カトログ !! ~ カトレヤ交配種のブログ (Hybrid Cattleya's Database) ~

洋蘭の女王カトレアのデータベース(主に大輪系交配種)&育種交配・実生の魅力をご紹介

<カトログ !! 版> 大輪系カトレヤ交配種『新時代の胎動』Vol.1

2012年06月24日 18時00分00秒 | ■特集
※当記事は、NEW ORCHIDS(ニュー・オーキッド)2011年 11月号への私の寄稿のブログ版です。


於:高橋洋蘭園さん(高松)2003年2月
下記“ある花”こと「Rlc. Sanuki Sunset(サヌキ・サンセット)実生開花例3」


~ 育種家サンセットさんとの出会い ~

 2003年2月。神戸蘭友会のバスツアーで訪れた香川県高松市の高橋洋蘭園で、私は“ある花”と出会いました。暖かいオレンジ色の花色と、銘花パメラ・ヘザリントン‘コロネーション’(Rlc. Pamela Hetherington‘Coronation’FCC/AOS) を想起させる力強い花容を持ったその花のラベルには「Blc. Dal's Sunset‘Rie’x Pot. Memoria Seichi Iwasaki‘Waianae’」との表記がありました。まだ当時“実生未登録品種=雑種”という低い価値観しか持っていなかった私は、その花が大変魅力的な花であるにもかかわらず、結局、入手することはせずに高橋洋蘭園をあとにしてしまったのです…。
 そして2003年といえば、私がカトレヤという花にすっかり魅了されてから10年程が経った頃で、たとえ温室無しでも努力と工夫次第では、まずまずの花を咲かせられることが判り、ゴールが見えると急激に興醒めする私の“悪い癖”が頭をもたげ始めていた頃でもあったのです。そんな時に出会った“ある花”は、その悪癖を払拭し、心の内に新たな価値観を芽生えさせるきっかけを私に与え、全くゴールの見えない、永遠に飽くことの無いようにも思われる“妄想の花園”とも言うべき世界へと誘ってくれることとなるのです。
 バブルが崩壊して数年が経ったあの頃、海外からの新花の輸入も減り、かつてのような新鮮な感動を得られる機会も減っていたという事情の中から「自らの手で感動を与えてくれるような花を創ろう!」と思い立つ者が現れるのは必然で、“ある花”は、そんな中から生まれてきた香川県高松市の育種家、サンセットさんによるオリジナル交配「交配番号 R12」こと、“サヌキ・サンセット (Rlc. Sanuki Sunset) ”だったのです。その事実は知らず、翌2004年の暮、その頃には私の中で「希望」や「可能性」という言葉たちの象徴ともなりつつあった、あの“ある花”に導かれるかのようにして、私は再び高橋洋蘭園を訪れ、育種家サンセットさんとの運命的とも思える出会いを果たすのです。


<サンセットさんプロフィール>
日本・蘭協会会員
四国蘭協会会員
香川洋らん趣味の会会員
スタンダード・カトレヤ交配種同好会会員
その他
「JOGAレビューVol.12」読者のおたよりコーナーご出演
NHK教育テレビ「美の壺」テーマ“蘭”ご出演など。



<育種家サンセットさん 初期作品ギャラリー>
大輪系カトレヤ交配種の育種家サンセットさんの比較的、初期の代表作の一部をご紹介します。


■Rlc. Sanuki Sunset‘Rie’
リンコレリオカトレヤ サヌキ・サンセット‘リエ’
(Rlc. Dal's Sunset‘Rie’x Rlc. Memoria Seichi Iwasaki‘Waianae’(30/12/2005))
 サンセットさん交配・登録による多彩な花色・花容の斬新かつ魅力的な個体が多数出現している興味深い交配。
 大輪サーモンピンク系優秀花ダルズ・サンセット‘リエ’(Rlc. Dal's Sunset‘Rie’) と、主にサンセットカラー系の優秀花を生んだ実績を有する銘親メモリア・セイチ・イワサキ‘ワイアネ’(Rlc. Memoria Seichi Iwasaki‘Waianae’) との交配です。
 私にとってこの交配は、カトレヤの交配・実生における品種改良の可能性と、交配・実生の楽しさ、奥の深さを実感させてくれた、かけがえの無い交配です。
 ちなみに、品種名の由来は“讃岐平野に沈む夕日のイメージ”。讃岐(さぬき)とは「さぬきうどん」で有名な四国、香川県の旧国名です。
 画像の個体‘リエ (Rie)’は、力強い花容と濃く鮮やかな花色を併せ持つ極美花。まるで銘花パメラ・ヘザリントン‘コロネーション’(Rlc. Pamela Hetherington‘Coronation’FCC/AOS) をサンセットカラーに染め上げたような素晴らしい花だと思います。

●Rlc. Sanuki Sunset についての記事は、こちらをクリック!



