北九州市立大学同窓会兵庫支部

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「大学ランキング」から見た北九州市立大学

2015-10-17 15:24:00 | 日記

20131027

北九州市立大学同窓会

63回総会・特別講演 (リーガロイヤルホテル小倉)

「大学ランキング」から見た北九州市立大学

朝日新聞出版「大学ランキング」編集統括

北九州市立大学経営審議会委員(学外委員)

                                     小林 哲夫

 

北九州市立大学同窓会総会にお招きいただきありがとうございます。縁があって大学の情報誌を20年以上続けております。もうひとつ縁がございまして、ご紹介いただいたように北九州市立大学の経営審議会の学外委員を務めさせていただいております。私自身、出身が東京で、東京生まれの東京育ちで、九州には仕事でもあまり来る機会がなくて、九州の事情や状況というのは恥ずかしながらまだ疎いところがあります。それでも大学についてはずいぶんいろんなところを回りました。「大学ランキング」という、大学からすると、あまりそういう手法取ってほしくないな「ランキング」というものを作って、怒られたり、嫌われたり、あるいは励まされたり、そういうことを経験してまいりました。今日はこの機会ですので、私の専門分野である「大学ランキング」から見た北九州市立大学について話を進めてみたいと思います。

それから「公立大学の役割」、最後に「大学の認知度」。この3つについて少し触れてみたいと思います。この「大学ランキング」という本は結構分厚い本になります。2千円位の高い本になります。創刊したのは1994年、今からちょうど19年前。この最新号で20年目になりました。もともとこの本を作ろうと思ったのは、創刊号のコンセプトに「偏差値神話に代わる大学評価を」というキャッチフレーズを僕ら考えて作りました。偏差値とは違うような大学の見方をしようと、大学の得意分野を違ったところから光を当てて大学を、特に受験生に紹介しよう、社会に大学のあり方を問いかけようというようなコンセプトでこの本を作ってまいりました。

「大学ランキング」というのが、どうしても受験生サイドからすると、偏差値ということになってしまうのですが、これの見方を変えると、いろんなところから光を当てることによって大学のこの部分は意外に強いんだな、ということが分かると思います。早速ですがレジュメ(講演の要約版)、簡単な資料を用意したのでご覧いただけると助かります。

 この大学ランキングの本から、北九州市立大学はどのくらいのところにあるのかと、まとめてみたものがこの(配布した)レジュメになります。

1番目の資格、採用試験です警察官が21人。2012年度ですから、今年ではなくて昨年の卒業生の実績になります。全国順位50位台なのですが、公立大学の中ではトップになっています。つまり全国の公立大学の中で警察官が一番多く輩出している大学という風に思ってください。恐らく皆さんは知らなかったと思います。これにはいろんな理由があると思います。ひとつはそういう志向、警察官志向が強いというか、なりたいという方がこの年、非常に多く集まった。あるいはキャリアセンターの中でしっかりした指導をなされたなど、いろんな要素があると思うのですが、大学の規模を考えると、これはかなり大きいなと思います。九州で4位となっていますのは、福岡大学とか九州産業大学など、学生数がもともと多く、母数の大きい大学、数の論理でどうしても上に行ってしまうということもありますので、全体の卒業生の比率から考えて見ると、恐らくこの中でもトップじゃないのかな、という風に思います。

意外なところと言ってはちょっと申し訳ないのですが、5項目のキャビンアテンダント。昔のCD、スチュワーデス。飛行機の客室乗務員ですけれど、5人という数字が出ていました。これも公立の中では一番多いです。全国の中で35番目、かなり多いと思ってください。九州で2番目、確か1番が西南学院大学だと記憶しております。

今、私が警察とキャビンアテンダントを取り上げたのはなぜか、といいますと、2011年の東日本大震災以降、警察、消防、自衛官に対する若い人の志願状況がものすごく高まっています。役に立ちたい、特に人に接する仕事、人の役に立ちたい、社会の役に立ちたい、国の役に立ちたいと、こういう仕事に就きたいという方が、高校生、大学生から非常に多くなりました。そのことによって競争率もずいぶん高くなりました。

