ツリーイングにとって良い木

2016年03月25日 | 林冠の世界~木に登る~
ツリーイングにとって良い木の条件とは、例えて言えば、あなたにとって良い結婚相手の条件と似ています。

いろいろと理想の条件や大事な条件はあるかと思いますが、実際の人間というのは条件通りにはいきません。複雑で混じりあっていて同じものは一つとしてなく、時間と共に移り変わっていきます。出会える相手にも限りがあります。樹木も同じ生き物、そしてツリーイングする人間も一人ひとり条件が異なります。その相性が合う木と人の組み合わせが、ツリーイングにとって良い木となると思います。

そういったことを頭に入れた上で、いろいろな条件を見ていきましょう。

ツリーイングの特徴は、枝分かれしている部分にロープをかけて、ぶら下がって登ることで、同じ木に同時に何人も一緒に登れたり、地面近くに枝がなくても登れたり、高くても危険が少ないことです。それを生かす木の形は、太い枝が大きく横に張り出し、その途中で何箇所も枝分かれしている形です。平らな土地の真ん中に孤立して大きくなったクスノキやトチノキ、エノキ等がこのような樹形になります。身近なドングリの木で多いコナラも、適度に斜め上に広がり、途中の枝分かれも多くて良い樹形になります。逆に真っ直ぐ垂直な幹から、枝分かれしない細めの枝しか伸びない、スギやポプラのような樹形だと、基本のツリーイング法では登れなかったり、登れても人数が限られたりします。

大切な人間の命を預ける木ですから、枯れていたり腐っていたり病気で弱っていたりする木は危険です。葉や枝のつき具合、枯れ枝の割合、幹に変わったところはないか、地面が踏み固められたり土を被せられたりして根が傷んでいないか、日光を十分受けているかなどを確認します。自然に育った木は必ずそれまでの生涯に何らかのダメージを受けています。たくさんの木を見て、傷んだところや元気なところを見る目を養いましょう。

ツリーイングの危険で最も注意しないといけないのは、落下物による事故です。高いところにあるものは大きなエネルギーを持ちます。「枯れ枝や、かかり枝」に一番の注意を払いましょう。技術があれば地上から取り除いたり、ルートを選んで立ち入り禁止エリアを設定したりすることで危険を避けることもが出来ます。ちなみに実際にツリーイングしている時も物を落とさないよう細心の注意を払い、落下防止策をとりましょう。

また木はたくさんの生物の棲み家でもあります。人が近づいても迷惑でなく楽しい植物や動物もいますが、スズメバチや毒のあるツタウルシ、登ると攻撃されることもある鳥の巣などがないか、十分に探して下さい。樹液が出ているところは虫が集まっていることがあります。幹の後ろにいるかもしれません。木を見る時は必ず木の周りを一周して見るようにして下さい。

木の近くに電線があったり、屋根の上に枝が張り出していたり、木の下に歩道があったりするような危険もチェックします。ツリーイング中は少なくとも木が枝を広げている下から人の立ち入りを制限する必要があります。照明器具や道標など壊してはいけないものはありませんか。水際や斜面の上など、歩き回っている時に危険なところはありませんか。ツリーイングしている人と共に周りの安全にも責任を持って下さい。

ツリーイングは、継続的なお付き合いです。一回きりということは余りありません。その土地の管理者と交渉したり、枯れ枝や「かかり枝」を下ろしたり、登った後に健康状態を確認したりと、何年にも渡って付き合いを続けることが多いです。それが出来る条件を満たす必要があります。あなたにとって継続的にアクセスしやすいか、困った時に助けてくれる仲間がいるか、トイレが近いか、車はどこまで入れるかなどです。誰かが使わせてくれる木の場合は、その人や施設などに十分に敬意を払いましょう。

ツリーイングは身近な大自然にアクセスできる素晴らしい遊びです。たくさんの木を改めて見直して、人間の生き方と、時間も大きさも感じ方も全く異なる生き物の魅力を、多くの方が再発見出来ればと願っております。

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