画像提供=サンセットさん
■Rlc. Rie's Debut‘Winter Delight’AM/JOS
リンコレリオカトレヤ リエズ・デビュー‘ウィンター・デライト’
(C. Drumbeat x Rlc. Pink Debutante (10/07/1991))
 大輪ラベンダー系の有名優秀品種ドラムビート (C. Drumbeat) と、パステルピンク系の往年の銘花ピンク・デブタント(Rlc. Pink Debutante)との交配。
 画像の個体‘ウィンター・デライト (Winter Delight)’AM/JOS は、サンセットさんが師と仰ぐ香川県丸亀市の新居義久さんが交配した実生苗からのサンセットさんによる選抜個体。
 ちなみに、この花の AM/JOS 入賞をきっかけにサンセットさんの“交配・実生カトレヤ人生”が始まったとのことですので、まさに“育種家サンセットさんのデビュー”の後押しをした花ともいえるわけで、その花の登録品種名が“リエズ・デビュー”とは、なんて“粋”なネーミングだろう!と、しかもこの「Debut」は単なるこじ付けではなく、親品種「Pink Debutante」からのもので、そのセンスにも大変感銘を受け、将来登録予定の私の登録品種名のネーミングにも大いに参考にさせていただきたいと思っています。
<入賞データ>
・AM/JOS = 80P, NS17.0cm, 1991年2月、高松空港蘭展

●Rlc. Rie's Debut についての記事は、こちらをクリック!



栽培=四国巡礼さん 画像提供=サンセットさん
■Rlc. Sweet Jackpot‘Rie’HCC/JOS
リンコレリオカトレヤ スイート・ジャックポット‘リエ’
(C. JJosé Dias Castro(Jose Dias Castro) x Rlc. Sweet Anniversary (06/01/1999))
 濃色の整型花を生む交配親として実績のあるホセ・ディアス・カストロ (C. José Dias Castro(Jose Dias Castro)) と、雄大なリップに鮮明な黄目の入る極大輪花を着ける国産優秀花スイート・アニバーサリー‘イエロー・アイ’(Rlc. Sweet Anniversary‘Yellow Eye’) との交配。
 画像の個体‘リエ (Rie)’は、ニューオーキッドにも過去、幾度となく掲載されている有名花で岡山県のフジナーセリー交配による実生苗からのサンセットさんの選抜個体です。洋蘭情報誌ニューオーキッドのバックナンバーでフジナーセリーの方がコメントされているように、これほどの濃色大輪花はこの交配の兄弟個体には見当たらず、本交配中の最高個体だと思われます。
<入賞データ>
・HCC/JOS = NS17.0cm, 1996年1月

●Rlc. Sweet Jackpot についての記事は、こちらをクリック!



栽培・画像提供=サンセットさん(2005年1月開花分)
■Rlc. Dal's Sunset‘Rie’HCC/JOS
リンコレリオカトレヤ ダルズ・サンセット‘リエ’
(Rlc. George King x Rlc. Waikiki Sunset (01/02/1995))
 サーモンピンク系の優秀花ジョージ・キング‘セレンディピティ’(Rlc. George King‘Serendipity’) と、サンセットカラー系の銘親ワイキキ・サンセット‘ブライテスト・オレンジ’(Rlc. Waikiki Sunset‘Brightest Orange’) との交配。
 画像の個体‘リエ (Rie)’は、サンセットさんの選抜個体で HCC 入賞時の花径は 16.3cm もの大輪。親のジョージ・キング‘セレンディピティ’を超える新世代のサーモンピンク系の極美花だと思います。
 ちなみに、親にワイキキ・サンセット‘ブライテスト・オレンジ’を使った交配では通常、花径は中~中大輪クラスにとどまる傾向が強いようですので、ダルズ・サンセット‘リエ’はワイキキ・サンセット‘ブライテスト・オレンジ’の子供としては特筆すべき大輪花と言えると思います。
 また、ダルズ・サンセット‘リエ’の兄弟個体‘オレンジ・ハット(Orange Hat)’HCC/JOS は、以前、洋蘭情報誌ニューオーキッドでも紹介されたことがありましたが‘リエ’に比して花色はやや濃いようなのですが、花径・花型では、今一歩といった印象の花でした。その他の兄弟個体にも特筆すべき優秀花は開花していないようですので、おそらく日本国内においては‘リエ (Rie)’が最高個体ではないかと思われます。
<入賞データ>
・HCC/JOS = 78P, NS16.3cm, 1997年