大学は、特に私立大学は警察官を養成します。消防官を養成します。中には自衛官も養成しますと。これは40年前だと考えられないような話です。大学から自衛官に就職するというのは、僕は70年代後半の大学生なのですけれど、ちょっとあり得ない話だったのですが、逆に言うと今は自衛官という仕事に対する社会的な見方、学生の見方がだいぶ変わってきたということで、自衛隊を志願する、幹部を含め自衛官になりたいという学生がずいぶん増えました。これも大震災の災害救助を目の当たりにした若い方の思いだと思います。60年代、70年代的な感覚からすると、「えーっ」というような感じがするかもしれませんけれど、これも時代の流れなのかなと思っております。

キャビンアテンダントの話です。これはJALもANAも非常に経営状況が厳しい中、採用についてはなかなか定期的に、常勤として正規採用がなかなか難しい中、今年、昨年あたりから新たに人材を確保しようという動きが出ています。これも大学にもよるのですけれど、CAを養成しようという大学も出てきました。ただ大学の役割というのを考えて見ると、たとえば警察官とかCAですとか、そういう養成をしようというのは、大学の高校への説明会、受験生向けのわが北九州市立大学から警察官・キャビンアテンダントこれだけいますよ、と話せば受験生は目を輝かせます。でも大学の役割ってそれだけではもちろんないんですよね。そこが大学の悩みでもあります。

東洋経済とか週刊ダイヤモンドとか、いわば私たちのような雑誌が就職実績で大学のアイデンティティを問おうとしている。これはメディアだからある意味で仕方ない部分ありますし、自省、自虐ぽっく言うと、そんなもので大学を語っていいのかと思いながらも、社会的な関心はやはり就職状況にある。その中で大学としてはそういうところを強みにしていいのものなのか、どうかというところも、今、悩んでいるところです。

私立大学についていうと、たとえば「わが大学は警察官合格率日本一」というのを広告で謳っているところもあります。広告として謳うのはかなりやばい線の話なんですけれど、どれだけ裏づけが取れているのかというところでは問題があるといえばあるのですけれど、その一方でそういう就職だけのことを訴えることによって、大学って就職予備校じゃない、就職予備校という言葉も昔は大学への批判的な言葉としてあったんですけれど、今はそれさえも無くなってきている。というのが現状であります。

皆さん卒業されて30年、40年、50年経った今、大学の就職状況を見て、大学とは就職だけなのかなとお思いになるかもしれませんが、これはひとつの大学の捉え方として、今年は北九州市立大学は警察官すごく多かった、消防官もすごく多かった、というように、あくまでひとつの見方で、北九州市立大学が警察官養成大学では決してないわけで、その辺はご理解いただきたいと思っています。

このランキング、いくつか載せて、いくつかレジュメの下の方に書いたのですが、中学校の先生と高校の先生が意外に少ないのは残念でした。文学部外国語系があるのですけれど、もう少し多くてもいいのかなと。これも警察官同様、たまたまその年の志願者が、学校の先生になろうという方が少なかった。ある意味で偶然性というのがあると思いますが、僕はもう少しいたと記憶しておりますので、この辺が今後、北九州市立大学を語るひとつのポイントになるかな、と思っています。

 最初にランキングの話をしました。北九州市立大学について私の知っていることと申しますと、私はずっと東京で育っていましたので、受験のときも私は共通一次の第1期生なんですけれど、大学選びの中で、さすが九州まで目が届きませんでした。私が最初に北九州市立大学という名前を知ったのは、実はテレビなのです。今から30年ちょっと前、1980年代の半ばぐらいですね。

東京のキー局の日本テレビというところが「元気が出るテレビ」というのをやっていたのです。司会がビートたけし、そこでご存知の方いらっしゃるかも知れませんけれど、北九州市立大学の応援団が出ていたのです。

知っていらっしゃる方いますか。見たことある、あるいは覚えていますか。僕は20代半ばのころだったのですけれど、そのときのイメージが、なんて硬派な大学なんだろうと、応援団がすごく怖い雰囲気があって、公立大学はそれぞれ地域にいろんな特色があるんだなと、まずその印象が僕にはありました。それから、そんなこと決してないんだと後々言われましたが、それが僕の最初の北九州市立大学体験でした。

キャンパスにカメラが入って応援団の練習風景があって、まだ80年代というのはそういう硬派なものがファッションとして受け入れられていた時代であったと思います。一般学生が冷ややかな目で見ながらも応援団が一生懸命やっている。どこの大学もそうなのだなと思ったことがあります。

