク抜き処理が出来ない)
「ふるまいもち」がずっと行われてきた
昔は女性が連れ立って採集に。
(1986年以降商品化)
雲洞谷(35世帯4つの小字2012年)
アク抜きの手法・灰あわせに2種類。
・煮灰(ニバイ)実を湯につけてから灰あわせ。効率的。現在はこちらで。
・かけ灰(カケバイ)湯を実に何度かかけてから灰あわせ。崩れにくく減りが少ない
1986年栃餅保存会が補助金を受けて施設と機械を購入
1987年くつき新本陣1988年朝市開始。トチ餅販売。
◎朽木居住者も、もっぱら買う。お彼岸のお供えに。
栃の実の売買
朽木「シカがみんな食ってしまう」
福井・滋賀・岐阜などから。行商の方が持ってこられる。
山村から山村に流通する。新しい資源利用の形。地域を越えたネットワーク
飯田義彦氏の代理で藤岡悠一郎
「生きたトチノキを活かす地域づくり活動の展開過程」
滋賀県・「巨木と水源の郷をまもる会」による保全の経緯紹介
2008~2009年 トチ伐採情報。観察会スタート。幹周り7.2mはなんとか残る
32本が契約済。解約解除通知したが裁判に。
2011年滋賀県が保全協力金。49本に対して
「会」秋のトチノキ祭と3月の発表会
下流の針江と協働して苗木づくり
綾部市古屋・長浜市小原地区との交流
トチノキ:供給サービスから文化的サービスへ、比重転換
課題:外部者の割合が大きく地元の成熟がしない・アク抜きなど文化の継承
> コメンテーター(長野・秋山郷の事例紹介)
> 井上卓哉(富士市立博物館)
トチモチ以外に、こざわし、
・トチアンボ(おやきのような、アワ・ヒエの粉を混ぜて、中に包んだもち)
木鉢(こね鉢):生活道具+商品として。江戸時代から。生産が今も。
○1711年文書:割板・・曲物を作って越後へ売っている
…この時点では針葉樹が豊富で、それを利用した商品を売っていた
○「秋山記行(1828)鈴木牧之」
粉のまま食べる。灰あわせしない
地名聞き取りで、「~の栃林」多い
山開きの日がある。家から3名だけ取りに行ける
30年位前に村から離れたところの共有林の栃を伐採して家具屋に売った
「里へ出して交易のものを問ふに:粟・稗・荏(えごま)・木鉢・木鋤(こすき・雪かきスコップ)・樫、檜、松の盤・桂板・サワラ、白木の折敷、秋には干茸・しな縄(シナノキの皮で編んだ縄)…」
1825年秋山記行の頃
「100年前(1700年頃)サワラ、ヒメコマツ、ゴヨウマツで曲物を作ってきた。
くれ(板)をたくさん。
あんなにたくさんあったのに、人の欲とはすごいもので、なくなってしまった。
今はブナ、ナラ、ヤナギ、トチ、雑木ばかりになって困った」
現在の木鉢制作の材料は…秋田から丸太を/国有林伐採・単木払い下げ(終了)/集落近くのトチを
残っている木鉢の製作年と大きさ
…嫁入り道具など、製作年が分かることが多い
直径はあまり変わらないが、高さが大きくなってきた。
→かつて馬の背中に載せた(低い方がたくさん重ねて積める)
縁が高い方が、そば打ち用に良い(近年)
> 総合討論
雲洞谷トチ餅づくり「仕事を辞めてまですることではない」「リタイアした人が継いでいければ」
綾部市古屋>外部ボランティアの会「古屋でがんばろう会」9月400名で栃の実拾い
ネットを張って獣害防止。ないところはみんなシカに。1000町歩みんな村の山、だから残ったのかな。
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民族自然誌研究会は先輩に連れられて初期の数回参加しました。
ありがとうございます。