●Rlc. Dal's Sunset についての記事は、こちらをクリック!



画像提供=サンセットさん 栽培=曼荼羅さん(※実際の花色はもっと濃く鮮やかです)
■Rlc. Sweet Roon‘Rie’
リンコレリオカトレヤ スイート・ルーン‘リエ’
(Rlc. Sweet Anniversary x Rlc. Herons Roon (13/08/2004))
 雄大なリップに鮮明な黄目の入る極大輪花を着ける国産優秀花スイート・アニバーサリー‘イエロー・アイ’(Rlc. Sweet Anniversary‘Yellow Eye’) と極厚弁濃色系花ヘロンズ・ルーン‘グレイプスランド’(Rlc. Herons Roon‘Grapesland’) との交配。
 画像の個体‘リエ (Rie)’は、フジナーセリー交配による実生苗からのサンセットさんの選抜個体。この交配においても‘リエ’ほどに花径・花色・花型において均整のとれた兄弟個体は見当たらず、この花が最高個体ではないかと思われます。

●Rlc. Sweet Roon についての記事は、こちらをクリック!



栽培・画像提供=サンセットさん
■Rlc. Hawaiian Echo‘Rie’HCC/JOS
リンコレリオカトレヤ ハワイアン・エコー‘リエ’
(Rlc. Toshie Aoki x C. Persepolis (05/11/1992))
 セミイエロー系の銘花トシエ・アオキ (Rlc. Toshie Aoki) と、セミアルバの銘花パーセポリス‘スプレンダー’(C. Persepolis‘Splendor’) との交配。
 画像の個体‘リエ (Rie)’は、サンセットさんがハワイのコダマ蘭園から輸入された実生苗からのサンセットさんの選抜個体です。
 以前、この交配の兄弟個体を見る機会がありましたが、花色は‘リエ’と似ていましたが花径12.0cm程の中輪花でしたので、‘リエ (Rie)’ほどに両親の特徴が程よく融合されたように上手く継承し、かつ大輪となった個体はないのではないかと思います。少なくとも現在、日本国内には出回っていないようです。
<入賞データ>
・HCC/JOS = 76点、1996年1月、高松空港蘭展、NS14.5cm

●Rlc. Hawaiian Echo についての記事は、こちらをクリック!



栽培・画像提供=サンセットさん
■Rlc. Rie's Bay‘Oranges’HCC/JOS
リンコレリオカトレヤ リエズ・ベイ‘オレンジーズ’
(Rlc. Formosan Gold x Rlc. Sunset Bay (13/03/2006))
 系統的に黄花とサンセットカラー系花を生む傾向のある親同士の交配。サンセットさんの登録品種です。
 画像の個体‘オレンジーズ (Oranges) ’は、鮮やかなオレンジイエローの花色と従来のサンセットカラー系花と比して、展開良く整型の花容が魅力的な美花だと思います。
 なお、本種の交配を紐解くと黄花やサンセットカラー系花の親としての優れた実績を有する品種が多く、大輪系カトレヤ交配種中において人気が高いわりに、育種・改良が遅れ気味なサンセットカラー系花の次世代の親品種として今後の活躍が期待できそうな高いポテンシャルを有している魅力的な品種ではないかと思います。ちなみに私自身も、この花を使った交配をすでに数種、実践済みです。
<入賞データ>
・HCC/JOS = 76P, NS13.0cm, 1996年1月(於:高松空港蘭展)

●Rlc. Rie's Bay についての記事は、こちらをクリック!


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