この仕事をするようになって公立大学というのがどういうものなんだろうと考えるようになりました。これ(公立大学の呼び名)はメディアが付けたと思います。当時の文部省だと思うのですが、昭和24年(1949年)、新制大学が発足してから国立大学、公立大学、私立大学と設置者ごとの名称になりました。

いつのころからか、多分そのころだと思いますが、国公立大学と私立大学。公国立大学ではなく国公立大学なんです。私が「大学ランキング」を編集した20年前も便宜上、国公立大学という風に名をつけたのですけれど、正直なところまだ大学改革、大学設置基準大綱化という、1990年代に大学を変えようという動きが起こる中での編集作業だったのですけれど、正直申しまして、国立、公立、私立の中で、公立大学がある種、改革部門の中で一番遅れているのではないか、という見方がありました。

いろんな意味合いで、どうしても自治体ということもあって、お役所的になってしまう。そういうこともありましたし、どういう風に大学を、というのが分からないことが、動いていいか分からないということもありました。大学改革で私立大学がやはりすっと動いたのですけれど,国立大学が最初に国立大学独立行政法人という言葉(呼び名)に変わり、国立大学が非常に危機感を抱いて自分で稼がないといけない。自分で稼がなければ国立大学といえども潰れてしまうというので、ものすごく危機感を抱いて、僕らメディアに対しても猛烈なアピールをし始めたのが1990年代の終わりごろからでした。まだそのころ公立大学は、国立大学ほどそれほど危機感はなかったという風に僕は感じています。それから公立大学も法人化、それから(設置者が)自治体ということで2000年以降、今世紀に入ってからいろんな取り組みをし始めました。むしろ最近では公立大学の方が時々、話題に上ります。

これも以前なら考えられなかったことですけれど、多分、東京都知事に石原慎太郎さんがなって東京都立大学が首都大学東京と名前が変わって、教員が大幅に入れ替わって学部が大幅に改組された。それが公立大学のかなり大きなショック療法的な動きになっているかなと。その後、横浜市長に中田宏さんという方がなられて横浜市立大学も学部が変わりまして、教員も大きく変わりました。組織も変わって職員もだいぶ変わりました。経営陣にはそれこそ松下政経塾出身とか、MBAを取ったとか、企業の経営感覚を持った人間が入ってきて、これは非常に賛否が問われました。大学はビジネスではないという見方と、ビジネス的な要素を入れなければ大学はこれから生き残れないと、いうような見方がありました。

それとともに、これは公立の中で一番大きな動きといえると思いますが、大阪府知事になった橋本徹さんの登場です。大阪府立大学と大阪市立大学が数年後に一緒になる。名称はまだ分かっていないのですけれど、府立大と市立大がともにお互いが吸収されてしまうのではないかと危機意識を持って、どうするかと。学部をどうするか、というようなこと。OB・OGからすると、自分の大学がなくなってしまうじゃないかと危機感をかなり持った。大阪の行政からすれば、少しでもコストを抑えようということで、当時いろんな話がありました。

ここだけの話ですが、橋本さんが府知事になったときに、府立大学を売っ払え、金食い虫だから売り払えと。その相手はどこだと手を上げたのが近畿大学。立命館とかそういう名前もぼこぼこ上がってきた。案外、現実味を帯びているのが橋本さんの当時の怖さだったのですけれど、それまで例えば公立大学が移管するという、戦後一時期に国立への移管、その逆のこともありましたけれど、少なくとも70年代以降、公立、国立の設置者が変わるというのを、ためらわなかった。それが今、公立大学と私立大学が一緒になるというようなことも文科省のスキームの中にはあります、実際に。「府立何とか大学」を「私立何とか大学」にと。それくらい国立、公立、私立という設置形態に関係なく大学のあり方が2000年以降ずいぶん問われてきました。

