hyakunenseis◇ry ∞

リリカルに、コミカルに、フツーに、日常いろ色。

高崎達磨譚6

2021-01-22 22:39:00 | reminisce
ただ登れ登るべし登るべし "

総門をくぐり最中は、
頭のなかまっ白っけ何も考えられない。


無心のやうな物心


だからお寺さんの階段を上へ上へ...

あがるの好きだな。


ただ登れ登るべし登るべし "


...しかし雑念わく。

しかしさこんなに寒いんだしさ、

吐息の水タバコかエクトプラズム

もくもく出せるでしょ...はあああっ...


(( あれ?案外と、))


口から水蒸気は煙らなかった。

もっとよっぽど冷えこまなきゃ?


まるごと冷凍庫みたいな空気なのにね


樹木の隙からお日さんがお顔を光らかせて、

寒さが少ぉしだけやわらいだ気がしたよ。



この階段を登りつめた先には鐘楼がある、

撞けば福を招くという招福の鐘よ。


段々ちゃきちゃき着々のぼる


無心の無言になったころ、

遠くとおくの遥かまで響きわたる...


√ ごぉおぉんんんーんーんーんー


鐘の音が鳴った。

こんなに朝早くから

他にも参拝してる人がいる...


不意打ちにほんと不意が突かれたわ


梵鐘の音色って...いいな。

重いのに垂れこめず、

厚みふかくて。



総門より第一階段...あがり。
楼へは許された時間内のみ出入り自由。


そそくさ靴ぬぎスリッパへ履き変える。


行事があるでもない普通の日に

ここは梵鐘を撞けるのです、

またとない機会...


も。


浄財箱の真ん前におわすのは、
むろん達磨大師さんであろ。

...みつめあう数秒

カッと見開かれた眼にこもる力、

偶像といへど迫りくるのよ...貫かれる。


破している


偶像を介して偶像を越えたところにある

次元のナニガシかと相見えたような。


...どうぞ。

わたし面目を果たしたわ、

合わせられる眼を具えて参りました。


達磨さんと伴侶と一丸になり


綱を握りしめる。

ずっしり触れた重い手応えに

自分の瞼もいくぶん上へ引っぱられて、


...


力んだ勢いまま両の眼かっぴらいた。

手にした綱へウェイトをかけて

引きあげれば撞木は揺れ...


√ ごおおおんーんーんー


招福の鐘、盛んに撞き鳴らし候。

達磨大師さん400日間を...

有難う御座いました。



残響まで鼓膜ふるわすような

微か...低く...厚む...音の尾が消えいる間、


佇んでいた。


黙し耳を澄まして

心に聴いていたのは...


寂の響き


そのものだったのかもしれず。

さあさ第二階段を登ってまことゴールです、


参りましょう。