リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

例年とは違っていた

2006-05-16 11:21:53 | サツキマス研究会/長良川調査会
5月5日。
夜の漁場に向かった。午後8時を過ぎ、船着き場に二人の姿は無かった。

今日は漁があったのかもしれない。しばらくして、下流から明かりが上ってきた。ボクは船に乗せてもらおうと、カメラやらの用意をして待つことにした。

 あんたも、熱心やなぁ。暗闇から声がして二人が帰ってきた。
 あかん、今日はおしまい。

 夕方、3回流して、1匹だけだという。

 ニイムラさんに持たせてやれ、大橋修さんがそう言った。

 今年、5匹目のサツキマス。そして、一番大きなマスだと、修さんは言った。



 小型のサツキマスを貰うことは、今までもたびたびあったことだ。
大橋さん達は、もっぱら、尾西市の料亭にサツキマスを出荷している。料亭では型の良いマスということで、400g以上のものを買い上げるということが、暗黙の了解となっていた
 
 漁協として水資源水資源開発公団(旧)から委託されていたサツキマスの調査は長良川河口堰の運用10年をもって終了した。
 現在では、サツキマスの大きさを測り、写真をとることは、ボク自身の研究テーマであり、大橋さんにとっては、煩わしいことであるとは思う。それでも、出荷前にマスの計測を手伝うということへのお礼だ、ということで料亭に持って行かないマスをボクは頂く。

 小型のサツキマスが本当に海まで下っているのかということは、未だに未確認の問題なのだ。
 小型のサツキマスはとても貴重でサツキマスの降海履歴を探る試料となる。
頭と内臓を冷凍にしてサンプルとする。
内蔵は、性別と生殖腺の発達具合を見るために、胃袋は何を食べているのかを調べるのに有効だ。

 そして、頭。
 頭の中に耳石といって音を感じる部分があるのだがその部分には、1日に1周「輪紋」が出来る。その輪紋はカルシウムを多く含むが、そのカルシウムの同位体であるストロンチウムという物質は淡水と海水ではその割合が異なっている。
 つまり、耳石を輪切りにして、特殊な顕微鏡で分析すると、そのマスがいつ頃海に下ったか、どれだけ海にいて遡上してきたのかが分かる。もちろん、行かなかった事も分かるのだ。
 ただし、サンプルはかなり集まってきたのだが、現在のところ、分析費がかなり掛かるので、サンプルのまま保存している。

 小型のサツキマスをボクに下さる。
それは、長年のお付き合いとなった私たちが、今年の収穫を共有するといった意味合いもあるのだと思う。だから、とれはじめのサツキマスを貰うことは特別変わったことでは無かった。ただ、漁を始めた矢先に貰ったことは、いままで、そう、18年のサツキマス漁調査の中で始めてのことだった。

 にいむらさん。 亮一さんが言った。

 もう。おかんといかんかもしれんな。
(サツキマス漁をやめないといけないかもしれない)

 それは、昨年来、ボクが恐れていた言葉でもあった。
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2 コメント

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このサツキマス (徳田)
2006-05-16 12:00:10
写真を見ると胸鰭が無いように思えますが、どうですか?

岐阜県河川研の標識魚は、胸鰭をまさか切っていないと思いますが、放流魚なのかなぁ、やっぱり。

漁師さんが、「はやおくか」と言う時は、見込みないってことですよね。

さみしぃなあ。大橋さんたちが一番寂しいのでしょうけど…
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標識魚 (ニイムラ)
2006-05-16 12:18:24
今年の標識はアブラビレだけで、胸びれは行っていないはずです。この個体は尾びれも擦れているし、養魚場での管理が悪かった個体なのかもしれない、
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