余談ですが、猪瀬直樹さんが都知事選挙に立候補したときに私は取材に行きました。猪瀬さんが知事選で一番訴えたのはオリンピック招致のことしか言わなかったくらい東京オリンピックを連呼していました。そのときに選挙カーの宣伝カーにある方が乗ったのです。一人はスポーツジャーナリストの玉木正之さん。もう一人はJリーグ元会長、Jリーグの最初の会長の川淵三郎さん。川淵三郎さんは猪瀬直樹さんに東京オリンピックを招致するために猪瀬さんを必死にアピールしていた訳なのです。猪瀬さんが都知事に当選した後、その後余り報道されていなくて皆さんあまり気にしていなかったのですが、首都大学東京の理事長になったのは川淵三郎さんだったのですよ。僕は最初にそれを聞いたときに、いわゆる論功行賞なのか、あるいは首都大学東京にサッカー部を作るのか、それをオリンピックに何か関わらせるのか。大学の生き残り戦略として首都大学東京と2020年を絡ませるのか、といろんなことを思ったのですが、そこまでは動いていない。ただ実際に開催が現実になった以上、首都大学東京が何するか分からない。いろんな意味において。何にもしないかもしれないし、オリンピックで名を売ろうとするかもしれない。ある意味、東大より名を売ろうとするかもしれない。7年後です。

そういうのが公立大学の中でもあります。散々、経済誌で取り上げられていますけれども、秋田県立の国際教養大学。地元出身が1割もいない。県議会であまりにも金食い虫だと。地元出身者が1割もいない。卒業生も8割、9割が全部県外に出て行ってしまう。県議会では何かと問題があると。初代理事長・学長の中島嶺雄さんはそれも抑えてこういう大学も必要なんだとされていた。というような経緯で、今日ではちょっとメディアが持て囃しすぎ、ヨイショしすぎ、もう少し批判的なところがあってもいいのでは、といっていいくらい今マスメディアは国際教養大学という1県立大学に対してヨイショしまくっています。

これも公開された数字で見ると4割が留年している大学。それだけ厳しいということと、ついていけない両方の側面がありますけれど、それでも就職率がいいという風なこと言ってきている。そういう動きが公立大学の中で出てきています。

大きな大学、話題になった大学がある一方で地域に根差した大学がある。この大学ランキングのデータに入っていないのですが、例えば地方公務員の市役所や県庁の職員になっていらっしゃる方、数字が取れていないのですが、恐らく北九州市立大学はかなりに高いはずです。これは卒業生からの比率にしても九州全体からの比率にしても。そういう大学ということも全国の大学から考える中で地域貢献ということが、その大学の役割として当然あってもいいし、なければならない。特に地元設置の大学であれば、そこのところを非常に強みにして大学というのが運営していかなければならないし、社会から見られていかなくてはならないという風に私は考えています。

九州の生まれ育ちではないので、北九州市立大学のことは分かりませんというエクスキューズになってしまったのですが。折角のご縁で、こういう場に立ってお話ししたり、大学の経営関係の会合に出たりしているので何とか盛り上げたいな、という思いもあります。

じゃあ、大阪府立、大阪市立とか横浜市立とか首都大学東京とかみたいな、もともと公立の中では馬鹿でかい大学なのですけれど、それと並んで、あるいはそれに習って北九州市立大学を盛り上げようというようなことでは、認知度ということ、大学の存在というものをこれからどうやってアピールしていくか、というのをやはり考えていかなければならないと思います。      

就職というのが、今、大学の中で大きなキーワードになっております。高校生の保護者が大学の説明会であなたの大学はどこに就職しているのとか、就職率どうですか、というのはしょっちゅう聞かれることです。さっき申しましたように、「これ予備校じゃないんだよな」とか「大学ってそんなところじゃないんだよな」と本当に言いたいのですが、こういう現状についても現実的に対応していかなければならない。大学にしても大学関係者にしても。

今、大学用語に「ステークホルダー」という言葉があります。これはもともと金融、銀行の関係者の言葉だったと思いますけれど、大学改革でステークホルダーという言葉が使われました。教職員ですとか、大学に関わり合うこと。非常に思い切った言葉で言うと、関わり合う方という言葉になるのですけれど、そこで当然皆様方OG・OB卒業生も、大学を盛り上げようということについて言うと関わり合ってくると思います。

東京の大きな大学で「マスコミ懇談会」というのが行われます。去年、明治大学のマスコミ懇談会というのが開かれまして、私は行ってきました。テーマが「明治大学の就職について」というような就職指導とかそういうことだったのです。僕が一番驚いたのは、明治大学はある意味で全国区で、全国にOB会の支部がいくつかある。そこに呼びかけて学生の就職を何とかバックアップしてくれということ。それから地方出身の大学の親御さんに、子供たちの就職について親は全面的にバックアップしてくれということを大学が訴えた。もっと分かりやすく言うと大学は学生の親に対して、お嬢さんや息子さんの就職支援に親としてできるだけのサポートをしてほしいという話をしていました。

明治大学というのは昔々に就職課長に西さんという非常に有名な方がいて体育会的にやっていた方なのですが、明治、法政というのはどちらかというと学生が親離れしていた大学だったのです。慶応に比べると、就職は学生だけがやる。就職は親と関係ないというような校風があったのですけれど、「えっあの明治までも」というくらい親にアピールするほど、あるいはOB・OGのネットワークをつなげて、何とか後輩たちの就職を盛り立てようと。この大学もすごく危機感を持っているのだな、とちょっと思いました。

このところ、明治が志願者日本一になり、早稲田を超えた、という報道がたまに出ます。恐らく来年もそうなるかもしれません。これは、はっきり言ってインチキです。私立大学で全学統一テストというのがあって、同じ日に3学部4学部受けられる。第1志望、第2志望があり、その場合に受験料はディスカウントされるわけです。ですから1人の受験生が、同じ日の同じ時間に受験して3つ4つの学部の合格が受けられる。1人の受験生なのに3人、4人の合格者が出ている。合格者が出た分を志願者に換算されてしまったので、志願者日本一になってしまった。というような非常に簡単なカラクリがあります。これをもし早稲田、慶応さんがやったら、もうひっくり返ります。来年の入試で日大がやるそうなのです。日大と法政が入学統一テストをやると、もしかしたらひっくり返るかもしれません。

就職の話です。入口と出口を私立大学が一生懸命やっていると、これが受験生からみると国立大学や公立大学はどうしているんだろうということになる。これまで学費、教員数、学生数、教員1人当たり学生数、教育が非常に面倒見がいい、歴史と伝統があるということで公立大学や国立大学の方が私立大よりも第1志望におこうと、いう感覚があったのですが、私立大は生き残らなければならんと、高い学費というハンディがあるけど、もう就職は必死です。こういうことをするとなると、大学選びのときに公立大学や国立大学がもしかして私立大に負けてしまうのじゃないかということも考えられます。

国立も公立も、その辺は十分に分かっていて、学費というハンディ、アドバンテージと言っちゃいけないかな、確かに学費面では優秀な学生が集まってくる。でも、教育面、進路指導面、就職支援面でこれからどうしたらいいのかと。こういうことをきちんとしていかなければ、例えば受験のときに小倉と博多の中間ぐらいに住んでいらっしゃる方がいて、福岡大に受かった、西南大に受かった、北九州市立大学に受かった。どこに行こうかと選択するときに、就職ということが出てしまうと競争状態になる。

そこで、北九州市立大学を盛り立てるには同窓会会員、卒業生の方が、いろんな形で支援、応援できるかと思いますけれど、今の在学生に、ハッパをかけるのもいいですし、社会人になるためのノウハウを教えるのもいいですし、それから実務教育を盛んに行うのもいいですし、教育に関わっていくのは僕はいいと思います。この場で申し上げるのは大変言いにくいのですが、盛り立ていただければいいのかな、と考えております。

「大学ランキングから見た北九州市立大学」という演題から話が少し逸れてしまったので話を元に戻します。

レジュメの2番目の国際化指標です。留学生受け入れ、外国人教員、国際ボランティアです。僕が注目したのは国際ボランティアです。これは4年の累計なのですが、24人。これはかなり多いです。やはり学部の構成上、そういう目的意識、問題意識を持った方がいらっしゃって教員が盛り立てているんだな、と見て取れます。公立4位というのは、上位には首都大学東京とか大阪府立大とか大規模大学なので4位だからというのは考えなくていいかと思います。

それから留学生の派遣。これも公立で2番目というのはかなり高いです。1番目は秋田の国際教養大学かなという気がします。九州で1番多いというのはちょっと意外でした。福岡の私立大学は何やっているんだろうと。この留学生派遣というのは北九州市立大学の強みだと思います。大学のランキングを僕が作ったのは、本来、大学の特徴というのは、一番得意な分野をどうやってアピールできるか、何が得意なのかというのを、まず大学の関係者が知るということです。恐らく卒業生、同窓会の方も今と30年前、40年前、50年前とかなり違うかもしれませんけれども。違いをぜひ認識してくれたらいろんな支援ができるかと思います。国際化指標というのは文科省が進めているグローバル人材養成。これに北九州市立大学が採択されましたよね。これはすごいことだと思います。

一応の予定なのですが、この版元の朝日新聞出版というところなのですが、先週アエラという編集部からグローバル人材養成の取材記事を手伝ってくれといわれたので少し触れます。大学名をちょこっとしか書いてないかもしれませんが、公立大学の取り組みとしてアエラに少し記事を書けることができたら、と思っていますので、ちょっと待ってください。

ぜひこの強みというのを知ってもらいたい。北九州市立大学の認知度を広めるためにはどうしたらいいかというと、ある意味でビジネスセンス的な考えをいうと、大学の教職員、同窓会、同窓生がさまざまな場において北九州市立大学の話をすること、お酒の場でも北九州市立大学の話をすること、「うちは九州の中で一番、留学生派遣が多いんだよ」ということを、あちこちで言い触らすこと。これが北九州市立大学の認知度を高める広める一歩です。コンサルっぽいこと言うわけではないのですが、案外こういう「口コミ」っていうのは、留学生を派遣しているのはどこなんだろうと、たとえばメディアが「どこの大学が一番多いの」と聞いたときに、そんな話聞いたことがあるよ、という「口コミ」で届くものなのです。今日お渡ししたランキングの上位をいろんな方に宣伝してあげてください。

得意分野がまだまだ弱いといっては何ですが、これから伸びる分野もいくつか書きましたのでここは強いよということで、北九州、福岡県、九州全体に少しずつでも広めてもらいたいという思いがあります。

留学生の受け入れ。もともと留学生受け入れ大学というのは、それを売り物にしている大学がやたらたくさんある。やたらたくさんあるということは結構危ない大学まである。ですから定員割れしたので外国人を呼ぼうというところまで含めてしまうとむちゃくちゃ多いのです。留学生比率が高い大学イコール国際化が進んでいるといえなくもないのですが、あくまでも手法であって、違う側面から見ると「え~」ということがありますので、あまりこの辺は一喜一憂せずに、問題は受け入れた留学生の質の部分だと思います。それが、じゃあ地元に帰って活躍できる、あるいは日本で頑張ってくれるのだろうか、そこでこれも同じことです。北九州市立大学に留学したということが、地元でいい教育を受けたということをどう広めてくれるのか、あるいは日本でどう広まるかということに尽きますので、こと留学生受け入れについては数の論理に振り回されてしまうと、そのところの質の部分で問うことがなかなかできなくなってしまうということがあります。

 3番目の大学の規模です。去年の段階で数字に若干ずれがあるかもしれませんが、約6000人という規模があります。将来的には先ほど触れた大阪府立大学が日本最大の公立大学になると思いますが、こういうマンモス大学は置いておいて、やはり女子学生数が非常に多い大学、最初に話した大学体験というテレビで見た風景から言うと、男子校かなと感じたことがありました。北九州市立大学の50年史を見たときに、旧制の外事の専門学校時代からが男子校的なイメージが僕にはありました。大学の歴史を紐解くと、ちょっとそういうイメージがありました。今は文・外国語もそうなんですけれど、それ以外に自然科学系、環境系を含めて全学系、社会学系でも女性が非常に多くたくさん出るようになりました。

北九州市立大学の話ではなくて、女子学生の比率の多い大学の経営者に話を聞くと、あまりよろしくないとおっしゃる方が意外にいました。もうちょっと男子がほしい、女子が多くてと。例えばこれが9割とかだったら学部構成上、保健栄養看護系じゃあないところ、それが女性9割というのは分かりますけれども、今の時代であれば、総合大学として9割というバランス、女性が9割、男性が9割をジェンダーバランス、性別のバランスが極端だったらちょっと考えないといけないと思いますが、僕は自然の流れでいいと思っています。むしろその(北九州市立大学の)女子学生が3100人を超えるという、そこの女子の元気さというのをもっとアピールできる場があってもいいのではないかな、と思っております。

それは、恐らくこれから、数年前から中央(省庁)の公務員が、そして企業に多くの女性が進出して働いています。やがて、もうそろそろと思いますが、中間管理職として管理職で、恐らく今日の同窓会で女性の方って1割以内かもしれません。10年後、20年後どうなっているか分かりませんし、ましてや30年後40年後というのはどうなっているか分かりません。女子学生が多いということで、キャビンアテンダントにたくさん行きなさいよ、というわけではありませんが、それが強みとしてということがあってもいいのかなと。男子学生はこれまでどおり今まで以上に頑張ってほしい。特に男子学生だから女子学生だからということはないのですけれど、そこはうまくお互い競争し合ってほしいなという風に思っております。恐らく同窓生、卒業生の中で女の子多いよな、と思っている方がいるかもしれませんが、そこは全く気になさらないで、もう盛り上げるため頑張ってほしいと温かい目で見てほしいと思います。

 就職とか国家試験についてです。国家公務員試験、昔のⅠ種いわゆるキャリアの合格者というのがここ数年でなかった。2008年に3人。国家公務員Ⅰ種、今は総合職事務系といいますけれど、2007年に3人、2008年に1人いて、公立大学中では結構高かった時代がありました。これもある意味で偶然性というか、その時代にいた学生の志向、とんでもなく優秀な学生がいたとして「いや私は福岡県に行きたい北九州市に行きたい」という学生がいらっしゃれば、別に国家公務員にならなくてもいいわけなのですけれど、やはり(毎年)1人や2人いてほしいなと私は思います。今いると、いないとでは違うということではないのですが、励みになるということと、やはり中央で働くことが、北九州市立大学出身者がいるということが、大きな縁にもなるし、励みになる。この例えとして、全く比喩として全く当てはまらないし、成り立たないと思うのですが、同窓会というか、OB・OGが活躍していると、多分うれしくなると思います。今、プロ野球選手に2人、今年のドラフトで1人。さっき聞いたのですが、2人います。やはりお酒の場で盛り上がりますよね。いるんだよ、と。公立大学出身のプロ野球選手は本当に珍しいです。これは計算していないのですが、プロ野球ではあまりなかった2人といえば、多分、公立の中では1番。2人というのは北九州市立大学だけじゃないかな。あとどこかいたかな。大阪市大にいたかもしれないのですが、そういうのって話題になるし、自慢になるし、盛り上がるし、息子に自慢できますよね。いいと思います。

こういう卒業生、たとえば東大生とか早稲田みたいに、やたら石投げれば有名人に当たるというようなところ、何も面白くないのです。その何かいいなと、かえって同窓会というのが結束して何か応援しようとか。今年、国家公務員いたよとか、たまたま違うルートで行ったとしても、じゃあ司法試験受かった人がいたよとか、そういう人がいたときには、やはりうれしいものだと思います。これは大学を盛り上げるということで、ひとつの方法かと思います。

今日の話の中で「大学ランキング」と「公立大学の役割」と、最後に「大学の認知度」ということなのですが、これもここだけ話という訳ではないのですが、ひとつの例を言います。市立大学、県立大学というのは意外にといえば失礼かもしれませんが、ブランド力があります。これはそれを一番身に染みてしまったのが、広島県の尾道大学、今の尾道市立大学です。もともと短大だったと思いますけれど、尾道市が尾道大学というのを数年前に作りました。

この大学の学生が就職試験のときに、ここは「どこの私立か」と言われたことが結構話題になり、問題になりました。これは大学の先生や学生さんから聞いたのですが、設置者を明確にしたい、尾道大学というところが、私立なのか国立なのか公立なのか明確にしたいと。ある意味でこれは大学の経営戦略のひとつと考えていいと思います。今年、尾道大学から尾道市立大学に改称してしまいました。そのくらい、やはりその公立大学志向というか、ブランドというのは、地元は非常に強い。地方に行ったとしても、例えば北九州市立大学の学生さんが東京や大阪で就職活動をした場合に、これはあまり大きな声で言えないのですが、就職活動の人事採用担当者からすれば、公立ということで学力が担保されているとまだ思っています。まだ思っていますというのは、これから下がってもらってはまずいね、という意味合いなのですが、それは公立大学のブランド力がありますし、これはなくならないと思います。ただそれは学費が安いねということではなく、それは皆さん方が培ってきた伝統だと思います。

それを大事にしていただきたい。そうすると、じゃあ認知度というのをこれから大学の経営戦略としてどう考えたらいいのか。大学に周知徹底させるために、大学だけで考えるべき話なのか、同窓会の方も一緒に考えたらいいのかという話になると思います。やはり皆さん考えてもらいたいなと思います。いろんな方法があります。私立大学や国立大学の中には学長あるいは理事長が、つまり大学の責任者が広告塔、宣伝塔となってあっちこっちに出まくるというのもありますし、そんなことできないという場合はスター講師をいっぱい作る、スター教員がメディアに出るという手もあります。北九州市立大学では徹底されていますが、シンボルマークを徹底させる。

さらに地域住民のとの交流を今以上に広める。CI(コーポレートアイデンティティ)、大学改革のときに、市立大学UI(ユニバーシティアイデンティティ)だったか、今あまり使っていないようなのだけれど、大学のイメージを変えなくてもいいのだけど、何かシンボル、象徴されるようなものを作ろうとか。この大学のシンボルカラーは青だとか、緑だとか。広島(カープ球団)みたいに赤だとか。こういうことをするとか、これから大学のイメージ、これを見たら「北九州市立大学」だと分かるような、広報戦略というのがこれから求められていくと思います。

見てすぐ分かる、というものが必要かなと。それができれば、東京にいる私たち、私にも伝えられたらと僕は望んでやみません。東京にいる、関東にいる人間にも北九州市立大学というシンボル、名前というのが伝えられるように、皆様に頑張ってもらいたいなということを本当に訴えたいと思います。本当に偉そうに、といわれるかもしれませんが、いろんな大学でも僕は大学ランキングという情報誌を作って基本的には学生性善説をとっています。

どんなにむちゃくちゃな理事長がいようが、不祥事があろうが、学生が悪さをしようが、逮捕されようが、とんでもないことなっている大学であろうが、教職員、学生が一生懸命やっている人がいると、やはり大学は性善説を応援したいと。皆さんもぜひ伝道師となって東京に伝わるようにしていただきたいと思います。

(以上、講演内容)

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(以下、講演後の聴講者との質疑応答)

質問 全国の大学数はいくつあるのですか。

小林 数え方はいろいろありますが、750前後と思ってください。公立83、国立86ですね。

質問 北九州市立大学は貢献度ナンバーワン、地域に対する貢献度が非常にいいと聞いておりますが、それは全国でいかがでしょうか

小林 日本経済新聞の調査で、毎年調査しているのですが、2.3年前に1位、というのが何回かありました。たいてい3位内に入っています。5位以下より落ちることはありません。これはいろんな要因があります。地域への人材貢献、あるいは地域の産業との結びつき、地域型の産学連携が進んでいる、卒業生が地域で非常に頑張ってくれている、というのが要因となっていると思います。これは触れなかったのですが、重要です。北九州市立大学の役割を考えていく上で、地域ランキングの上位で役割を語ることがすべてと思わないのですが、非常に重要な指標ということですので、先ほども申し上げたようにこの辺はぜひアピールしていただければ、と思います。

質問 まとめの言葉でお聞きしたいのですが、北九州市立大学がひとつにはグローバルな大学だ。人材育成、キャビンアテンダントもそうだったのですが、それともうひとつ、女性が元気がいい、大いに女性が活躍できる大学だと思います。2点目に警察官が多い。もっと国あるいは地域に貢献する気力の多い学生だ、大学だと言ってほしい。もっとPRしてほしい。もっと大学の特色というか、PRの積極的評価の方向について伺いたい

小林 今おっしゃっていただいた進路面。この部分というのは、たとえば警察官が多いというところやキャビンアテンダントが多いというところ。このようなデータを見て受験生がそういう風になりたいという循環だと思うのです。実績を見てこういう仕事に就きたいから北九州市立大学に行くのだというのが増えてきている。そこの部分を強化するということと、大学の部分を強化する。あるいは新たな分野への進出をどう考えていくのか。僕は公務員というのをもちろん今すごくアピールされているし、それが地域ランキングにつながっていると思いますけれど、これはもっとアピールしていいのではないかと思っています。それが得意分野だと思っています。

(了)


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